【読書感想】岡潔『紫の火花』
紫の火花 岡潔 出版社:朝日新聞出版(朝日文庫) 発売日:2020/03/06 稀代の天才数学者が語る知性の本質 不世出の数学者・岡潔の名著『春宵十話』に続く随筆集。 著者による警世の文章の中でも最高傑作と称されるもので、『春宵十話』が本編とするなら本書は理論編ともいうべき内容となっている。昨年、56年ぶりの復刊を果たした。 「情緒」「独創」「教育」というキーワードをもとに、著者は様々な視点から人と教育、そして知性そのものの在り方を捉えていた。 本書では数学的演繹の視点と自我本能の情緒的観点か ...
【読書感想】武田惇志・伊藤 亜衣『ある行旅死亡人の物語』
ある行旅死亡人の物語 created by Rinker Kindle Amazon 楽天市場 ある行旅死亡人の物語 武田惇志 / 伊藤亜衣 出版社:毎日新聞出版 発売日:2022/11/29 ある行旅死亡人の物語 Kindle版 ひとりの人間の人生と生きていた証 ひとりの行旅死亡人の女性の謎を解き明かそうとする二人の記者によるルポ。 件の女性は孤独死した状態で発見されたが、部屋には3400万円にのぼる多額の現金とわずかな身の回りのものを残すばかりでその素性が判然としない。警察や探偵 ...
【読書感想】ズミクニ『統合失調症になった話(※理解ある彼君はいません) 推しと福祉に救われて社会復帰するまでの劇的1400日』
統合失調症になった話(※理解ある彼君はいません) 推しと福祉に救われて社会復帰するまでの劇的1400日 (カドカワデジタルコミックス) created by Rinker Kindle Amazon 楽天市場 統合失調症になった話(※理解ある彼君はいません) 推しと福祉に救われて社会復帰するまでの劇的1400日 ズミクニ 著 / 岩波明 監修 出版社:KADOKAWA 発売日:2023/02/22 支えとなるものの大切さと温かさ タイトル通り、著者が統合失調症を発症して後、措置入院から社会復 ...
【読書感想】西川明彦『正倉院のしごと-宝物を守り伝える舞台裏』
正倉院のしごと-宝物を守り伝える舞台裏 西川明彦 出版社:中央公論新社(中公新書2744) 発売日:2023/03/22 過去と未来を引き継ぐ仕事 毎年秋に奈良国立博物館で開催される正倉院展は、例年その時期が近づくと異様なほどの耳目を集める。一体なにがそれほどまでに人の心を惹きつけるのか? もちろん「正倉院」という言葉自体、ほぼ全ての日本人が学校の教科書で必ず目にするものだし、そこに納められている宝物が悠久のシルクロードのロマンと結びつけられて記憶されていることもあるだろう。だが、本当の魅力は、13 ...
【読書感想】『獣神サンダー・ライガー自伝』上・下・完結編
獣神サンダー・ライガー自伝(上) 出版社:イースト・プレス 発売日:2017/07/07 獣神サンダー・ライガー自伝(下) 発売日:2017/10/15 獣神サンダー・ライガー自伝 完結編 発売日:2020/03/15 プロレス界のレジェンド、獣神サンダー・ライガーのこれまでとこれからと…… 今年1月、日本はもとより世界のプロレス界にもその名を馳せたスーパーヒーロー、獣神サンダー・ライガーがリングを去った。 マスクをかぶる前から通算36年の長きにわたって日本のプロレス界をけん引し、 ...
【読書感想】笹井宏之『えーえんとくちから』
えーえんとくちから 笹井宏之 出版社:筑摩書房(ちくま文庫) 発売日:2019/01/10 えーえんとくちから (ちくま文庫) Kindle版 なにげない日常を問いただす言葉たち 最近すっかりご無沙汰加減となっている例の後鳥羽院がらみだが、それでもいろいろちまちま進めている。そして去年くらいからは、和歌以外にも以前読んだ短歌集なんかを再び紐解くようになった。そんな折に再読した一冊。 難病を患い長い間ほぼ寝たきりだった歌人・笹井宏之。地方紙やインターネットの短歌サイトでその作品が注目されるよ ...
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『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30)
3回目は第1章20~30節。 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①atha vyavasthitāndṛṣṭvā dhārtarāṣṭrānkapidhvajaḥ / pravṛtte śastrasaṃpāte dhanurudyamya pāṇḍavaḥ // 20 // hṛṣīkeśaṃ tadā vākyamidamāha mahipate / senayorubhayormadhye rath ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その4(Ⅰ・31~39)
4回目は第1章31~39節。 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①nimittāni ca paśyāmi viparītāni keśava / na ca śreyo'nupaśyāmi hatvā svajanamāhave // 31 // ②na kāṅkṣe vijayaṃ kṛṣṇa na ca rājyaṃ sukhāni ca / kiṃ no rājyena govinda kiṃ bh ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47)
5回目は第1章40~47節 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①kulakṣaye praṇaśyanti kuladharmāḥ sanātanāḥ / dharme naṣṭe kulaṃ kṛtsnamadharmo'bhibhavatyuta // 40 // ②adharmābhibhavātkṛṣṇa praduṣyanti kulastriyaḥ / strīṣu duṣṭāsu vārṣṇe ...
【読書感想】ヴィヤーサ著・石原美里訳『邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻』
邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻 created by Rinker Amazon 楽天市場 邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻 ヴィヤーサ 著 / 石原美里 訳 出版社:パブファンセルフ 発売日:2024/01/29 愛する者を失った悲しみと屈辱 インドの二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』。そのうち『マハーバーラタ』(以下MBh)の第11巻「Strī-Parvan」の日本語訳注本。 MBhの日本語完訳は未だなされていない。故上村勝彦博士による翻訳は、急逝のため第8巻途中までにとどま ...
『般若心経』をサンスクリット原典で読む!
多分日本で一番有名な仏教経典である『般若心経』は、正式には『般若波羅蜜多心経』と呼ばれ、今から1600年以前、サンスクリット語で書かれた『Prajñāpāramitā-hṛdaya-sūtram』を漢訳したものだ。 そもそも『般若心経』は、仏になるために菩薩が行う修行・知恵(般若波羅蜜・般若波羅蜜多)を説く『般若経』という経典群の中のひとつで、大乗仏教の根本思想である"空"の思想を簡潔にまとめている。そのため、漢訳されたものもその短い文言の中で大乗仏教の根幹が説かれているとされ、多くの宗派で今なお用い ...
【ヒンドゥー教の聖典】『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!~前説~
目次 まえがきと若干の解説 『バガヴァッドギーター』テキスト 参考文献 【本編】 ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その1(Ⅰ・1~11) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その2(Ⅰ・12~19) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その4(Ⅰ・31~39) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47) ・『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!そ ...
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崇徳院と土御門院を巡る四国~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその4 最終回~
保元の乱の首謀者として讃岐に流された崇徳院。そしてその曾姪孫(甥の孫)にあたり、承久の乱で流された父・後鳥羽院、弟・順徳院の身の上を憂い、自ら懇願し阿波に流された土御門院。この二人を追ったレポート。 Field work on SUTOKU Tenno & TSUCHIMIKADO Tenno. SUTOKU Tenno[1,Jul,1119~14,Sep,1164(28,May,Genei2~26,Aug,Chokan2):75nd emperor(reigning:1123~1142)and R ...
後鳥羽院を巡るフィールドワーク【大原御陵・水無瀬神宮・隠岐】
後鳥羽院 第二版 後鳥羽院 (コレクション日本歌人選) Field work on Go-Toba Tenno[6,Aug,1180~28,Mar,1239(14,Jul,Jisho4~22,Feb,enoh1):82nd emperor(reigning:1183~1198)and Retired Emperor]. He was also a master of Waka(Waka is Japanese traditional poetry) in Japan medieval history. ...
後鳥羽院『遠島御百首』私見その6~雑 三十首(下)~
(綱掛の松 隠岐・海士町 2018年08月甚之助撮影) ・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~ 雑三十首(下) 目次 八十六、日にそひて 八十七、何となく 八十八、人ごゝろ 八十九、みほのうらの 九十、たとふべき 九十一、はれやらぬ 九十二、うしとだに 九十三、ことづてむ 九十四、とにかくに 九十五、ふるさとの 九十六、おもふ人 九十七、われこそは ...
【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏
本稿は、後鳥羽院生前の出来事のうち、院のその後の人生に影響を与えたであろう事柄を、公卿日記をはじめとした史料より抽出したものである。 注意事項として、記事内の各天皇および院の呼称は省略している。また本稿タイトルの「運命の四の宮」は、目崎徳衛『史伝後鳥羽院』の一節による。 ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻) ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻) ・その3 元久2年~建永元年(第1巻) ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻) ・その6 ...
藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その1(治承4年~建仁元年)
(甚之助蔵 藤原定家『明月記』全3巻、国書刊行会、明治44年刊) さて、フィールドワーク編も終わったということで、これからは例の後鳥羽院単推しのママとの共同研究(←大袈裟w)をちょいちょい記事にしていってみようと思います。 まずその最初に、生前の後鳥羽院の姿を知る上で貴重な史料となる歌人・藤原定家の日記『明月記』に描かれている院像を見ていきます。 今回は"その1"として後鳥羽院の名前が出ている『明月記』の記事の年月日をピックアップし、その時期に院と定家はどのような関係性・交流があったか ...
後鳥羽院『遠島御百首』私見その4~冬 十五首~
・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~ 冬十五首 目次 五十六、見し世にも 五十七、冬くれば 五十八、しもがれの 五十九、かみな月 六十、をのづから 六十一、こぞよりは 六十二、そめのこし 六十三、たつた山 六十四、苔しける 六十五、冬ごもり 六十六、やまかぜの 六十七、さながらや 六十八、けさみれば 六十九、おく山の 七十、かぞふれば ...
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【浪人時代の思い出】アリミツ君とマコちゃんのこと。
受験シーズンも終わりに近づき、高校・大学はじめ、いろんなところで合格発表の知らせを耳にする季節となった。 毎年この時期になると、必ず浪人していた頃のことを思い出す。 私は某大手予備校で一年間浪人生活を送り、その間は予備校付属の寮で生活していた。 花の都・TOKYOに出てきたはずが、そこはなぜか木々の緑豊かで動物の鳴き声響くところだった。 人生初の満員電車。 都心ド真ん中にある予備校校舎へ通う日々。 起きてる時は(当然)勉強漬けだったが、ときどき破目を外して寮の仲間たちと長時間語り合ってい ...
北区赤羽の住宅街をプラっと散歩してきましたレポ
昨年夏に上京した折、ちょっと時間が空いたので赤羽で途中下車して住宅街を散歩してきたレポートです。 赤羽といえば最近では住んでみたい街として人気もうなぎ上りのようですが、細い路地に"せんべろ"飲み屋街と、知る人ぞ知る隠れたディープスポット密集地帯だったりする。また昨年暮れ、タレントの壇蜜さんと漫画家・清野とおるさんのご結婚が報じられた際、清野さんの地元ということでもその名が更に広まったりしたのは記憶に新しいところ。 駅付近のふざけた七福神像やホテル屋上の自由の女神像なんか特に有名ですが、今回は赤羽駅 ...
佐渡島をブラっと散歩してきましたレポ~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその2 おまけ編~
今回は本当におまけ編w サムネ画像は、佐渡汽船の看板娘・カーフェリー三人娘の(左から)「あかねちゃん」「ときわちゃん」「おけさちゃん」。 それぞれ佐渡汽船のフェリーがモチーフ。ちなみに「おけさちゃん」が長女。「あかねちゃん」が末っ子とのこと。めんこいwww Amazon 10 地球の歩き方JAPAN 島旅 佐渡 ブラタモリ 9 平泉 新潟 佐渡 広島 宮島 さて、【佐渡の入江の順徳院 後編】で『堂所御所跡』へ行ってきた後で、フェリーまでに相当な時間があったので「さてママ、どーし ...
歌人・鳥居さんに会ってきた~三浦綾子記念文学館講演会レポ~
6月13日、北海道旭川市在の三浦綾子記念文学館において、開館20周年を記念した特別講演会が開催された。 ゲストは"セーラー服の歌人"として注目されている歌人・鳥居氏だ。 キリンの子 鳥居歌集 2016年に本家・ネト見の方でも紹介した歌集『キリンの子』は現在までに累計2万部を売り上げている。また、彼女の壮絶な半生もまた注目されている理由のひとつに挙げられていると思うが、今回はそんな前提は一旦置いて、一読者として実際どのような人なのか気になっていたのでその講演会を聴きに行ってきましたというレポー ...
湖に沈む「幻の橋」タウシュベツ川橋梁を行く!
※本記事の内容は2024年08月時点のものです。 北海道上士幌町。 大雪山東南麓に位置するこの街には、「幻の橋」と呼ばれる橋がある。正式名称・タウシュベツ川橋梁は、知る人ぞ知る北海道屈指の秘境だ(「旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群」として北海道遺産や近代化産業遺産に認定されている。なお)。 これは2024年08月にタウシュベツ川橋梁を訪れた時のレポートです(なお見学方法はこちらから)。 300ピース ジグソーパズル KAGAYA 幻の銀河橋(北海道)-天の川とタウシュベツ川橋梁- ...
【溢れ出る昭和感】新宿の老舗食堂・長野屋で定食を食べる。
さて昨年末に上京していた折、久々に行ってみたのでサクッとレポートです。都内住のころ新宿界隈で用事があるとき、食事時なり小腹が空いたときなどにちょいちょい食べにきていたお店。 あのころangle 街と地図の大特集1979新宿・池袋・吉祥寺・中央線沿線編 Kindle版 風景は記憶の順にできていく 新宿駅東南口を出てすぐ。様々な飲食店がひしめく新宿の街のなかでひときわ異彩を放っているのがここ「長野屋」。 この建物に見覚えのある方も多いはず。 こちらの長野屋さんはその外観からもわ ...
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