
正倉院のしごと-宝物を守り伝える舞台裏
西川明彦
出版社:中央公論新社(中公新書2744)
発売日:2023/03/22
過去と未来を引き継ぐ仕事
毎年秋に奈良国立博物館で開催される正倉院展は、例年その時期が近づくと異様なほどの耳目を集める。一体なにがそれほどまでに人の心を惹きつけるのか? もちろん「正倉院」という言葉自体、ほぼ全ての日本人が学校の教科書で必ず目にするものだし、そこに納められている宝物が悠久のシルクロードのロマンと結びつけられて記憶されていることもあるだろう。だが、本当の魅力は、1300年も前の宝物が今なおその姿を留め保存・管理されているという事実にあるのではないだろうか。
本書は、件の正倉院を管理する宮内庁正倉院事務所に長年勤務した著者による正倉院のバックヤードツアーとも言うべき一冊。とはいえタイトルのとおり、宝物の来歴や価値が云々という話しではなく、その保存や修理・修繕に関する技術あるいは事務的な課程や手法の披瀝がメインだ。古代の技術と現代の技術がどこでどう帳尻合わさるものか、専門外の人間でもその手法の巧みさに圧倒される。
また前述の正倉院展が開催されるにいたる舞台裏など、「宝物」がどれほどまでに厳重かつ丁重に扱われているかがよく分かる。長年、正倉院の仕事に携わってきた人物だからこそ語れる貴重な証言だ。