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【読書感想】『コヤッキースタジオ都市伝説 Lie or True あなたは信じる?』

 
 コヤッキースタジオ都市伝説 Lie or True あなたは信じる?
 コヤッキースタジオ

 出版社:KADOKAWA
 発売日:2023/03/02

都市伝説という名の人生の切り口

 「都市伝説」といってまず思い浮かぶのは、年に数回放映される某テレビ番組だろう。世間一般に「都市伝説」というワードを定着させた功績は大きいが、一方で無暗に不安や恐怖を煽ったり胡散臭い情報の流布といったデメリットの部分も否定できない。そもそも「信じるか信じないかはあなた次第」という名文句よろしく、その情報をどう解釈し受け入れるかは視聴者であるわれわれに委ねられている。
 
 さてそんな都市伝説をあつかった本書は、ワンピース考察および都市伝説系Youtuberとして活躍中の「コヤッキースタジオ(通称・コヤスタ)」の初書籍だ。中の人であるコヤッキーさんととーやさんによる場外乱闘ともいうべき本書の実際はというと、これまで動画で取り上げてきた話題のダイジェスト版という感じなので、動画を視聴している人にとってあまり真新しいものはない。
 また取り上げられている話題のそれぞれに、客観的あるいは明確な根拠となるものも乏しく、結果的に言葉尻も曖昧な表現になりがちだ。この点については扱っているものがものだけに、致し方のない部分もあるだろう。
 更にところどころでお二人(特にとーやさん)の趣味趣向に話題が逸れることも多く、総じて真っ向から「都市伝説」を大真面目に扱い考察しているというよりも、どちらかというとコヤスタのファンブックといった色が強いように感じた。
 
 だがそれで終わらせないのがコヤスタである。
 実際、メインテーマの都市伝説をそもそも"エンタメ"という観点から語っているので、本気の議論するというよりも、むしろ「こういう話しがある」「こういう意見もある」と、一つの問題に対して様々な切り口を見せてくれている。だから「信じるか信じないか」よりも、読者に「こういう考え方もある」という想像の余地を提示してくれているのだ。そこにはロマンさえ感じられるような余韻があり、動画で垣間見えるお二人のトーク力と相俟ってさすがとしか言いようがない。
 真骨頂なのは、「都市伝説」という観点から紡ぎ出す生き方への問いである。お二人ともに豊富な人生経験を持っているようだが、そこからにじみ出た核心的な人生論は、今の世の中だからこそとても有益で大切なもののように思う。本書最終盤の「【特別編】都市伝説は語るものであり、自分でつくるもの」の章に至ってひと際アツく語られていて、ここを読むだけでも非常に価値がある一冊といえる。
 都市伝説を通して人生を語るというこの本の趣旨は、実に稀有である。そこに見えてくる人生は、もしかしたらパラレルワールドのそれなのかもしれない。

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