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【読書感想】内海聡『心の絶対法則 なぜ「思考」が病気をつくり出すのか?』

 
 心の絶対法則 なぜ「思考」が病気をつくり出すのか?
 内海聡

 出版社:ユサブル
 発売日:2020/11/19

あなたは被害者か? それとも加害者か? 人は見たいものしか見ない

 「医療界の世界一の嫌われ者」「キチ○イ医」と自称する著者。
 内科医である一方、これまでもさまざまな著作やメディアで過激な発言を繰り返してきていることを知る人も多いだろう。本書でもまたかなりセンセーショナルな内容が論じられている。
 だが、極論めいた主張であるからこそ部分的にはかなり核心をついている点もある。そしてそれは、これまでの常識を改めて見直すきっかけを与えてくれる、そんな鋭い意見だ。
 
 著者のいう「間違った考え」方、その第一は「自分を直視できない自分に人は気づきたくない」ことだと指摘されている。更にはその現実をも認めようとしない。このことに気づくことが全ての第一歩だというのである。己の醜さと向き合えないことこそが人類の問題点、と。
 そして「自分を直視できない」人の中でも多数派かつもっとも厄介なのは、正義や倫理を押し付け、それをかさに他人に何かを強制しようとする人々の存在だとも指摘している。それはまた、行き過ぎた支配欲の成れの果ての姿だと語っている。
 そうした状況下で、支配される側の人間にとって、「被害者意識」こそが自分の立場を守るための根源的意識となってしまっている。
 しかし被害者意識と現実直視の精神は真逆のものだ。結果、「被害者意識」が強まれば強まるほど、現実を直視できなくなる負のループへ陥ることとなる。

 そこで著者は「すべての人間が語る言葉は嘘」という法則を提示する。単純にして否定しがたいことだが、このことを理解できている人はどれほどいるだろうか?
 なにより、他人の語る言葉が信じられないのなら、何を信じればいいのだろうか?
 それはつまり「行動」だけだ。
 自分たちこそがこの社会を作っている一員であり、すべての原因は自分たちにあることを受け入れる、まずこの行動に出るしかない。
 「自業自得」の言葉然り、すべては己の行動によってもたらされた「自因自果」の結果でしかない。……

 繰り返しになるが、私自身、本書に対してかなりバイアスがかかった状態で読んだため、本書の主張の全てを受け入れることはできない。これまでの著者の言動も相俟って、読者を選ぶことはもとより本書内容に賛否の声が出ることも否めない。
 しかしその本質部分、核となるべき主張の根源にあるものは、実に真っ当で筋の通ったものだ。著者の信念という以上に、この世の真理の一端といっても過言ではないと思う。

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