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【読書感想】笹井宏之『えーえんとくちから』


 えーえんとくちから
 笹井宏之
 出版社:筑摩書房(ちくま文庫)
 発売日:2019/01/10

 
 えーえんとくちから (ちくま文庫) Kindle版
 

なにげない日常を問いただす言葉たち

 最近すっかりご無沙汰加減となっている例の後鳥羽院がらみだが、それでもいろいろちまちま進めている。そして去年くらいからは、和歌以外にも以前読んだ短歌集なんかを再び紐解くようになった。そんな折に再読した一冊。
 難病を患い長い間ほぼ寝たきりだった歌人・笹井宏之。地方紙やインターネットの短歌サイトでその作品が注目されるようになり、将来を嘱望されるも26歳で夭折した。
 こうした作者の背景は、その作品群に良い意味でも悪い意味でもフィルターをかけてしまいがちだが、タイトルにもある一首をはじめ、出色の才能の持ち主だったことは数ページ紐解けばすぐに理解できる。
 どこまでも透明で優しく温かい言葉にみえて、その実、日々の生活の中で読者が目をそらしがちな些細な現実を大胆にそして容赦なく暴いていく。また、ただただ言葉を羅列しているようにみえる作品でも口に出してつぶやいてみると、短歌の流れや音律をしっかりと保っている。そこには言葉が意味を離れ、幻想の海を揺蕩うような独特の心地良さがある。
 作者はひたすら優しいまなざしでこの世の中を眺めていたんだろうな、そんな気持ちにさせられる作品集だ。
 2019年、没後10年にあわせて笹井宏之賞が創設されている。

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