【読書感想】水原紫苑『百人一首 うたものがたり』

 
 百人一首 うたものがたり
 水原紫苑
 出版社:講談社(講談社現代新書)
 発売日:2021/03/17

『百人一首』入門の新定番

 近年、マンガやアニメの影響もあって若い世代からも親しまれている「百人一首」。
 しかし義務教育で扱われているものとはいえ、まだまだ敷居の高さを感じている人も多いだろう。
 本書はそんな「百人一首」の入門書として画期的な一冊となっている。

 なにをもって画期的かというと、まず著者が現代短歌の歌人であること。それゆえに備えもつ広範な知識と繊細な感性をフルに活かした解説がなされている点である。表紙(正しくは帯)の明朗そうな少女に騙されてはいけない。
 一首あたり2ページが割かれ、内容はコンパクトに収められている。しかしその内容はというと、歌の詠まれた背景や時流、鑑賞ポイントの解説はもちろん、同じ歌人としての歌に対する批評や技巧解説など実に秀逸だ。また現代短歌の歌人との比較などは、著者一流の「百人一首」解説である。
 とにかく膨大な情報量が簡潔に且つ平易にまとめられているあたり、「百人一首」の入門書は数多くあれど、頭一つ抜いている感じは否めない。
 800年前の王朝和歌の香りを現代に正に生きる人の声のように届けてくれている。
 
 少し個人的な話しになるが、私自身ここでも『後鳥羽院Project』と称し『百人一首』とも関わりの深いことをやっている。しかし実のところ、後鳥羽院よりこの『百人一首』を編纂した藤原定家との付き合いの方が長かったりする。
 『明月記』など何度読み返したことか知れない。そして読み返すたびに「定家ってホント嫌な奴だな~」などと小言を言いたくなる。
 しかし著者はあとがきで、そんな定家にも一家言チクリと言ってくれていて、個人的に大変胸がすく思いがした(冷泉家の皆さんゴメンナサイ……)。
 
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 百人一首 解剖図鑑
 

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