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【読書感想】サラ・オーグルヴィ『世界最高の辞典を作った名もなき人びと』

 
 世界最高の辞典を作った名もなき人びと
 サラ・オーグルヴィ 著 / 塩原通緒 訳
 出版社:早川書房
 発売日:2025/09/18

普通ではないことを成した普通の人々の普通ではない人生

 これまでもOED(オックスフォード英語辞典)に関する書籍をいくつか扱ってきたが、その中でも本書は、スリップ(用例を書き留めたカード)を編集部に送り続けた市井の支援者たちにフォーカスを当てた特異にしてOEDの核心に迫る力作だ。
 初版編纂の立役者であるジェームズ・マレー(本書ではジェイムズ・マリーと訳)が残した住所録に記された協力者たちは延べ3000人にのぼる。著者はその一人ひとりの生涯を可能な限り調べ上げた。そこで驚くのは、意外にも作家や学者は少なく、アウトサイダーにエスぺランティスト、詐欺師にポンコツ、ポルノマニアに食人者、探検家……とその経歴や職業は挙げればきりがないことだ。また犯罪者、特に殺人を犯した人物が例のマイナー博士以外にも数名いる。さらには多くの教養ある女性が参加していた。当時の時代背景を考えても、その後の女性の社会進出に向けた機運の熟成を見るようだ。
 こうしたさまざまな事情をもった数多の協力者たちだが、はたしてOED編纂にどうして協力することとなったか、またその関りの深さや歳月も同様にそれぞれである。当たり前のことかもしれないが、しかしそこに人生の営みの数奇さを感じざるを得ない。
 また同時に、インターネットなどなかった時代において、アナログな手法によるクラウドソーシングが世界を股にかけて行われていたこと自体がほとんど奇跡的であり、OED編纂という偉業の崇高さを改めて感じた。
 

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