【読書感想】永田カビ『膵臓がこわれたら、少し生きやすくなりました。』

 
 膵臓がこわれたら、少し生きやすくなりました。
 永田カビ

 出版社:イースト・プレス
 発売日:20221/12/14

堕ちよ、生きよ。

 『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』での鮮烈なデビュー以降、事あるごとに衝撃的なエッセイを世に問い続けるマンガ家・永田カビ先生による最新作。
 多少ネタバレになるが、以前発表された『現実逃避してたらボロボロになった話』の続編というか続報というか、再来というか、再発というか……今回もまた御多分に洩れず衝撃的な内容である。しかし相変わらずの自虐的でコミカルな筆致なので、かなりシリアスな内容ながら自然と読みづらさはない。非常に重たい内容であることに変わりはないが。……
 ただ今回はこれまでのエッセイ作品にはない、どこか救いのようなものが感じられることは特筆すべきだろう。これまでの作品では、悩んで悩んで突き抜けて、自らその突破口を見出し作品に昇華した、そんな姿が垣間見えた。自分の身に起こったこと、自分自身の気持ち、そして周囲の人間のあり方……そこになんらかの解答を導き出してきた感じがある。
 しかし本作では、答えを出したり求めたりしたというより、「気づいた」というべきだろう。これまで身の回りに自然とあったはずなのに、作者の目には見えていなかったあるいは映りこんでこなかったもの……。それは「礎」だったかもしれないし「柱」だったかもしれない。だが自身の苦悩の原点にして回帰点でもあり、またその対象であり救いであったもの、そのものへの「気づき」を得たのだと思う。あまり詳細に語ると完全にネタバレになってしまうので、かなりボンヤリとした書き方になったことはご容赦願いたい。
 
 なにはともあれ、個人的にそのエピソードというかそのシーンというか、その一コマに出会えただけで、本作を読んでよかったと素直に思えた。
 これまでの作品に触れてきた読者ならお分かりだろうが、本作でも相変わらずの性格。人によっては辛辣な言葉を吐き掛けたくなるかもしれない。だが人それぞれいろんな事情を抱えて生きている。作者もまた然り。摂食障害、ADHD、アル中……。作者の場合メンタル面でその事情が顕著だが、そんな中でも作品として昇華してしまうあたり、いつにもまして「どこまでも繊細な人なんだなぁ……」と思わざるを得ない。
 
 Amazon
 
 失踪日記2 アル中病棟

 

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする