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【読書感想】ダートネル『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』

 
 この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた
 L・ダートネル 著 / 東郷えりか 訳

 出版社:河出書房新社(河出文庫)
 発売日:2018/09/06

もし明日、この世がリセットされたなら

 『Dr.stone』の元ネタというか参考文献としても有名な世界的ベストセラー。この世界が大破局を迎え、これまで築き上げてきた文明が崩壊した後、いかに生活基盤を整え現代社会同様のシステムを構築するか、基礎的な科学知識をベースに詳細に綴られている。『Dr.stone』をきっかけに手に取った読者も多いだろう。

 本書を読むにつけ考えさせられるのは、これまで人類が築き上げてきたさまざまな叡智によって、われわれの普段の何気ない生活が支えられているという事実である。電気や水道といったインフラ、食べ物はもちろん時計にカレンダー、医療に薬・・・その一つひとつを取り上げればキリがない。果たしてその一つひとつをどこまで理解して日夜暮らしているのか? まずもってほぼ何も理解していないというのが実情だろう。実際、手元にあるスマホ一つとっても、この小さな機械の中で何が起き何がなされているかさえほとんどの人が理解していない。
 どんな物事も、その基礎の基礎、基本の基本部分を紐解けば、教科書に載っているような内容が組み合わさっているに他ならない。ただ、その教科書的内容さえ、歴代の名だたる科学者や歴史的偉人たちが生涯をかけ研鑽努力してきた叡智である。
 ある日突然この世界が壊滅的な状況に陥って、はたして本書で取り上げられているレベルの生活基盤を自力で再構築できるものか? 本書はある種の思考実験的な側面も過分に含んでいるので、「もし明日世界が崩壊したら……」と想像してみてあれやこれやと思考を巡らせてみるのも面白いだろう。また、科学分野全体の基礎的な部分の学び直し、そのヒントとしてもとても有益な一冊だ。

 本書も書棚整理で発掘した再読本なのだが、相変わらず読み物としては大変硬派な感じなので多少の読みづらさがある。多分原著そのものが硬派なのだろうから、翻訳も大変だったのだろうことが想像される。また、全体のボリューム比べて図説が少なめなのが少し残念。
 
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