【読書感想】エリック・ホッファー『波止場日記』(みすず書房)
浪人時代、新宿の紀伊国屋でたまたま見かけたのがきっかけだった。表紙には、作業現場と思しきその場所にはおよそに似つかわしくない雰囲気をたたえた初老の男性が、荷車に腰掛け読書している写真があった。「沖仲仕の哲学者」ことエリック・ホッファーその人だ。 この本は彼が沖仲仕として働いていた頃のある1年間の日記である。 仕事現場での作業の内容、友人家族との団欒、歯医者のこと……何気ない彼の日常がつづられたごくごく普通の日記なのだが、ところどころで思索と考察が織り込まれている。その冷徹なアフォリズムには驚嘆の ...
【読書感想】水原紫苑『百人一首 うたものがたり』
百人一首 うたものがたり 水原紫苑 出版社:講談社(講談社現代新書) 発売日:2021/03/17 『百人一首』入門の新定番 近年、マンガやアニメの影響もあって若い世代からも親しまれている「百人一首」。 しかし義務教育で扱われているものとはいえ、まだまだ敷居の高さを感じている人も多いだろう。 本書はそんな「百人一首」の入門書として画期的な一冊となっている。 なにをもって画期的かというと、まず著者が現代短歌の歌人であること。それゆえに備えもつ広範な知識と繊細な感性をフルに活かした解説がなされてい ...
【読書感想】野口晴巳『能率手帳の流儀』
能率手帳の流儀 created by Rinker Amazon 楽天市場 能率手帳の流儀 野口晴巳 出版社:日本能率協会マネジメントセンター 発売日:2007/10/02 手帳ではじめる人生設計 現在は絶版になっているが、日本能率協会マネジメントセンター会長による手帳を使った目標達成術。とはいえその大部分は人生論のそれに等しい。本書は著者一流の手帳術の開陳でありながら、積み重ねを大切にする基本ともいえる考え方を説いている。 「人生を計画することはできない」と著者は語るが、それゆえにこそ積み ...
【読書感想】椎名美智『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』
「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ 椎名美智 出版社:KADOKAWA(角川新書) 発売日:2022/01/08 「敬意」のインフレーションと「距離感」 数年来、日常的に出くわすようになった「させていただく」という言葉。私自身、この言い回しにはなんともいえない歯がゆさを感じている。同様に感じている人も少なくないだろう。 本書は「させていただく」の語用研究で一躍注目を浴びた言語学者による解説書だ。本格的な言語学の研究書に比して、かなりライトな書き口なので読みやすい。 序盤、日常的な場 ...
【読書感想】S・ウィンチェスター『博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話』
博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 S・ウィンチェスター 著 / 鈴木主税 訳 出版社:早川書房(ハヤカワ文庫NF) 発売日:2006/03/01 事実は小説よりも…… 英語を扱う者にとってのバイブルであり最終兵器『オックスフォード英語辞典(Oxford English Dictionary 通称:OED)』。この世界最高峰の英語大辞典が編まれた瞬間を描き出したノンフィクション。2019年には映画化もされているので、そちらを観たという人も多いだろう。 本書は19世紀から20世紀初頭のイギ ...
【読書(?)感想】市原一裕・加藤文元『チャート式シリーズ 大学教養 線形代数の基礎』
チャート式シリーズ 大学教養 線形代数の基礎 市原一裕,加藤文元 監修 出版社:数研出版 発売日:2022/04/19 チャート式、それはひとつの愛の形 2019年、高校数学教材トップシェアを誇る数研出版から加藤文元先生による『数研講座シリーズ 大学教養 線形代数』が刊行された。その翌年には『チャート式シリーズ 大学教養 線形代数』も刊行され、前著に掲載されていた練習問題が"青チャート"として世に出た。 そして2021年には市原一裕先生による『数研講座シリーズ 大学教養 線形代数の基礎』が刊行 ...
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【読書感想】ヴィヤーサ著・石原美里訳『邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻』
邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻 created by Rinker Amazon 楽天市場 邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻 ヴィヤーサ 著 / 石原美里 訳 出版社:パブファンセルフ 発売日:2024/01/29 愛する者を失った悲しみと屈辱 インドの二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』。そのうち『マハーバーラタ』(以下MBh)の第11巻「Strī-Parvan」の日本語訳注本。 MBhの日本語完訳は未だなされていない。故上村勝彦博士による翻訳は、急逝のため第8巻途中までにとどま ...
【読書感想】清水俊史『ブッダという男 初期仏典を読みとく』
ブッダという男 ――初期仏典を読みとく (ちくま新書) created by Rinker Kindle Amazon 楽天市場 ブッダという男 初期仏典を読みとく 清水俊文 出版社:筑摩書房(ちくま新書1763) 発売日:2023/12/07 人間・ブッダは何を語っていたのか ネット上を一時騒然とさせた仏教学界隈のアカハラ問題。その渦中にあった著者による「あとがき」が脚光を浴び、本書は刊行直後からベストセラーとなっている。若干そればかりが注目され独り歩きしている感は否めないが、本書は内容 ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47)
5回目は第1章40~47節 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①kulakṣaye praṇaśyanti kuladharmāḥ sanātanāḥ / dharme naṣṭe kulaṃ kṛtsnamadharmo'bhibhavatyuta // 40 // ②adharmābhibhavātkṛṣṇa praduṣyanti kulastriyaḥ / strīṣu duṣṭāsu vārṣṇe ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その6(Ⅱ・1~11)
6回目は第2章1~11節 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①sañjaya uvāca / taṃ tathā kṛpayāviṣṭam aśrupūrṇākulekṣaṇam / viṣīdantam idaṃ vākyam uvāca madhusūdanaḥ // 1 // ②śrībhagavān uvāca / kutastvā kaśmalam idaṃ viṣame samupasthit ...
【ヒンドゥー教の聖典】『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!~前説~
目次 まえがきと若干の解説 『バガヴァッドギーター』テキスト 参考文献 【本編】 ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その1(Ⅰ・1~11) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その2(Ⅰ・12~19) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その4(Ⅰ・31~39) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!そ ...
インド二大叙事詩とヒンドゥー教の聖典について
【改訂記録】 ・2021/02/24 「あらすじ」欄に各巻・章のタイトル追記。 前説 インドの二大叙事詩『マハーバーラタ(Mahābhāratam)』と『ラーマーヤナ(Rāmāyana)』、そしてヒンドゥー教における最高の聖典と称される『バガヴァット・ギーター(Śrīmadbhagavad gītā)』について、その概要をまとめてみました(個人的な復習の意味も含め)。 かなりザックリとしたまとめになっていますが、本記事はちょっと実験したい部分もあって、今後も随時改訂したりしていきたいと思います。 ...
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【佐渡の秘境!!】順徳院崩御の地・堂所御所跡へ【佐渡の入江の順徳院 後編】
Field work on JUNTOKU Tenno[22,Oct,1197~7,Oct,1242(10,Sep,Kenkyu8~12,Sep,Ninji3):84nd emperor(reigning:1210~1221)and Retired Emperor]. Click here for the part1 前編はこちら ↓↓↓↓ 佐渡の入江の順徳院 前編~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその2~ パパ・後鳥羽院譲りの文武両道の逸材 目次 前説 堂所御所跡へ ...
後鳥羽院『遠島御百首』私見その3~秋 ニ十首~
・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~ 秋ニ十首 目次 三十六、かたしきの 三十七、よのつねの 三十八、秋されば 三十九、おもひやれ 四十、咲かゝる 四十一、ふるさとを 四十二、いかにせむ 四十三、なきまさる 四十四、いたづらに 四十五、おもひやれ 四十六、ふるさとの 四十七、野をそむる 四十八、あはれなる 四十九、はれよかし 五十、岡の ...
崇徳院と土御門院を巡る四国~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその4 最終回~
保元の乱の首謀者として讃岐に流された崇徳院。そしてその曾姪孫(甥の孫)にあたり、承久の乱で流された父・後鳥羽院、弟・順徳院の身の上を憂い、自ら懇願し阿波に流された土御門院。この二人を追ったレポート。 Field work on SUTOKU Tenno & TSUCHIMIKADO Tenno. SUTOKU Tenno[1,Jul,1119~14,Sep,1164(28,May,Genei2~26,Aug,Chokan2):75nd emperor(reigning:1123~1142)and R ...
藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻)
後鳥羽院像に迫るための資料 (甚之助蔵 『大日本史料』第4輯、東京大学史料編纂所、昭和43年) ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏 ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻) ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻) ・その3 元久2年~建永元年(第1巻) ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻) ・その6 建保元年~建保6年(第2巻) ・その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻) 目次 ●藤原定家 ...
藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その5(建暦元年~建暦2年)
後鳥羽院の姿を記録する主な公家日記3 (甚之助蔵 『源家長日記』風間書房、昭和60年。『続史料大成21 伯家五代記』臨川書店、昭和42年。藤原長兼『増補史料大成31 三長記』臨川書房、昭和40年。藤原経房『史料大成22・23 吉記』内外書籍、昭和10年) ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏 ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻) ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻) ・その3 元久2年~建永元年(第1巻) ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ...
【隠岐ふたたび…】RE:後鳥羽院を巡るフィールドワーク~後編~
前回のあらすじ コロナ禍を経て念願の隠岐再訪を目指したワタクシ甚之助は、酷暑の中を必死の思いで隠岐・海士町に降り立った。 そして遂に、前回目の当たりにすることのできなかった後鳥羽院「お腰掛けの石」と対面する。 次いで、SNS上では長らく付き合いのある通称・元大賞さんと邂逅し、ふたたび隠岐神社・御在所&火葬塚跡へと足を踏み入れた。そこで目にしたものは「ひと夏の幻」だった……。 目次 ・पुनर्मिलाम ओकि・・・ ・キーポイント美保関 ・それからのこと 出雲国風土記 (講談社 ...
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佐渡島をブラっと散歩してきましたレポ~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその2 おまけ編~
今回は本当におまけ編w サムネ画像は、佐渡汽船の看板娘・カーフェリー三人娘の(左から)「あかねちゃん」「ときわちゃん」「おけさちゃん」。 それぞれ佐渡汽船のフェリーがモチーフ。ちなみに「おけさちゃん」が長女。「あかねちゃん」が末っ子とのこと。めんこいwww Amazon 10 地球の歩き方JAPAN 島旅 佐渡 ブラタモリ 9 平泉 新潟 佐渡 広島 宮島 さて、【佐渡の入江の順徳院 後編】で『堂所御所跡』へ行ってきた後で、フェリーまでに相当な時間があったので「さてママ、どーし ...
【谷根千の終着駅】由緒正しい下町食堂『動坂食堂』で食す!
※2019年12月に訪問した折りの記事です! さて以前、本家の方で谷根千の散歩レポートを書いた際、千駄木・団子坂のところで「近くの動坂下にある『動坂食堂』がオススメ」みたいなこともあわせて書きましたが、今回は"やっと"件の『動坂食堂』に再訪できたので、その時のレポートです。 cf,谷根千を歩く。 谷根千を歩く。【おまけ編】 Amazon 新版 谷根千ちいさなお店散歩 さてまず個人的な思い出なのですが、東京に住んでいた頃、ここ『動坂食堂』さんの近くに住んでいたこともあっ ...
小型ジンバルカメラ『DJI Pocket2』導入してみた!
ここでは正式に報告していませんでしたが、Youtube始めてました(笑) cf,ゆーちゅーぶはじめました。 - jinnosuke-labo on Youtube そこで今回撮影用機材として、VLOG等に特化したジンバルカメラ『DJI Pocket2』を購入したのでそのレビューなんかをササっと書いてみたいと思います。 このDJI Pocket2は、手軽に使えるポケットジンバルとして話題になった『DJI Osmo Pocket』の後継機になります。 Amazon 【国内正規品】 DJI ...
湖に沈む「幻の橋」タウシュベツ川橋梁を行く!
※本記事の内容は2024年08月時点のものです。 北海道上士幌町。 大雪山東南麓に位置するこの街には、「幻の橋」と呼ばれる橋がある。正式名称・タウシュベツ川橋梁は、知る人ぞ知る北海道屈指の秘境だ(「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」として北海道遺産や近代化産業遺産に認定されている。なお)。 これは2024年08月にタウシュベツ川橋梁を訪れた時のレポートです(なお見学方法はこちらから)。 300ピース ジグソーパズル KAGAYA 幻の銀河橋(北海道)-天の川とタウシュベツ川橋梁- ...
銀座の老舗バー『ルパン』で呑む
日本屈指の繁華街、東京・銀座。 和光の時計台は海外の旅行者からも人気のスポットですが、そこからほど近いところにあるのが老舗バー『ルパン』。 創業は昭和3(1928)年。開店時には当時近くにあった文藝春秋社の面々からの支援があり、以来文壇バーとして知られています。 注:本記事にはお酒にまつわる記述がありますが、飲酒を勧めるものではありません。 また、未成年の飲酒は法律で禁止されています。 成人であっても節度とマナーを守って過度な飲酒は控えましょう。 飲酒運転は絶対やめましょう。 猪 ...
【23区唯一の渓谷】等々力からめぐる東京古墳散歩♪
Amazon 私のオアシス 等々力渓谷 ※今年(2023年)03月にした散歩です。 例のウイルスも収まりをみせ、所用をかねて上京した折、長い付き合いの知人家族から「朝食でも食べにおいでよ~」とお誘いを受けたので、散歩がてら東京・世田谷区から大田区にかけての多摩川沿いを歩きました。 件の知人宅は東急東横線の多摩川駅が最寄りなのですが、今回は大井町線等々力駅からの出発。 早朝だから人通りもまばら。そういえばこの駅前も再開発云々でいろいろ変わってたな。 ...
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