【読書感想】外池昇『天皇陵 「聖域」の歴史学』
天皇陵 「聖域」の歴史学 外池 昇 出版社:講談社(講談社学術文庫) 発売日:2019/10/12 『天皇陵』をめぐるこれまでと、これからへの道筋 昨年五月、新元号『令和』へと時代が変わった。 明治天皇以降"一世一元制"となり、一人の天皇に対し元号は一つに定められるようになった。 しかしそれまでは、吉凶やその他の理由から一人の天皇の治世においてたびたび改元がなされてきた。 この表現が正しいか否かは別として、日本という国の有史以来、その主軸を担ってきた"天皇"という存在。 政治の主体が公家であ ...
【読書&音楽感想】『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』
阿部 謹也 訳 出版社:岩波書店(岩波文庫 赤455-1) 発売日:1990/05/16 中世ドイツの奇人による糞尿譚。下品極まりない逸話の中に垣間見える中世ヨーロッパの賤民世界と、上流階級への痛切なるアイロニー。 日本ではあまり馴染みのない名前かもしれないが、ヨーロッパ、特にドイツ周辺国では幼少時から絵本などを通じ、文字通り子供から大人まで知っているティル・オイレンシュピーゲル。日本の"吉四六"などと比されたりするが、ティル自身はかなり強烈ないたずら好き、スカトロ趣向の持ち主なので ...
【読書感想】原田マハ『本日は、お日柄もよく』
本日は、お日柄もよく 原田マハ 出版社:徳間書店(徳間文庫) 発売日:2013/06/07 「言葉」が持つ偉大な力 書棚の整理をしていて再読した本。2008年の刊行以来、文庫化・ドラマ化もされているロングセラー小説。最近でも「勇気をもらえて泣ける」本として、各メディアでたびたび取り上げられている。 あらすじに関しては、「本日は、お日柄もよく - Wikipedia」はじめさまざまなところで紹介されているし、なによりネタバレの恐れもあるので割愛する。 本作はいわゆる感動系の小説ではあるが、「お涙ち ...
【読書感想】森藤ヒサシ『家族写真の魔法』
家族写真の魔法 森藤ヒサシ 出版社:WAVE出版 2020/06/16 家族写真という愛のかたち 写真館の代表も務めるフォトグラファー・森藤ヒサシ氏(2015年まではオヌキヒサシ)による家族写真についての本。 そもそも家族写真をテーマとした書籍はそんなに多くないという印象がある。その中でも本書は、写真館で家族写真を撮る時の構図や服装、あるいはスマホで自ら撮影する方法など、斬新な構図や技術と相俟ってかなり稀有な情報が盛りだくさんだ。 また掲載されている写真も非常に多く、どの一枚をとってもその家族 ...
【読書感想】岸政彦『図書室』
図書室 岸政彦 出版社:新潮社 発売日:2019/06/27 忘れてしまった大切な思い出の空気を詰め込んだ玉手箱 社会学者・岸政彦氏の中編小説とエッセイからなる本書は、昭和の終わりの頃の雰囲気漂う大阪が舞台の作品だ。 前半の小説は、一人の中年女性が日々の何気ない喧噪の中で、ふと忘れかけていた古い公民館の図書室をめぐる尊い思い出を回帰するというもの。思い出のそれ自体に取り立てた大事件があるわけではなく、一連のストーリーの中に淡々とした小さなエピソードが重層的に積み重なった印象がある。決してポジティブ ...
【映画感想】『ジョーカー』
10月4日日本でも公開が開始され今話題の映画『ジョーカー』を先日観てきましたという映画感想。 で、まず個人的感想の結論ですが、 久々マットウな映画を観た。 ということ。 本作はアメコミの大ヒット作『バットマン』の悪役として有名な“ジョーカー”の誕生を描くクライムドラマ。 主人公がジョーカーへと変貌していった経緯を、その人生的背景を通して描き出している。 一応R15指定(15歳未満は原則鑑賞不可)なのでかなり暴力的だったり過激なシーンが含まれているが、それ ...
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『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その2(Ⅰ・12~19)
2回目は第1章12~19節をば。 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①tasya saṃjanayanharṣaṃ kuruvṛddhaḥ pitāmahāḥ / siṃhanādaṃ vinadyoccaiḥ śańkhaṃ dadhmau pratāpavān // 12 // ②tataḥ śankhaśca bheryaśca paṇavānakagomukhāḥ / sahasaivābhyahanyanta ...
【読書感想】清水俊史『ブッダという男 初期仏典を読みとく』
ブッダという男 ――初期仏典を読みとく (ちくま新書) created by Rinker Kindle Amazon 楽天市場 ブッダという男 初期仏典を読みとく 清水俊文 出版社:筑摩書房(ちくま新書1763) 発売日:2023/12/07 人間・ブッダは何を語っていたのか ネット上を一時騒然とさせた仏教学界隈のアカハラ問題。その渦中にあった著者による「あとがき」が脚光を浴び、本書は刊行直後からベストセラーとなっている。若干そればかりが注目され独り歩きしている感は否めないが、本書は内容 ...
【ゆる解説】『「バガヴァッドギーター」原典訳してみた』補遺
『マハーバーラタ』におけるクルクシェートラの戦いを描いた18世紀の写本(A Tribute to Hinduismより) 目次 ・人名用語解説 ・超要約「バガヴァッドギーター」 ・「ギーター」こぼれ話し 参考文献 ※本編はコチラから! Amazon いちばんていねいでいちばん易しいインド哲学 超入門『バガヴァッド・ギーター』 人名用語解説(第1章~第2章11節に限る) ・アシュヴァッターマン:ドローナの長男。カウラヴァ軍の勇士。 ・アナンタヴィジャヤ:ユ ...
『バガヴァッドギータ―』原典訳してみた!その1(Ⅰ・1~11)
さて『バガヴァッドギータ―』原典訳してみた!の一回目は第1章1~11節までです。 今回扱うテキストについては前説編を参照のこと。 テキスト ①dhṛtarāṣṭra uvāca / dharmakṣetre kurukṣetre samavetā yuyutsavaḥ / māmakāḥ pāṇḍavāścaiva kimakurvata saṃjaya // 1 // ②saṃjaya uvāca / dṛṣṭvā tu pāṇḍavānīkam vyūḍhaṃ duryodhanasta ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30)
3回目は第1章20~30節。 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①atha vyavasthitāndṛṣṭvā dhārtarāṣṭrānkapidhvajaḥ / pravṛtte śastrasaṃpāte dhanurudyamya pāṇḍavaḥ // 20 // hṛṣīkeśaṃ tadā vākyamidamāha mahipate / senayorubhayormadhye rath ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その6(Ⅱ・1~11)
6回目は第2章1~11節 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①sañjaya uvāca / taṃ tathā kṛpayāviṣṭam aśrupūrṇākulekṣaṇam / viṣīdantam idaṃ vākyam uvāca madhusūdanaḥ // 1 // ②śrībhagavān uvāca / kutastvā kaśmalam idaṃ viṣame samupasthit ...
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京の都とその周辺と【RE:後鳥羽院を巡るフィールドワークその2】
目次 プロローグ~そうだ京都へ行こう!~ 金ヶ原の裾野 私的聖地巡礼 参考文献 るるぶ京都’25 (るるぶ情報版) created by Rinker ジェイティビィパブリッシング Amazon 楽天市場 プロローグ~そうだ京都へ行こう!~ 2023年末、所用をかねて上京した折、一日半ほど予定がぽっかり空いてしまった・・・。 今までならこんな時、時間が出来れば国会図書館に籠るなりネット上のつながりのある人に片っ端から連絡を入れるなりするのだが、最近はなんだかそんな ...
後鳥羽院『遠島御百首』私見その1~春 ニ十首~
・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~ はじめに・・・ 私を後鳥羽院がらみの研究(?)に誘った例のママは、最近は以前にもまして悠々自適の生活をしているらしい。なんでも「野垂れ死にが理想の死に方」なのだそうで、いまだ某ウイルスの話題に事欠かない昨今ながら、全国各地を転々と飛び回っているらしい。 そんなママから最初に後鳥羽院の話しをもらった時、見せられたノートがあった ...
佐渡の入江の順徳院 前編~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその2~
Field work on JUNTOKU Tenno[22,Oct,1197~7,Oct,1242(10,Sep,Kenkyu8~12,Sep,Ninji3):84nd emperor(reigning:1210~1221)and Retired Emperor]. He is a scholarship and the martial arts who resembles his father. However, he was condemned to SADO due to the ...
【ご冗談でしょ定家さん!?】『明月記』講読その3~治承四五年記③(治承五・養和元年)~
引き続き、治承四五年記のうち治承五年について読んでいこうと思います。 目次 【凡例】 治承五・養和元年(1181)<定家20歳・従五位上侍従> ・式子内親王との邂逅(正月3日、九月二十七日条) ・高倉院、崩御(正月十四・二十日、閏二月三日条) ・平清盛、薨ず(閏二月四・五日条) ・姉の死(閏二月六・十二・二十四日、三月九日条) 参考文献 【凡例】 ・本文、訓読、意訳、注釈とコメントの順で記した。 ・底本には冷泉家時雨亭文庫叢書『翻刻 明月記』(全三巻)を用い ...
藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その4(承元元年~承元2年)
後鳥羽院の姿を記録する主な公家日記2 (甚之助蔵 藤原家実『猪隈関白記』岩波書店、昭和62年第2刷) ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏 ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻) ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻) ・その3 元久2年~建永元年(第1巻) ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻) ・その6 建保元年~建保6年(第2巻) ・その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻) 目次 ●藤 ...
藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その2(建仁2年~元久元年)
(甚之助蔵 『明月記研究』明月記研究会編) ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻) ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻) ・その3 元久2年~建永元年(第1巻) ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻) ・その6 建保元年~建保6年(第2巻) ・その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻) 目次 ●藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その2(建仁2年~元久元年) 建仁2年 建仁3年 元久元年 建仁2年 1202年 後 ...
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【とはずがたり】「『明月記』の後鳥羽院」よもやま話
調査・研究に用いているノート。 「藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿」調査中の机の上w 目次 ・きっかけ ・隠岐、集中豪雨 ・愛憎半ば、悲喜交々 その1 ・愛憎半ば、悲喜交々 その2 ・ママ、クルマにはねられる ・『吉記』のこと ・青天の霹靂 ・ママ、怒る! ・老いたる定家と後鳥羽院 ・拝啓、藤原定家さま Amazon 夢のなかぞら―父 藤原定家と後鳥羽院 ・きっかけ 「まあ、またなんとも面白そうなことを……」 2021年春、私は ...
【文豪ご用達w】老舗旅館『鳳明館』に泊まってきたときの話し【文京区本郷】
※2019年年末に宿泊しました。 Amazon 「谷根千」地図で時間旅行 コロナウイルスの問題で自粛の風吹き荒れる昨今ですが、今年三月、東京文京区にある老舗旅館・鳳明館からこのようなプランが発表されてのをご記憶されているでしょうか? ●「先生、進んでますか?」進捗コールも完備。旅館「鳳明館」にて、大正・昭和の人気作家になった気分を味わえる「文豪缶詰プラン」 (かーずSP 2020年3月9日) 現在はテレワークにも対応したデイユースプラン「3密・心配ご無用 ...
銀座の老舗バー『ルパン』で呑む
日本屈指の繁華街、東京・銀座。 和光の時計台は海外の旅行者からも人気のスポットですが、そこからほど近いところにあるのが老舗バー『ルパン』。 創業は昭和3(1928)年。開店時には当時近くにあった文藝春秋社の面々からの支援があり、以来文壇バーとして知られています。 注:本記事にはお酒にまつわる記述がありますが、飲酒を勧めるものではありません。 また、未成年の飲酒は法律で禁止されています。 成人であっても節度とマナーを守って過度な飲酒は控えましょう。 飲酒運転は絶対やめましょう。 猪 ...
【浪人時代の思い出】アリミツ君とマコちゃんのこと。
受験シーズンも終わりに近づき、高校・大学はじめ、いろんなところで合格発表の知らせを耳にする季節となった。 毎年この時期になると、必ず浪人していた頃のことを思い出す。 私は某大手予備校で一年間浪人生活を送り、その間は予備校付属の寮で生活していた。 花の都・TOKYOに出てきたはずが、そこはなぜか木々の緑豊かで動物の鳴き声響くところだった。 人生初の満員電車。 都心ド真ん中にある予備校校舎へ通う日々。 起きてる時は(当然)勉強漬けだったが、ときどき破目を外して寮の仲間たちと長時間語り合ってい ...
夏目漱石『こころ』の散歩道
「日本で一番売れている」本(2016年時点) cf,漱石没後100年、人気衰えず 書店で文庫フェア 夏目漱石『こころ』(新潮文庫版) 夏目漱石後期三部作の一つ『こころ』。 その中でも第三章にあたる「下 先生と遺書」は今でも高校の教科書に掲載されている。 あらすじに関しては……長くなるので以下のサイトに譲ります。 cf,夏目漱石「こころ」のあらすじを紹介 さて、主人公の『私』が鎌倉で出会った『先生』は、学生時代に現在の文京区小石川にある伝通院裏で下宿していたのですが、物語のキーパーソンで ...
歌人・鳥居さんに会ってきた~三浦綾子記念文学館講演会レポ~
6月13日、北海道旭川市在の三浦綾子記念文学館において、開館20周年を記念した特別講演会が開催された。 ゲストは"セーラー服の歌人"として注目されている歌人・鳥居氏だ。 キリンの子 鳥居歌集 2016年に本家・ネト見の方でも紹介した歌集『キリンの子』は現在までに累計2万部を売り上げている。また、彼女の壮絶な半生もまた注目されている理由のひとつに挙げられていると思うが、今回はそんな前提は一旦置いて、一読者として実際どのような人なのか気になっていたのでその講演会を聴きに行ってきましたというレポー ...
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