【読書感想】吉田洋一『零の発見』(岩波新書)
まともな記事の一発目はやはり書評かなと思い、そうします。 で、やっぱりその一冊目に選ぶならこれにしようかと思います。 吉田洋一『零の発見』岩波新書 言わずと知れた岩波新書屈指の名著。 本書は表題ともなっている“零(0)の発見”と“直線を切る-連続の問題-”という数学の分野において根底をなす二点に対し、単に数学的な意味合いを解説するにとどまらず、その起源や変遷、または革命的な邂逅などの歴史的な軌跡をなぞるものだ。 初版は1939年だが、21世紀と称して久しい今日においても内容は極めて新鮮の ...
【読書感想】高槻泰郎『大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済』
大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済 高槻泰郎 出版社:講談社(講談社現代新書) 発売日:2018/07/19 世界最古の先物取引所、その実情 金融の歴史について書かれた本はあまたあるが、本書はその中でも先物取引の祖といわれる大坂・堂島米市場に関する最新の研究成果を報告してくれる良書である。 金融市場の暴走、それは現代に生きる我々もまた経験しているところだが、今のようにネット環境はおろか人力以外の情報伝達手段がない中でいかに証券的市場を形成したか、著者は豊富な史料をもとに解説してくれている。図版の ...
【読書感想】川井俊夫『金は払う、冒険は愉快だ』
金は払う、冒険は愉快だ created by Rinker Kindle Amazon 楽天市場 金は払う、冒険は愉快だ 川井俊夫 出版社:素粒社 発売日:2023/09/13 古道具界のフィリップ・マーロウ これは不条理小説なのか? それとも無頼派小説なのか? 私小説ともエッセイとも言い難い、6B鉛筆で書きなぐったかのような武骨な一冊。 毒舌と真面目さが入り混じるとある古物商の日常は、悪態と罵倒に満ちていながらどこか頭を殴られたような痛快さと風通しの良さがある。その半生と日常はあまりにも ...
【読書感想】渡邉雅子『論理的思考とは何か』
論理的思考とは何か (岩波新書) created by Rinker Kindle Amazon 楽天市場 論理的思考とは何か 渡邉雅子 出版社:岩波書店(岩波新書 新赤版2036) 発売日:2024/10/21 多元的思考の可能性 近年、仕事や生活のさまざまな場面で論理的思考の必要性が声高に叫ばれているが、それと呼応するように多くの関連書籍も刊行されている。だがその多くは、論理的思考をどのように使いこなすかという小手先の解説に終始しており、論理的思考そのものを深堀りするに至っていない場合が ...
【読書感想】道籏泰三編『中上健次短編集』
中上健次短篇集 道籏泰三 編 出版社:岩波書店 (岩波文庫 緑230-1) 発売日:2023/06/15 中上文学の道標 戦後生まれで初の芥川賞作家。無頼でフーテンな生き様は、活躍した時代背景も相俟って今でも語り草となっている。そんな中上健次のデビューから晩年までの短編小説10編を収録している本書は、自身の豊富な人生経験を素材に紡がれた短編小説集である。ただし、中上健次の愛読者にとっては垂涎の一冊という感じなので、はじめてその作品に触れるという読者にとっては少しハードルが高いかもしれない。それでも ...
【読書感想】ガリ『死刑囚の理髪係』
死刑囚の理髪係 created by Rinker Kindle Amazon 楽天市場 死刑囚の理髪係 ガリ 出版社:彩図社 発売日:2024/05/28 罪に向き合うとはどういうことか? 主として裁判で刑が確定していない未決拘留者と死刑囚が収監される拘置所。東京拘置所は全国に8つある拘置所のひとつとしてあまりにも有名だが、そこで「服役」したというある意味珍しい経験をした著者による実録記。死刑確定後、死刑囚は面会など外部との接触が極限まで制限されその動向を知ることはできないが、理髪師として ...
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『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30)
3回目は第1章20~30節。 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①atha vyavasthitāndṛṣṭvā dhārtarāṣṭrānkapidhvajaḥ / pravṛtte śastrasaṃpāte dhanurudyamya pāṇḍavaḥ // 20 // hṛṣīkeśaṃ tadā vākyamidamāha mahipate / senayorubhayormadhye rath ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その2(Ⅰ・12~19)
2回目は第1章12~19節をば。 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①tasya saṃjanayanharṣaṃ kuruvṛddhaḥ pitāmahāḥ / siṃhanādaṃ vinadyoccaiḥ śańkhaṃ dadhmau pratāpavān // 12 // ②tataḥ śankhaśca bheryaśca paṇavānakagomukhāḥ / sahasaivābhyahanyanta ...
『般若心経』をサンスクリット原典で読む!
多分日本で一番有名な仏教経典である『般若心経』は、正式には『般若波羅蜜多心経』と呼ばれ、今から1600年以前、サンスクリット語で書かれた『Prajñāpāramitā-hṛdaya-sūtram』を漢訳したものだ。 そもそも『般若心経』は、仏になるために菩薩が行う修行・知恵(般若波羅蜜・般若波羅蜜多)を説く『般若経』という経典群の中のひとつで、大乗仏教の根本思想である"空"の思想を簡潔にまとめている。そのため、漢訳されたものもその短い文言の中で大乗仏教の根幹が説かれているとされ、多くの宗派で今なお用い ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47)
5回目は第1章40~47節 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①kulakṣaye praṇaśyanti kuladharmāḥ sanātanāḥ / dharme naṣṭe kulaṃ kṛtsnamadharmo'bhibhavatyuta // 40 // ②adharmābhibhavātkṛṣṇa praduṣyanti kulastriyaḥ / strīṣu duṣṭāsu vārṣṇe ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その6(Ⅱ・1~11)
6回目は第2章1~11節 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①sañjaya uvāca / taṃ tathā kṛpayāviṣṭam aśrupūrṇākulekṣaṇam / viṣīdantam idaṃ vākyam uvāca madhusūdanaḥ // 1 // ②śrībhagavān uvāca / kutastvā kaśmalam idaṃ viṣame samupasthit ...
インド二大叙事詩とヒンドゥー教の聖典について
【改訂記録】 ・2021/02/24 「あらすじ」欄に各巻・章のタイトル追記。 前説 インドの二大叙事詩『マハーバーラタ(Mahābhāratam)』と『ラーマーヤナ(Rāmāyana)』、そしてヒンドゥー教における最高の聖典と称される『バガヴァット・ギーター(Śrīmadbhagavad gītā)』について、その概要をまとめてみました(個人的な復習の意味も含め)。 かなりザックリとしたまとめになっていますが、本記事はちょっと実験したい部分もあって、今後も随時改訂したりしていきたいと思います。 ...
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【佐渡の秘境!!】順徳院崩御の地・堂所御所跡へ【佐渡の入江の順徳院 後編】
Field work on JUNTOKU Tenno[22,Oct,1197~7,Oct,1242(10,Sep,Kenkyu8~12,Sep,Ninji3):84nd emperor(reigning:1210~1221)and Retired Emperor]. Click here for the part1 前編はこちら ↓↓↓↓ 佐渡の入江の順徳院 前編~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその2~ パパ・後鳥羽院譲りの文武両道の逸材 目次 前説 堂所御所跡へ ...
令和の時代に鎌倉幕府に思いを馳せてみた~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその3~
Field work on KAMAKURA Shogunate around the Jokyu war age. 2019年末、例の後鳥羽院単推しの通称ママとの取材旅行の前に、ひとりブラっと古都・鎌倉に残る承久の乱関連の史蹟を巡ってきましたというレポ。 目次 ・切通しのこと ・冬の由比ガ浜 ・承久の乱を彩った人々の眠る場所と日蓮の消息 ・鶴岡八幡宮と承久の乱 参考文献 Amazon図説 鎌倉府 新版改訂 鎌倉観光文化検定 公式テキストブック 切通しのこと 平安時代末、栄華を極めた平家の ...
藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その5(建暦元年~建暦2年)
後鳥羽院の姿を記録する主な公家日記3 (甚之助蔵 『源家長日記』風間書房、昭和60年。『続史料大成21 伯家五代記』臨川書店、昭和42年。藤原長兼『増補史料大成31 三長記』臨川書房、昭和40年。藤原経房『史料大成22・23 吉記』内外書籍、昭和10年) ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏 ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻) ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻) ・その3 元久2年~建永元年(第1巻) ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ...
【ご冗談でしょ定家さん!?】『明月記』講読その1~治承四五年記①(治承四年二月~五月)~
以前公開した『藤原定家「明月記」にみる後鳥羽院の姿』シリーズをやっていた頃から、いつかは『明月記』自体の講読もやりたいと考えていた。 ただ、当の『明月記』が難解極まりないことと、明月記研究会はじめ堀田善衛御大などさまざまな研究者や愛読者がすでに多くの著作や論文を出している。またネット記事なんかでもあちらこちらで書かれていることもあって、「今さら自分がブログ上でやってもなぁ・・・」と二の足を踏んでいた。 とはいえ相変わらずの性と言おうか、思いついたんだからやってみようかしらと、最近になって ...
後鳥羽院『遠島御百首』私見その3~秋 ニ十首~
・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~ 秋ニ十首 目次 三十六、かたしきの 三十七、よのつねの 三十八、秋されば 三十九、おもひやれ 四十、咲かゝる 四十一、ふるさとを 四十二、いかにせむ 四十三、なきまさる 四十四、いたづらに 四十五、おもひやれ 四十六、ふるさとの 四十七、野をそむる 四十八、あはれなる 四十九、はれよかし 五十、岡の ...
【ご冗談でしょ定家さん!?】『明月記』講読その2~治承四五年記②(治承四年六月~十二月)~
今回は前回に引き続き、治承四五年記のうち治承四年六月~十二月を読んでいこうと思います。 目次 【凡例】 治承四年(一一八〇)<定家十九歳・従五位上侍従> ・遷都、決定!!(六月一日条) ・藤原定家という人(七月十五日、九月十五日、十月二十二日条) ・俊成一家でパンデミック(七月十七日~二十五日条) ・平清盛、激怒!(十一月七日条) ・姉、健御前のこと(十一月八日条) ・帝、福原より還る(十一月二十五・二十六日条) ・定家卿、叱られる(十二月二十四日条) 参考文献 【 ...
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銀座の老舗バー『ルパン』で呑む
日本屈指の繁華街、東京・銀座。 和光の時計台は海外の旅行者からも人気のスポットですが、そこからほど近いところにあるのが老舗バー『ルパン』。 創業は昭和3(1928)年。開店時には当時近くにあった文藝春秋社の面々からの支援があり、以来文壇バーとして知られています。 注:本記事にはお酒にまつわる記述がありますが、飲酒を勧めるものではありません。 また、未成年の飲酒は法律で禁止されています。 成人であっても節度とマナーを守って過度な飲酒は控えましょう。 飲酒運転は絶対やめましょう。 猪 ...
【探訪】上野『大統領』私的呑みかた論w
Amazon 上野アンダーグラウンド ※この記事は飲酒を薦めるものではありません。 未成年の飲酒は法律で禁じられています。 また飲酒運転は絶対にやめましょう。 お酒は程よく気持ちよく! 数年前、「遊んで学ぶお父さん」のUronpoiさんを誘って以来、氏をどっぷりハマらせてしまった感があって若干の責任を感じていたりするのですが、よくよく考えたら自分でレポを書いたことがないなと思い、ホント今更ながらの「大統領」レポ。 レポートと言っても、普段どんな風に大統領で呑んでい ...
【とはずがたり】「『明月記』の後鳥羽院」よもやま話
調査・研究に用いているノート。 「藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿」調査中の机の上w 目次 ・きっかけ ・隠岐、集中豪雨 ・愛憎半ば、悲喜交々 その1 ・愛憎半ば、悲喜交々 その2 ・ママ、クルマにはねられる ・『吉記』のこと ・青天の霹靂 ・ママ、怒る! ・老いたる定家と後鳥羽院 ・拝啓、藤原定家さま Amazon 夢のなかぞら―父 藤原定家と後鳥羽院 ・きっかけ 「まあ、またなんとも面白そうなことを……」 2021年春、私は ...
あがた森魚さんの映画を見に行くin小樽【佐藤敬子先生を探して】
目次 前説 映画『佐藤敬子先生を探して』 私にとっての「あがた森魚」という人 脚注 Amazon 愛は愛とて何になる ◎前説 8月上旬、私は農作業の傍らで北海道のローカルラジオ番組に耳を傾けていた。 その番組の一コーナーにとあるミュージシャンがゲスト出演していたのだが、なにやら熱心に口角泡を飛ばす勢いで必死に言葉を紡いでいる。件のコーナーでは、さまざまなミュージシャンのメッセージが流されたりゲスト出演した後で楽曲が放送されるのだが、その日に限ってはなかなか曲に移らない。最終的に楽曲 ...
オッサンだから今話題の『DEOCO』使ってみましたレポw
※個人的な感想です。効果には個人差があります(多分)。 どうも、基本的に口と腋と足が臭く“哀しい臭い”と書いて男の『哀臭(あいしゅう)』を漂わせている甚之助です。見事にオッサンです。 さて、昨今巷のオッサンたちの間では ●リアル君の名は。おっさんが女の子の匂いを買ってきて身につけたら、たまらない背徳感を味わえた (わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる) ●デオコで女の子の匂いを感じるためには女の子との思い出が必要という問題 (本しゃぶり) これらの記事を皮 ...
【浪人時代の思い出】アリミツ君とマコちゃんのこと。
受験シーズンも終わりに近づき、高校・大学はじめ、いろんなところで合格発表の知らせを耳にする季節となった。 毎年この時期になると、必ず浪人していた頃のことを思い出す。 私は某大手予備校で一年間浪人生活を送り、その間は予備校付属の寮で生活していた。 花の都・TOKYOに出てきたはずが、そこはなぜか木々の緑豊かで動物の鳴き声響くところだった。 人生初の満員電車。 都心ド真ん中にある予備校校舎へ通う日々。 起きてる時は(当然)勉強漬けだったが、ときどき破目を外して寮の仲間たちと長時間語り合ってい ...
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