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【読書感想】彬子女王『赤と青のガウン オックスフォード留学記』

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 赤と青のガウン オックスフォード留学記
 彬子女王
 出版社:PHP研究所
 発売日:20204/04/03

日本のプリンセス、その奮闘記

 著者である彬子女王は、故三笠宮寛仁親王の長女であることはあまりにも有名だが、皇族として初めて海外の大学から課程博士号を取得した宮様である。その博士号取得の際、留学先であるイギリス・オックスフォード大学での生活をつづったエッセイ。もとは2015年に出版された単行本だが、SNSでのバズりをきっかけに文庫化されベストセラーとなっていることは多くのメディアが報じているところだ。
 さて本書の内容だが、実際に読んでみるのが一番であることは当然として、日本の皇族という立場でありながら一人の院生として日々研究と対峙する悲喜こもごもが暖かく綴られている。面白可笑しくとはいえないものの、留学していた5年間のさまざまな思い出やエピソード、良いことも悪いこともすべてに対して愛情こもった視点で書かれていて読者を和ませてくれる。そもそも母国語での博士号取得でさえ極めて難しいというのに、海外の、しかも当初は英語も覚束ない中で始まった留学生活。更には皇族という身分から一変した生活環境の変化など、正直一般人の海外留学で味わう以上の大変化を経験された姿は著者の実感をもって読者にも新鮮に映る。
 今上陛下はじめ皇族の留学記はこれまでにも数多く刊行されてきているが、その中でも博士号取得という難関至極の経験が綴られているだけに貴重な一冊だ。また随所にかなりアグレッシブに行動されているエピソードがつづられているが、歴史学者である祖父・崇仁親王の探求心と、破天荒な皇族と言われた父・寛仁親王の大胆さを受け継がれているんだろうなぁとしみじみ感じられた。

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