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【読書感想】セシリア・ワトソン『セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点』

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 セミコロン かくも控えめであまりにもやっかいな句読点
 セシリア・ワトソン 著 / 萩澤大輝 ・ 倉林秀男 訳
 出版社:左右社
 発売日:2023/09/06

言葉の正しさへの執着

 プログラミングではここでもかというほど使われる「セミコロン(;)」。本来は英文で扱われる句読点であることは言うまでもないが、この句読点の誕生と数奇な歴史を記した本書は、訳者曰くの「ジャンル不詳の読み物」そのもので歴史書とも文法書とも言い切れない。
 本書を読んで驚かされるのは、「セミコロン」一つとってもそれを扱う言葉のルールをめぐる愛憎があることだろう。言葉と同じように文法にも流行り廃りがあって、学校で習った「教科書通りの文法」というルールそれ自体が実は右往左往としてきた歴史を持っている。本書前半部ではその論争の歴史とともに、句読点一つで人の生死に関わる重大事が起こったエピソードなど数多く綴られており、いかにルールそのものが根拠も曖昧で半ば強引にでっち上げられてきたものかがよく分かる。一方、後半で歴史に名を遺す文豪たちによる「セミコロン」の使用例がズラリと並ぶ章などは圧巻だ。
 いずれにしても、言葉はルールに従うよりも積極的なコミュニケーションツールとして、間違えを恐れず前向きに使われてこそ本当に意義深いものだと著者は締めくくっている。そう考えると、いわゆる「言葉狩り」のような風潮がどれほど陳腐で中身のないものかもよく分かる。

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