【読書感想】坂口三千代『クラクラ日記』(ちくま文庫)
無頼派の小説家・坂口安吾の妻・三千代さんが書いたエッセイ『クラクラ日記』。前回、無頼派ゆかりのバー『ルパン』の記事を書いて思い出した。 表題の“クラクラ”は安吾の死後に三千代さんが開いたバーの店名で、フランス語で「野雀」や「垢だらけの~」という意味の“cracra”からきているそうな。命名は獅子文六氏によるらしい。 本書は安吾との出会いの場面からはじまる。 坂口安吾という作家について多少なりとも知る人ならばその破天荒なエピソードの数々は語るまでもないが、他によるまでもなく本書で十二分過ぎるほど ...
銀座の老舗バー『ルパン』で呑む
日本屈指の繁華街、東京・銀座。 和光の時計台は海外の旅行者からも人気のスポットですが、そこからほど近いところにあるのが老舗バー『ルパン』。 創業は昭和3(1928)年。開店時には当時近くにあった文藝春秋社の面々からの支援があり、以来文壇バーとして知られています。 注:本記事にはお酒にまつわる記述がありますが、飲酒を勧めるものではありません。 また、未成年の飲酒は法律で禁止されています。 成人であっても節度とマナーを守って過度な飲酒は控えましょう。 飲酒運転は絶対やめましょう。 猪 ...
【読書感想】薄田泣菫 完本『茶話』(上・中・下 冨山房百科文庫)
名だたる文豪を輩出した明治文壇にあって、浪漫派・象徴派の詩人として名を馳せた泣菫は、大正の幕開けと共に随筆の世界に飛び込んだ。 大阪毎日新聞社に在籍しながらその紙面において、「茶を飲みながら喋る気楽な世間話」をコンセプトに延べ811編のコラムを執筆した。それがこの『茶話』だ。 古今東西、市井の人々から著名人、果ては歴史上の人物に至るまで、さまざまな逸話・風説、奇行・奇癖、失敗談などを「あたかも見てきたよう」に簡潔でユーモアあふれる文章で綴ったこのコラム群は、著者の広範な知識量と的確な人物評、 ...
サンスクリット文法編1~連声法と絶対語末~
このブログでは本当はサンスクリットの文献講読みたいなことをやってみたいのですが、そのためにはやっぱりなんだかんだ簡易的にも文法に触れておく必要に駆られたので、入門程度にサンスクリットの文法に関する記事をこれから数回に分けて書いて行こうと思います。もちろん、適宜修整・追記は行う予定です。 何度もしつこいようですが、語学を自習するにしても、実績のある文法書にあたるのはもちろんですが、なるべくなら信頼できる先達から指導していただくのが最善です。また、サンスクリットに関してここでは、その足がかりという意味で簡 ...
【読書感想】セルバンデス『ドン・キホーテ』(岩波文庫)
セルバンテス『ドン・キホーテ』全6冊 (岩波文庫) 「人類史上最高の文学作品は?」と問われれば、私はこの作品を挙げる。 言わずと知れた名作中の名作。文学作品としてだけではなく、絵本や芝居など、およそ芸術作品と呼ばれる様々なジャンルで取り上げ続けられてきた作品だ。 とはいえ、正直なところ読んだ感想としては「ダルい……」の一言しかない。 この作品の翻訳など多数出てはいるが、果たしてそれらを読み通したという人はどのくらいいるだろうか? というのもこの作品自体そもそも長い。長いだけならまだしも、まず ...
【映画感想】鈴木清順『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』『夢二』【浪漫三部作】
昨年2月に大往生した日本映画界の鬼才・鈴木清順。 氏の名前を世界にとどろかせたのがこのいわゆる『(大正)浪漫三部作』だ。 『ツィゴイネルワイゼン』 1980年。原作・内田百閒 出演・原田芳雄、大谷直子、藤田敏八ほか 『陽炎座』 1981年。原作・泉鏡花 出演・松田優作、大楠道代、中村嘉葎雄ほか 『夢二』 1991年。出演・沢田研二、毬谷友子、坂東玉三郎(5代目)ほか 主演級の役者の段階で錚々たる面々であることはお分かりいただけるだろうか? 私自身、「好きな映画は?」と問われ ...
歌人・鳥居さんに会ってきた~三浦綾子記念文学館講演会レポ~
6月13日、北海道旭川市在の三浦綾子記念文学館において、開館20周年を記念した特別講演会が開催された。 ゲストは"セーラー服の歌人"として注目されている歌人・鳥居氏だ。 キリンの子 鳥居歌集 2016年に本家・ネト見の方でも紹介した歌集『キリンの子』は現在までに累計2万部を売り上げている。また、彼女の壮絶な半生もまた注目されている理由のひとつに挙げられていると思うが、今回はそんな前提は一旦置いて、一読者として実際どのような人なのか気になっていたのでその講演会を聴きに行ってきましたというレポー ...
【読書感想】エリック・ホッファー『波止場日記』(みすず書房)
浪人時代、新宿の紀伊国屋でたまたま見かけたのがきっかけだった。表紙には、作業現場と思しきその場所にはおよそに似つかわしくない雰囲気をたたえた初老の男性が、荷車に腰掛け読書している写真があった。「沖仲仕の哲学者」ことエリック・ホッファーその人だ。 この本は彼が沖仲仕として働いていた頃のある1年間の日記である。 仕事現場での作業の内容、友人家族との団欒、歯医者のこと……何気ない彼の日常がつづられたごくごく普通の日記なのだが、ところどころで思索と考察が織り込まれている。その冷徹なアフォリズムには驚嘆の ...
サンスクリット事始め その3~デーヴァナーガリー文字に触れる~
今回はサンスクリット語学習の上では欠かせないデーヴァナーガリー文字について少々書いていこうと思います。 サンスクリット語のテキストは、通常論文や専門書に掲載される際にはローマ字表記(ローマナイズ)されていますが、実際の文献はほぼデーヴァナーガリーで書かれていますし、前回紹介した辞書などを引く際には読めないことにはどうしようもないという事態も生じるので、読めたことにこしたことはありません。 まずデーヴァナーガリーそのものですが、 こんな文字ですね。ちなみに甚之助(※通常ローマ字表記ではjinno ...





