サンスクリット文法編3~曲用Ⅱ 代名詞・数詞~

  

サンスクリット文法編~曲用 目次~

    曲用Ⅰ 名詞・形容詞・比較法
     総説
     名詞・形容詞の格変化
      ・1、母音語幹
      ・2、子音語幹
      ・3、比較法

    曲用Ⅱ 代名詞・数詞
     4、代名詞
      ・a、人称・敬称代名詞
      ・b、指示代名詞
      ・c、関係代名詞
      ・d、疑問代名詞
      ・e、その他の代名詞
       ・不定代名詞
       ・所有代名詞
       ・再帰代名詞
       ・相互代名詞
      ・f、代名詞的形容詞
     5、数詞




4、代名詞

 代名詞には多くの種類があるが、その変化は大きく分けて同一変化表中のいくつかの語基が使用されるもの(人称・指示代名詞)と、特有の格語尾が用いられるもの(指示・関係・疑問代名詞)とがある。

●代名詞の基本的格語尾

a、人称・敬称代名詞

 人称代名詞では一人称と二人称が独自の形をもち、性の区別はなく呼格(V)を欠く。また数によって語基が異なる。
 三人称には指示代名詞が代用される。
 敬称代名詞にはbhavat-(f.bhavatī-)が用いられる。

sg du pl
一人称 mad- āva- asmad-
二人称 tvad– yuva- yuṣmad–



・一人称

sg du pl
N aham āvām vayam
Ac mām(mā) āvām(nau) asmān(naḥ)
Ins mayā āvābhyām asmābhiḥ
D mahyam(me) āvābhyām(nau) asmabhyam(naḥ)
Ab mat āvābhyām asmat
G mama(me) āvayoḥ(nau) asmākam(naḥ)
L mayi āvayoḥ asmāsu



・二人称

sg du pl
N tvam yuvām yūyam
Ac tvām(tvā) yuvām(vām) yuṣmān(vaḥ)
Ins tvayā yuvābhyām yuṣmābhiḥ
D tubhyam(te) yuvābhyām(vām) yuṣmabhyam(vaḥ)
Ab tvat yuvābhyām yuṣmat
G tava(te) yuvayoḥ(vām) yuṣmākam(vaḥ)
L tvayi yuvayoḥ yuṣmāsu


b、指示代名詞

 指示代名詞にはtad-,etad-,idam-,adas-,enad-があり、厳密に区別されているわけではないが、etad-,adas-は話者からみて空間・時間的に遠くにあるものを指し、etad-,idam-は話者に近いものを指す。特にetad-は目前に存在するものに対して用いられる。

・tad-“それ、その”

sg m f
N sas
Ac tam tām
Ins tena tayā
D tasmai tasyai
Ab tasmāt tasyās
G tasya tasyās
L tasmin tasyām

n.に関しては、N,Acがtatとなる以外、m.と同じ。

du m
N tau
Ac tau
Ins tābhyām
D tābhyām
Ab tābhyām
G tayos
L tayos

n,f.に関しては、N,Acがteとなる以外、m.と同じ。

pl m f
N te tās
Ac tān tās
Ins tais tābhis
D tebhyas tābhyas
Ab tebhyas tābhyas
G teṣām tāsām
L teṣu tāsu

n.に関しては、N,Acがtāniとなる以外、m.と同じ。




・etad-“これ、この”

sg m n f
N eṣas etad eṣā
Ac etam(tvā) etad etām
du m n f
N etau ete ete
Ac etau(tvā) ete ete
pl m n f
N ete etāni etās
Ac etān etāni etās

これ以外の変化はtad-に従う。




・idam-“これ、この”

sg m f
N ayam iyam
Ac imam imām
Ins anena anayā
D asmai asyai
Ab asmāt asyās
G asya asyās
L asmin asyām

n.に関しては、N,Acがidamとなる以外、m.と同じ。

du m
N imau
Ac imau
Ins ābhyām
D ābhyām
Ab ābhyām
G anayos
L anayos

n,f.に関しては、N,Acがimeとなる以外、m.と同じ。

pl m f
N ime imās
Ac imān imās
Ins ebhis ābhis
D ebhyas ābhyas
Ab ebhyas ābhyas
G eṣām āsām
L eṣu āsu

n.に関しては、N,Acがimāniとなる以外、m.と同じ。




・adas-“それ、その、あの”

sg m f
N asau imās
Ac amum amūm
Ins amunā amuyā
D amuṣmai amuṣyai
Ab amuṣmāt amuṣyās
G amuṣya amuṣyās
L amuṣmin amuṣyām

n.に関しては、N,Acがadasとなる以外、m.と同じ。

du m,n,f
N amū
Ac amū
Ins amūbhyām
D amūbhyām
Ab amūbhyām
G amuyos
L amuyos


pl m f
N amī amūs
Ac amūn amūs
Ins amībhis amubhis
D amībhyas amūbhyas
Ab amībhyas amūbhyas
G amīṣām amūṣām
L amīṣu amūṣu

n.に関しては、N,Acがamūniとなる以外、m.と同じ。


・enad-“彼、彼女、それ”
 enad-は完全な変化を行わず、以下の格だけが用いられる。

m n f
sg Ac enam enat enām
Ins enena(tvā) enena enayā
du Ac enau ene ene
G,L enayos enayos enayos
pl Ac enān enāni enās




c、関係代名詞

 関係代名詞(rel.pron.)yad-はtad-のように変化する。
 また、接続詞の機能も兼ね備えた代名詞で、関係代名詞自身が導く文を主文に結びつける働きをする。
 このほか関係形容詞・関係副詞を含めて関係詞と呼ばれ、主文では、従属文を導く関係詞に対応した指示代名詞・指示形容詞・指示副詞が用いられることがあり、これを相関詞を呼称される。



d、疑問代名詞

 疑問代名詞kim-,katara-,katama-はn.sg.N,ACにおいてそれぞれkim,katarat,katamatとなる以外、tad-のように変化をする。
 また、katara-は“二者の中の”、katama-は“三者以上の多数の中の”誰か・どれかを示すが厳密には区別されない。そしてこの二語はkim-の語基ka-に形容詞比較級・最上級をあらわす-tara,-tamaが加えられた形である。



e、その他の代名詞

・不定代名詞
 疑問代名詞kim-+不変化辞(ind.) cit,cana,api“誰か、ある人、何か”は、疑問代名詞kim-だけを格変化させ、それにcit,cana,apiを加えるがその際には連声規則が適応される。
  eg,m.sg.Nならkaścit,kaścana,ko’piとなる。


・所有代名詞
 代名詞や自他をあらわす語+īya(f.īya),ka(f.kā,kī),kīna(f.kīnā)“誰々の、誰々のもの”


・再帰代名詞
 ・ātman- m. ātman-の格変化に従い、m.sg.の形がそのままn.f.およびsg.du.pl.に用いられる。
 ・sva- “(私・あなた・その人)自身の” 代名詞的形容詞pūrva-型の格変化に従う。
 ・svaya “自ずから”副詞(adv.)としてすべての人称に用いられる。
 ・nija- “自身の”形容詞(adj.)としてsav-などと同様に用いられる。 

 

f、代名詞的形容詞

 形容詞の中には全般的にあるいは一部で代名詞に特有の格語尾をとるものがある。
 意味や形態からそれぞれanya-型、sarva-型、pūrva-型、nema-型に大別されるほか、prathama-型、dvitīya-型にも分けられる。

・anya-型
 全般的に関係代名詞yad-の変化に従い、比較の接尾辞tara-,tama-を伴い“(二つの中の)どれか”“(多数の中の)どれか”をあらわす。

m f
sg N anyas anyā
Ac anyam anyām
Ins anyena anyayā
D anyasmai anyasyai
Ab anyasmāt anyasyās
G tasya anyasyās
L anyasmin anyasyām
pl N anye anyās

n.はsg.N,AC.でanyat、pl.N.でanyāniとなる以外はm.に従う。

・sarva-型
 n.sg.N,Ac.を除いてyad-,anya-を同じ格変化をする。
 sarva-、viśva-、sama-、sima-“すべての”、ubha-“両方の”、ekatara-“(二者の内の)一つ”など。

・pūrva-型
 m,n.sg.Ab,L、m.pl.Nにおいて任意のa語幹の名詞の格語尾をとる以外はanya-型と同じ変化をする。
 時間、空間、人などで位置関係を示す場合に用いられる。

・nema-型
 nema- adj.“半分の”m.pl.Nにおいてnemāḥをとる以外sarva-型と同じ変化をする。

・prathama-型
 序列・分量に関する形容詞に用いられ、a語幹(f.ā語幹)の形容詞格変化に従うが、m.pl.Nにおいて任意でsarva-型の格変化が許される。

・dvitīya-型
 序数を示し、sg.D,Ab,Lにおいて任意でsarva-型の格変化が許される。





5、数詞

◎基数詞
 1eka-
 2dvi-
 3tri-
 4catur-
 5pañcan-
 6ṣaṣ-
 7saptan-
 8aṣṭan-
 9navan-
 10daśan-

 11ekādaśan-
 12dvādaśan-
 13trayodaśan-
 14caturdaśan-
 15pañcaśdaśan-
 16ṣaḍaśan-
 17saptadaśan-
 18aṣṭādaśan-
 19navadaśan- / ūnaviṃśati-(f.)
 20viṃśati-

・基本的な規則
 二桁の基数詞は1eka-+10daśan-=11ekādaśan-として複合してつくる。
 また19などは20viṃśati--1eka-と考えてūna-“より少ない”を用い、eka-ūna-viṃśati- → ekonaviṃśati-もしくはeka-を省略しūnaviṃśati-ともなる。
 1ekaは10daśaに加わる時にはekāとなる。また2dvi-、3tri-、8aṣṭan-は10daśan-、20viṃśati-、30triṃśat-と加わる時にはdvā-、trayas-、aṣṭā-となり、80aśīti-に加えられる時にはdvi-、tri-、aṣṭa-となる。
 など…… 

・100以上の基数詞
 100 śata- n.
 1,000 sahasra-、daśaśata-など
 10,000 ayuta-など
 100,000 lakṣa-など
 1,000,000 prayuta-
 10,000,000 koṭi-

 これ以降の大きな数を表す語については諸説あり一定しない。
  cf,Monier-Williams,A Practical Grammer of the Sanskrit Language




◎基数詞の格変化
・1eka
 sg,plで代名詞的形容詞sarva-型の格変化をする。
 pl.において用いられる場合は“若干の、いくつかの”の意味をあらわす。

・2dvi-
 m,n,f.Du.においてのみ変化する。

m n,f
N,Ac,V dvau dve
Ins,D,Ab dvābhyām dvābhyām
G,L dvayos dvayos



・3tri-以降の数
 3tri-から19navadaśan-の数はplにおいてのみ格変化する。11ekādaśan-以降は10daśan-の変化に従う。
 また5pañcan-以降の数は性に関係なく変化する。
eg,5pañcan-

m,n,f
N,Ac,V pañca
Ins pañcabhis
D,Ab pañcabhyas
G pañcānām
L pañcasu



・20viṃśati-から99navanavati-までの数
 f.として扱われ、通常sg.の変化をする。

・100śata-以降の数
 a語幹名詞の格変化をし、n.として通常sg.の変化をする。
 また10,000,000koṭi-はi語幹のf.sg.の格変化をし、100,000,000arbuda-以上はa語幹(m,n)i語幹(f)の名詞の格変化に従う。




◎序数詞
 prathma-(f.rathamā-)“第一の”を除き、基数詞を基に構成される。
 また20viṃśati-以降では-tamaを加えても序数詞をつくることができる。
 格変化は基本的にa語幹(f.ā語幹)に従うが、prathama-(f.pratamā-)“第一の”、dvitīya-(f.dvitīyā-)“第二の”、tṛtīya-(f.tṛtīyā-)“第三の”のsg.D,Ab,L。においては任意でsarva-型の格変化をする。




◎分数・倍数、数詞的副詞、数詞派生語
・分数・倍数
 序数詞をそのまま用いるか、bhāga- m.、aṃśa- m.などを加えても用いられる。
 特にardha-“半分(2分の1)”、pāda-“四等分(4分の1)”などがある。
 倍数の場合、guṇa- adj.を加える。 eg,dviguṇa-“2倍の”

・数詞的副詞
 ・回数
  sakṛt“一回”、dviḥ“二回”、triḥ“三回”、catuḥ“四回”となる。
  pañcakṛtvaḥ“五回”以降はkṛtvaḥを加えて作られる。
 ・様態
  dhāを加えて作られる。 eg,ekadhā“一様に”
 ・配分
  śhaを加えて作られる。 eg,triśha“三つずつ”

・数詞派生語
 ・形容詞
  基数詞+-taya/-aya(f.-tayī/-ayī)“~の部分からなる、~重・倍の”
  基数詞・序数詞+-ka(-ika)“~(の金額)で買われた”
 ・名詞
  基数詞+-taya/-aya n.(f.-tayī/-ayī)“~の一組”




≪曲用編 終わり≫



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