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【読書感想】渡邉雅子『論理的思考とは何か』

2024年12月25日

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 論理的思考とは何か
 渡邉雅子
 出版社:岩波書店(岩波新書 新赤版2036)
 発売日:2024/10/21

多元的思考の可能性

 近年、仕事や生活のさまざまな場面で論理的思考の必要性が声高に叫ばれているが、それと呼応するように多くの関連書籍も刊行されている。だがその多くは、論理的思考をどのように使いこなすかという小手先の解説に終始しており、論理的思考そのものを深堀りするに至っていない場合が散見される。
 本書は論理的思考の実際に迫ろうとしている意欲作だ。
 まず、アメリカ・フランス・イラン・日本の四か国の教育における作文の傾向を比較し、歴史的文化的背景からくる論理的思考の方法の違いを検討している。そしてそれらをベースに論理の形を4つに大別し、それぞれを対応させることで浮き彫りになってくる論理性・非論理性の如何を吟味するに至るが、ここで明らかになってくるのが論理的思考とはそもそも目的や立ち位置によって形を変えて存在するということだ。つまり、論理性自体それを扱う領域によって異なる様相をとる、論理的思考といっても一様ではなく異なる側面を持つ複数の論理的思考が存在するのである。
 ここから分かることは、なにか一つの論理的思考という世界共通の方法があるのではなく、目的や場合に応じて意識的に使い分けることで思考の幅も同時に広がっていくことである。それゆえに、多様性が求められる世の中にあって求められるスキルといえるのだろう。
 

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