jinnosuke

『ねと見!』の管理人です。
昭和の終わりの方に北海道で生まれる。 専攻は哲学(インド哲学・仏教学)。 趣味は読書と散歩。愛読書は辞書。

キーワード
インド哲学仏教学/後鳥羽院と定家さん

お仕事のご依頼は、下記「お問い合わせ」からお願いします。

感想・レビュー

2026/10/30

【読書感想】河合太郎『ヤバい日本の住所』

  ヤバい日本の住所 河合太郎 出版社:幻冬舎(幻冬舎新書805) 発売日:2026/07/29    ヤバい日本の住所 Kindle版 規則と不規則の狭間  Apple社『Maps』に携わっている著者が日本の住所表記の複雑さを開陳した本書は、一読すればそのタイトルの「ヤバい」の意味がよく分かる。  明確な定義もない上、地方自治体にその判断が委ねられているがために、地域の事情が色濃く反映されてしまった現在の日本の住所表記。混沌としているがゆえにシステム化する上で非常な困難がつきまとってしまう現状。膨大な住 ...

感想・レビュー

2026/10/25

【読書感想】達城久裕『サイバー攻撃 その瞬間 社長の決定』

  サイバー攻撃 その瞬間 社長の決定 達城久裕 出版社:関通サイバー攻撃対策室 発売日:2025/06/20    サイバー攻撃 その瞬間 社長の決定 Kindle版   そのときまでにどう動くか?そしてそのときにどう動くか?  連日のようにサイバー攻撃やランサムウェアによる騒ぎが報じられ、膨大な数の企業名がそこに軒を連ねている。  本書は、2024年9月に実際にサイバー攻撃を受けた企業の社長自らが綴った実録だ。  サイバー攻撃を受けたその瞬間、そこからの一連の対応と対策、徐々に明るみになる被害状況と新 ...

感想・レビュー

2026/9/29

【読書感想】エドワード・ドルニック『恐竜発見: 巨大な骨の化石の謎に挑んだ人々の物語』

  恐竜発見: 巨大な骨の化石の謎に挑んだ人々の物語 エドワード・ドルニック 著/杉田七重 訳 出版社:東京創元社 発売日:2026/07/30 科学と宗教を分けた神殺し  ヴィクトリア朝のイギリスにおいて、「恐竜」という概念がいかに生まれ受容されていったかをたどるサイエンスノンフィクション。  聖書が史実だと疑いなく信じられていた時代、科学と宗教は等号で結ばれていた。だが神が創造したはずの自然を観察するようになって、そこには神以前の歴史が漠然と浮かび上がってきた。  貧しい女性化石ハンターのエピソードを ...

感想・レビュー

2026/9/26

【読書感想】粥川すず『大正學生愛妻家』

  大正學生愛妻家 粥川すず 出版社:講談社(モーニングKC) 発売日:2024/11/21 結婚からはじまる恋愛模様  苦労人ながら健気で素直な女中と資産家の御曹司との大正ロマンラブストーリー。タイトル通り二人は夫婦である。夫婦だが、「ねえや」と「坊ちゃん」の関係性からなかなか抜け出せない。そんな二人の新婚生活を描いた本作は、大きな波風が立つわけでもなく、更に陰湿な脇役やヒールが登場するわけでもない淡々とした物語だが、どこか心暖まるステキな作品だ。  大きな波風が立つわけではないと書いたが、それでも生活 ...

感想・レビュー

2026/8/30

【読書感想】網野義彦『古文書返却の旅 改版 戦後史学史の一齣』

  古文書返却の旅 改版 戦後史学史の一齣 網野義彦 出版社:中央公論新社(中公新書1503) 発売日:2026/05/22 戦後史学の一隅  戦後すぐの時期、中近世以降の漁村に関する古文書を集めた史料館をつくるという一大事業のために、全国から膨大な古文書が集められた。しかしこの計画は早々に頓挫し、「一年」あるいはそれに近い短期間の約束で借用された大量の古文書が返却されないまま段ボールの中に放置された。  それらが陽の目を見たのは実に30年以上後のことで、本書は著者を含めた当時蒐集に奔走したメンバーのほか ...

感想・レビュー

2026/8/24

【読書感想】田中慎弥『孤独に生きよ 逃げるが勝ちの思考 増補改訂版・孤独論』

  孤独に生きよ 逃げるが勝ちの思考 増補改訂版・孤独論 田中慎弥 出版社:徳間書店 発売日:2025/05/31 自分の人生を取り戻すために  15年に及ぶ引きこもり生活の末、芥川賞作家として脚光を浴びた著者が語る人生論。タイトルにもある「逃げるが勝ち」のとおり、逃げてもいい、独りでもいい、なんとかなる、といった月並みな言葉が本書の中には並ぶ。しかし引きこもってたが故の屈折した価値観を押し付けてくるのかというと決してそうではなく、むしろ至極真っ当な視点から生き方を問い直すよう語り掛けてくれる。  生きづ ...

感想・レビュー

2026/7/26

【読書感想】山野辺太郎『いつか深い穴に落ちるまで』

 Amazon  いつか深い穴に落ちるまで 山野辺太郎 出版社:KADOKAWA(角川文庫) 発売日:2024/12/24 自分が存在している意義とは?  戦後すぐに立ち上がったひとつの国家的プロジェクト。「日本からブラジルへ通じる穴を掘る」という壮大にしてなんとも荒唐無稽な大事業に余曲折あって関わることとなった主人公。巨大プロジェクトだからこそ、そこにかけられた歳月の長さと関わる団体個人の多岐は想像を絶するものがあるが、主人公もまたその中の一つのコマとして冷静に事業の進捗を見つめる。第55回文藝賞受賞作 ...

感想・レビュー

2026/7/25

【読書感想】サラ・オーグルヴィ『世界最高の辞典を作った名もなき人びと』

  世界最高の辞典を作った名もなき人びと サラ・オーグルヴィ 著 / 塩原通緒 訳 出版社:早川書房 発売日:2025/09/18 普通ではないことを成した普通の人々の普通ではない人生  これまでもOED(オックスフォード英語辞典)に関する書籍をいくつか扱ってきたが、その中でも本書は、スリップ(用例を書き留めたカード)を編集部に送り続けた市井の支援者たちにフォーカスを当てた特異にしてOEDの核心に迫る力作だ。  初版編纂の立役者であるジェームズ・マレー(本書ではジェイムズ・マリーと訳)が残した住所録に記さ ...

感想・レビュー

2026/6/30

【読書感想】千田稔『カラー版 古代飛鳥を歩く』

  カラー版 古代飛鳥を歩く 千田稔 出版社:中央公論新社(中公新書2371) 発売日:2016/04/19 日本王朝黎明期を歩く  今月、世界遺産登録勧告を受け、登録がほぼ確実となった奈良県の飛鳥および藤原宮都。その一報を受けて再読した本書だが、件の地に生まれ育った著者が贈る大人のための飛鳥旅行ハンドブックである。  王朝黎明期、飛鳥という限られた空間の中でさまざまにめぐらされた政治ドラマを、人物と遺跡を鍵に追体験する。ページを繰れば、『古事記』『日本書紀』といった神話の世界と現世のかの土地が時を超えて ...