jinnosuke

『ねと見!』の管理人です。
昭和の終わりの方に北海道で生まれる。 専攻は哲学(インド哲学・仏教学)。 趣味は読書と散歩。愛読書は辞書。

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インド哲学仏教学/後鳥羽院と定家さん

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感想・レビュー

2020/12/19

【読書感想】住吉雅美『あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン』

  あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン 住吉雅美 出版社:講談社(講談社現代新書) 発売日:2020/05/20  人間社会の常識を徹底的に批判した末に見えてくる法律のあり方とは?  "哲学"というだけでどこか小難しい印象を受ける人は多い。  さらにそこへ"法"律が関わってくるとどうだろうか?    法哲学とは、法律に対して哲学的思考を向ける、つまり法律を成立させ存在させているものは何かを問う学問だ。  本書では古今東西のさまざまな哲学者の論を参照しながら、法哲学の基礎的な議論が紹介されている。 ...

後鳥羽院project

2022/9/20

崇徳院と土御門院を巡る四国~後鳥羽院をめぐるフィールドワークその4 最終回~

 保元の乱の首謀者として讃岐に流された崇徳院。そしてその曾姪孫(甥の孫)にあたり、承久の乱で流された父・後鳥羽院、弟・順徳院の身の上を憂い、自ら懇願し阿波に流された土御門院。この二人を追ったレポート。  Field work on SUTOKU Tenno & TSUCHIMIKADO Tenno.  SUTOKU Tenno[1,Jul,1119~14,Sep,1164(28,May,Genei2~26,Aug,Chokan2):75nd emperor(reigning:1123~1142)and R ...

感想・レビュー

2020/12/9

【読書感想】ピーター・ゴドフリー=スミス『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』

  タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 ピーター・ゴドフリー=スミス 著 / 夏目大 訳 出版社:みすず書房 発売日:2018/11/16  心はどこから生まれどう進化してきたのか?  哲学者にして熟練ダイバーである著者が、タコやイカといった頭足類動物を通して意識や心に思考を巡らせた本書。  生命の始原にまで遡って意識の発生を考察しているなかなかの力作。  タコは脳と8本ある足とで別々の中枢神経系を持つ。高コストな神経系でありながら、その生涯はおよそ2年と短い。  そうした運命下にありながら、小 ...

感想・レビュー

2020/12/6

【読書感想】たもさん『カルト宗教信じてました。』『カルト宗教やめました。』

  カルト宗教信じてました。 たもさん 出版社:彩図社 発売日:2017/04/27     カルト宗教やめました。~「エホバの証人2世」の私が信仰を捨てた後の物語~ 出版社:彩図社 発売日:2020/01/28    自分の人生の主役は誰なのか? 信じきることの虚しさと信じられることの大切さ    一応はじめに断っておくが、本稿および本稿で取り上げるものは特定の個人や団体、信仰を否定するものではない。  さて、本書に登場する某宗教については以前にも元信者という方が書いたものを紹介しているが、本書は似た経 ...

天体観測

2020/11/26

天体写真を撮りたいの!~アンドロメダ銀河を狙え!編~

   さて前回、あまりにも天体写真を撮りた過ぎて天体写真を撮りたいの!~機材導入&木星・土星撮影編~とほぼ勢いで木星・土星を狙ってみましたが、その後いろいろ幼少時のことをば思い出してみると……    「アンドロメダ銀河って、カッコイイよな~」    などと思っていたことに行き当たりました。        アンドロメダ銀河……。  我々の住む天の川銀河のすぐお隣にある言わば"ご近所さん"。近場故にその姿は捉えやすく、数多の天文ファンが数知れず撮影してきた天体のひとつでもある。  わたしの住むような片田舎の山 ...

感想・レビュー

2020/11/25

【読書感想】植木雅俊『サンスクリット版縮訳 法華経 現代語訳』

  サンスクリット版縮訳 法華経 現代語訳 植木雅俊 出版社:KADOKAWA(角川ソフィア文庫) 発売日:2018/07/24  壮大にして荘厳な大乗仏教の世界。そこに描かれているものとは?  日本でも天台宗や日蓮宗などで日々読誦される『法華経』。正式には『妙法蓮華経』と呼ばれるもので、代表的な大乗仏教経典のひとつである。  本書はその『法華経』のサンスクリット原典を現代語訳し、更に仏教経典に散見する重複部分を省いた縮約版。  著訳者である植木雅俊博士は理系出身の仏教学者で、ジャーナリストや作家としての ...

感想・レビュー

2020/11/25

【読書感想】日経コンピュータほか『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」』

  みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史 史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」 日経コンピュータ,山端宏実,岡部一詩,中田敦,大和田尚孝,谷島宣之 出版社:日経BP 発売日:2020/02/14    日本のIT業界における歴史的大プロジェクト。そこから見える組織論とシステム論。    1999年、旧第一勧業銀行・旧富士銀行・旧日本興業銀行の三行が経営統合を発表し、2002年の新銀行設立を目指した。  しかしその当初からさまざまなシステムトラブルに見舞われ、2011年の東日本大震災後の大規模なシス ...

感想・レビュー

2020/11/24

【読書感想】アン・ドル―ヤン『COSMOS いくつもの世界』

  COSMOS コスモス いくつもの世界 アン・ドルーヤン 著 / 藤井留美 訳 出版社:日経ナショナルジオグラフィック社 発売日:2020/05/15  人類がこれまで歩んできた歴史から見える未来の形  1980年、世界中でベストセラーとなったカール・セーガン著『COSMOS』。  あれから40年の時を経て、氏の愛妻が続編として記したのが本書である。  正編と呼ぶべきカール・セーガンの『COSMOS』は、科学の力によって人類の未来、あるいは見果てぬ宇宙の深淵に迫ろうとする意欲作であった一方で、本書はど ...

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2020/11/20

【読書感想】岡本隆司『「中国」の形成 現代への展望』

  「中国」の形成 現代への展望 岡本隆司 出版社:岩波書店(岩波新書) 発売日:2020/07/18   超大国・中国が目指している未来、その背景にある歴史とは?  岩波新書『シリーズ 中国の歴史』の5巻目である本書は、「多元性と統一」というテーマのもと清代から現代中国までの変遷を辿る。  中央集権的な政治体制を維持した明朝から、因習而治による各地域での自治の安定を目指す体制へシフトした清朝。少数派であった満州族がいかに多数派の漢民族を統治したか、またそれがどれほど危ういバランスの上で成立していたかが詳 ...