【読書感想】柿沼陽平『古代中国の24時間-秦漢時代の衣食住から性愛まで』

 
 古代中国の24時間-秦漢時代の衣食住から性愛まで

 柿沼陽平
 出版社:中央公論社新社(中公新書)
 発売日:2021/11/18

古代中国リアルシミュレーション

 始皇帝伝説や『三国志』、今でも人々の好奇心を魅了してやまない古代中国史。
 本書は古の人々がどのような生活をしていたのか、その実態を著者が太古の昔へワープした体裁で、RPGあるいはシミュレーションゲームのような臨場感あふれる視点で俯瞰してみようという意欲作である。もっとも、シミュレーション上の選択肢の決定権は全て著者に委ねられているが。……

 某名作ドラマのように、各章ごとに刻一刻と時間が経過していくなか、その時々の人々の生活の実態が貴賤を問わず解説されている。
 現代日本のそれと比して、全ての事柄が1~2時間早く進んでいるような感じがあるが、そこがまたリアルである。
 序章で姓名や地理的構造の基本的な説明があった後、起床、身支度、朝食、出勤……と、人々の営みが各時間ごとに多くの図版を取り入れつつ詳細に説かれている。
 なによりうれしいのは、新書にしては珍しいほど膨大な脚注が附されていることだ。巻末に上下2段組で典拠や論文などが記されており、本書内での記載を実際に原著を当たることが容易である。
 専門用語の前に、現代的にわかりやすい言い換えをしてくれているのもありがたく、自分たちの普段の実生活に落とし込むことも容易い。
  
 決して教科書には乗らないであろう当時の生活の実態。本書はそんな知的好奇心がくすぐられるに限らず、実際漢籍に当たる際にも実に有効な便覧本となりうるだろう。それは、著者の並々ならぬ意欲によって書かれたからこそ可能なことだ。その熱量の噴出は、「エピローグ」から「あとがき」にかけて痛いほど感じ取れる。
 読者によっては「これだよ!これ!」と歓喜したくなるレベルの内容を、新書サイズにギュッと凝縮してくれた希少な一冊である。
 
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 古代ローマ人の24時間 —よみがえる帝都ローマの民衆生活
 

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