
カラー版 古代飛鳥を歩く
千田稔
出版社:中央公論新社(中公新書2371)
発売日:2016/04/19
日本王朝黎明期を歩く
今月、世界遺産登録勧告を受け、登録がほぼ確実となった奈良県の飛鳥および藤原宮都。その一報を受けて再読した本書だが、件の地に生まれ育った著者が贈る大人のための飛鳥旅行ハンドブックである。
王朝黎明期、飛鳥という限られた空間の中でさまざまにめぐらされた政治ドラマを、人物と遺跡を鍵に追体験する。ページを繰れば、『古事記』『日本書紀』といった神話の世界と現世のかの土地が時を超えて結びつけられる。
新書版にしてカラーということ、またもとは新聞に掲載された記事をまとめたということもあってかなり読みやすい体裁となっている。内容的には高校で日本史を履修していないと少し読むのが難しい部分もあるが、一方で突っ込んだ記述は少ないので詳しい人にとっては物足りなさを感じるだろう。また著者一流のイデオロギーが垣間見える文面がしばしば出てくるので、その点相容れない読者にとっては気にかかる部分だろう。
だが世界遺産登録を受け、飛鳥の地を訪れたいあるいは再訪しようという大人にとっては格好のハンドブックであることは間違いない。最寄の公共交通機関からの距離感なども著者の感覚ながら記されているのもまたありがたい。