【読書感想】多田俊哉『そのオリーブオイルは偽物です: 値段が高くても本物はごくわずか』
そのオリーブオイルは偽物です: 値段が高くても本物はごくわずか 多田俊哉 出版社:小学館 発売日:2016/05/27 オリーブオイルにみる食品流通の闇 健康食品として以前より注目を集めている"オリーブオイル"。 店頭で"エキストラバージン"といった表示を目にしている人も多いだろう。 私自身、味的な側面からもオリーブオイルは好んでサラダなんかにかけたりするが、本書で語られるオリーブオイルの正体を知ると正直ゾッとしてしまう。 文字通り、オリーブオイルはオリーブの果実から抽出された植物油である。酸 ...
【読書感想】高野悦子『二十歳の原点』
高校の時、担任や教科担当ではなかったけれど比較的気の合う先生がいた。 ある日他愛もないことを話していた折になんの前触れもなく「君みたいな人の日記だから読んでみるといい」と言われた。同時にその前段となる『ノート』『序章』があることも教えてくれたが、当時最寄りの大型書店で手に入ったのは新潮文庫版の『二十歳の原点』のみだった。他の2冊は絶版の状態だった。 学生紛争がこの国で一番盛んだった頃、一人の女学生が自殺した。当時立命館大学に通っていた高野悦子、その人だ。彼女が一体何に悩み不安を抱えていたのか ...
【読書感想】高野秀行『語学の天才まで1億光年』
語学の天才まで1億光年 高野秀行 出版社:集英社 発売日:2022/09/05 語学と冒険をめぐる青春アナザーストーリー 著者がこれまで巡ってきた数奇な冒険譚とそこにまつわる体当たりの語学学習。これまでの著作を読んだことのある読者には、その破天荒なチャレンジの数々を今更語り直す必要はないだろう。その一つひとつがあまりに突飛なために、もはやどこが一般と著者の閾値なのかが分からない。しかし本書では、その裏に隠された著者のもつ生真面目さが垣間見え、少し落ち着いた感じある。さまざまな経験から得た知見と、20 ...
【読書感想】『1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365』
1日1ページ、読むだけで身につく世界の教養365 デイヴィッド・S・キダー,ノア・D・オッペンハイム 著 小林朋則 訳 出版社:文響社 発売日:2018/04/27 教養を身に着けることって実はとっても楽しい NYタイムズ紙はじめ、日本でも発売当初からテレビなんかでも話題にあがり、アマゾンでは堂々のベストセラー1位を獲得している本書は、タイトル通り、365個の教養知識を1ページずつ簡潔にまとめ、本当に1日5分、1ページ読むだけでさまざまな教養を得られるという代物。 簡潔にまとめられているとはいえ、 ...
【読書感想】大村大次郎『改訂版 税金を払わずに生きてゆく逃税術』
改訂版 税金を払わずに生きてゆく逃税術 大村大次郎 出版社:悟空出版 発売日;2021/09/10 成長しない国で人間らしく生きるために必要なこと 少子高齢化という現実に直面する日本。数十年来蓄積されてきたデータがあるにも関わらず、この国が何もしてこなかったことは既成の事実である。 本書はそんな日本を国民の側から叩き直す、そんな意気込みで書かれている。 著者は元国税局調査官で評論家の大村大次郎氏。数々の著作がありながら、どの著作もその視点・観点に定評がある。 本書に関しては例示が殊のほか ...
【読書感想】網野善彦・宮田登『歴史の中で語られてこなかったこと おんな・子供・老人からの「日本史」』
歴史の中で語られてこなかったこと おんな・子供・老人からの「日本史」 網野善彦・宮田登 出版社:朝日新聞出版 発売日:2020/08/07 網野史観を読み直す名対談集 宮崎駿監督作品『もののけ姫』は、いわゆる網野史観をベースにイメージを膨らませた作品であることは有名だ。 本書は歴史学者・網野善彦氏と、長年交流のあった民俗学者・宮田登氏とが80~90年代にかけて行った対談集。 二人とも鬼籍につかれて20年近くなるが、今なおこうして新装版が出されるあたり、お二人の歴史観・民俗史観の影響力の大きさが窺 ...
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【ゆる解説】『「バガヴァッドギーター」原典訳してみた』補遺
『マハーバーラタ』におけるクルクシェートラの戦いを描いた18世紀の写本(A Tribute to Hinduismより) 目次 ・人名用語解説 ・超要約「バガヴァッドギーター」 ・「ギーター」こぼれ話し 参考文献 ※本編はコチラから! Amazon いちばんていねいでいちばん易しいインド哲学 超入門『バガヴァッド・ギーター』 人名用語解説(第1章~第2章11節に限る) ・アシュヴァッターマン:ドローナの長男。カウラヴァ軍の勇士。 ・アナンタヴィジャヤ:ユ ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その5(Ⅰ・40~47)
5回目は第1章40~47節 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①kulakṣaye praṇaśyanti kuladharmāḥ sanātanāḥ / dharme naṣṭe kulaṃ kṛtsnamadharmo'bhibhavatyuta // 40 // ②adharmābhibhavātkṛṣṇa praduṣyanti kulastriyaḥ / strīṣu duṣṭāsu vārṣṇe ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その3(Ⅰ・20~30)
3回目は第1章20~30節。 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①atha vyavasthitāndṛṣṭvā dhārtarāṣṭrānkapidhvajaḥ / pravṛtte śastrasaṃpāte dhanurudyamya pāṇḍavaḥ // 20 // hṛṣīkeśaṃ tadā vākyamidamāha mahipate / senayorubhayormadhye rath ...
『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!その4(Ⅰ・31~39)
4回目は第1章31~39節。 記事一覧はコチラ→『バガヴァッドギーター』原典訳してみた!(第1章~第2章11節まで) テキスト ①nimittāni ca paśyāmi viparītāni keśava / na ca śreyo'nupaśyāmi hatvā svajanamāhave // 31 // ②na kāṅkṣe vijayaṃ kṛṣṇa na ca rājyaṃ sukhāni ca / kiṃ no rājyena govinda kiṃ bh ...
【読書感想】清水俊史『ブッダという男 初期仏典を読みとく』
ブッダという男 ――初期仏典を読みとく (ちくま新書) created by Rinker ¥880 (2024/04/20 00:21:57時点 Amazon調べ-詳細) Kindle Amazon 楽天市場 ブッダという男 初期仏典を読みとく 清水俊文 出版社:筑摩書房(ちくま新書1763) 発売日:2023/12/07 人間・ブッダは何を語っていたのか ネット上を一時騒然とさせた仏教学界隈のアカハラ問題。その渦中にあった著者による「あとがき」が脚光を浴び、本書は刊行直後から ...
【読書感想】ヴィヤーサ著・石原美里訳『邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻』
邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻 created by Rinker ¥2,200 (2024/04/20 00:21:56時点 Amazon調べ-詳細) Amazon 楽天市場 邦訳マハーバーラタ 寡妃の巻 ヴィヤーサ 著 / 石原美里 訳 出版社:パブファンセルフ 発売日:2024/01/29 愛する者を失った悲しみと屈辱 インドの二大叙事詩『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』。そのうち『マハーバーラタ』(以下MBh)の第11巻「Strī-Parvan」の日本語訳注本。 MB ...
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後鳥羽院『遠島御百首』私見その3~秋 ニ十首~
・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~ 秋ニ十首 目次 三十六、かたしきの 三十七、よのつねの 三十八、秋されば 三十九、おもひやれ 四十、咲かゝる 四十一、ふるさとを 四十二、いかにせむ 四十三、なきまさる 四十四、いたづらに 四十五、おもひやれ 四十六、ふるさとの 四十七、野をそむる 四十八、あはれなる 四十九、はれよかし 五十、岡の ...
崇徳院と土御門院を巡る四国~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその4 最終回~
保元の乱の首謀者として讃岐に流された崇徳院。そしてその曾姪孫(甥の孫)にあたり、承久の乱で流された父・後鳥羽院、弟・順徳院の身の上を憂い、自ら懇願し阿波に流された土御門院。この二人を追ったレポート。 Field work on SUTOKU Tenno & TSUCHIMIKADO Tenno. SUTOKU Tenno[1,Jul,1119~14,Sep,1164(28,May,Genei2~26,Aug,Chokan2):75nd emperor(reigning:1123~1142)and R ...
【ご冗談でしょ定家さん!?】『明月記』講読その3~治承四五年記③(治承五・養和元年)~
引き続き、治承四五年記のうち治承五年について読んでいこうと思います。 目次 【凡例】 治承五・養和元年(1181)<定家20歳・従五位上侍従> ・式子内親王との邂逅(正月3日、九月二十七日条) ・高倉院、崩御(正月十四・二十日、閏二月三日条) ・平清盛、薨ず(閏二月四・五日条) ・姉の死(閏二月六・十二・二十四日、三月九日条) 参考文献 【凡例】 ・本文、訓読、意訳、注釈とコメントの順で記した。 ・底本には冷泉家時雨亭文庫叢書『翻刻 明月記』(全三巻)を用い ...
佐渡の入江の順徳院 前編~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその2~
Field work on JUNTOKU Tenno[22,Oct,1197~7,Oct,1242(10,Sep,Kenkyu8~12,Sep,Ninji3):84nd emperor(reigning:1210~1221)and Retired Emperor]. He is a scholarship and the martial arts who resembles his father. However, he was condemned to SADO due to the ...
藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 その4(承元元年~承元2年)
後鳥羽院の姿を記録する主な公家日記2 (甚之助蔵 藤原家実『猪隈関白記』岩波書店、昭和62年第2刷) ・【運命の四の宮】藤原定家『明月記』にみる後鳥羽院の姿 序奏 ・その1 治承4年~建仁元年(第1巻) ・その2 建仁2年~元久元年(第1巻) ・その3 元久2年~建永元年(第1巻) ・その4 承元元年~承元2年(第2巻) ・その5 建暦元年~建暦2年(第2巻) ・その6 建保元年~建保6年(第2巻) ・その7 承久元年~嘉禎元年・その後(第2・3巻) 目次 ●藤 ...
後鳥羽院『遠島御百首』私見その2~夏 十五首~
・その1~春 二十首~ ・その2~夏 十五首~ ・その3~秋 二十首~ ・その4~冬 十五首~ ・その5~雑 三十首(上)~ ・その6~雑 三十首(下)~ 夏十五首 目次 二十一、けふとてや 二十二、ふるさとを 二十三、たをやめの 二十四、暮かゝる 二十五、あやめふく 二十六、いまはとて 二十七、五月雨に 二十八、さみだれに 二十九、難波江や 三十、あはれにも 三十一、ゆふだちの 三十二、夕すゞみ 三十三、したくゆる 三十四、くれたけの 三十五、見るか ...
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【私的愛用品】ツバメノート「KB4」考
目次 ・「KB4」のココに注目! ・「KB4」今昔物語 ・私的使用法 大分前に本家の方で書いた「私の文房具【私の本棚 余談】」でチラッと紹介した私愛用のノートについて、ここ10年来でいろいろ変わって変化があったのでそこを深堀りしてみようと思います。時代の流れというのか、発展でありまた淋しくもある変化の詳細です。 件のシリーズ「私の本棚」も、あれ以来書斎の模様替えなど相俟って、今では本棚に並ぶ背表紙も大分変わりました。昨今は専門とするインド哲学仏教学と、ここ数年かかずらわ ...
【妖怪博士の遺産】中野区立哲学堂公園を歩く!
Amazon 史上最強の哲学入門 Kindle版 2023年3月、3年前から世界を席巻した某ウイルスの流行も収まりをみせ、久々に(本格的な)上京しました。そのときブラっと『中野区立哲学堂公園』に立ち寄ったので、その時のレポートです。ひさびさの散歩記事。 さて、哲学堂公園への行き方は複数ありますが、今回は都営大江戸線落合南長崎駅から(その他のルートは記事末に記載します)。 A1出口から都道440号線・新青梅街道を西に向かって歩く。 途中、なんのご縁かこんな ...
【浪人時代の思い出】アリミツ君とマコちゃんのこと。
受験シーズンも終わりに近づき、高校・大学はじめ、いろんなところで合格発表の知らせを耳にする季節となった。 毎年この時期になると、必ず浪人していた頃のことを思い出す。 私は某大手予備校で一年間浪人生活を送り、その間は予備校付属の寮で生活していた。 花の都・TOKYOに出てきたはずが、そこはなぜか木々の緑豊かで動物の鳴き声響くところだった。 人生初の満員電車。 都心ド真ん中にある予備校校舎へ通う日々。 起きてる時は(当然)勉強漬けだったが、ときどき破目を外して寮の仲間たちと長時間語り合ってい ...
あがた森魚さんの映画を見に行くin小樽【佐藤敬子先生を探して】
目次 前説 映画『佐藤敬子先生を探して』 私にとっての「あがた森魚」という人 脚注 Amazon 愛は愛とて何になる ◎前説 8月上旬、私は農作業の傍らで北海道のローカルラジオ番組に耳を傾けていた。 その番組の一コーナーにとあるミュージシャンがゲスト出演していたのだが、なにやら熱心に口角泡を飛ばす勢いで必死に言葉を紡いでいる。件のコーナーでは、さまざまなミュージシャンのメッセージが流されたりゲスト出演した後で楽曲が放送されるのだが、その日に限ってはなかなか曲に移らない。最終的に楽曲 ...
歌人・鳥居さんに会ってきた~三浦綾子記念文学館講演会レポ~
6月13日、北海道旭川市在の三浦綾子記念文学館において、開館20周年を記念した特別講演会が開催された。 ゲストは"セーラー服の歌人"として注目されている歌人・鳥居氏だ。 キリンの子 鳥居歌集 2016年に本家・ネト見の方でも紹介した歌集『キリンの子』は現在までに累計2万部を売り上げている。また、彼女の壮絶な半生もまた注目されている理由のひとつに挙げられていると思うが、今回はそんな前提は一旦置いて、一読者として実際どのような人なのか気になっていたのでその講演会を聴きに行ってきましたというレポー ...
【文豪ご用達w】老舗旅館『鳳明館』に泊まってきたときの話し【文京区本郷】
※2019年年末に宿泊しました。 Amazon 「谷根千」地図で時間旅行 コロナウイルスの問題で自粛の風吹き荒れる昨今ですが、今年三月、東京文京区にある老舗旅館・鳳明館からこのようなプランが発表されてのをご記憶されているでしょうか? ●「先生、進んでますか?」進捗コールも完備。旅館「鳳明館」にて、大正・昭和の人気作家になった気分を味わえる「文豪缶詰プラン」 (かーずSP 2020年3月9日) 現在はテレワークにも対応したデイユースプラン「3密・心配ご無用 ...
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