サンスクリット文法 補遺1 ~構文・音律~

サンスクリット文法 ~補遺1 目次~

     ・構文
     ・音律

構文

 サンスクリットの文章は様々な修辞法が応用された結果極度に複雑化している。
 しかし文の骨子は非常に簡素な構造をしている。印欧語の系統の通り主語と述語に大別されるが、サンスクリットの場合、人称語尾の発達により主語は必ずとも必要とはされない場合も多く、一般的叙述を除き通常省略される。

◎単文
a)一致
・同一文章内における名詞とこれに従する述語・修飾語の性・数・格は一致する。
・動詞の人称はpres.においてⅠ>Ⅱ>Ⅲの順に優先される。
b)語順
・文頭には主語、動詞的述語は文末に置かれる。中間には修飾語など他の要素が置かれ、関係の近いものはより述語に近い位置に置かれる。
・単純な修飾語は一般的に修飾される語の前に置かれる。
・指示代名詞(dem.)およびその派生語、呼格(V.)、間投詞(interj.)はしばしば文頭に置かれる。
c)文の種類
・名詞文は広義には2個の名詞からなる。
・受動態は能動態より愛用される。この場合自動詞から作られた受動形は非人称的に使用され、N.で表された動作主はIns.の形となる。
・疑問文における疑問代名詞・副詞は散文において通常文頭に置かれる。修辞的・間接的表現のほか、二重・三重の疑問文の形式がある。
・否定文にはnaが広く用いられるが、動詞などではa-などの接頭辞によって否定の表現がなされる場合も多い。また、重要な語の前に置かれる場合も多い。二重否定文では第二文の否定辞は省略される。

◎複文
 複文には並列と従属の二種類あるが、並列複文に関しては特筆するものはない。
 従属複文に関しては、副文が主文に先行する特徴を持つ。散文では関係詞が副文の先頭に置かれるが反例も多い。
・関係代名詞 ya-(correl.<相関詞>ta-)
 先行詞は多くの場合副文あるいは主・副両文の中に置かれる。
・関係形容詞 yāvat-“どれだけ多くの”、yādṛś“どのような”
・接続詞化したyad- correl.tat-のsg.n.形yat-は完全に接続詞化して名詞文を率いる。
・yathā(correl.thatā-)→比較・比喩を表す。また名詞文を率いたり、原因や目的・結果を表す副文を率いる。
・yadā-(correl.tadā-)“~する時に”
・yāvat-(correl.tāvat-)“~する間に”“~するまで”“~するや否や”など時間に関する意味が多くある。
・yatra(correl.tatra)→場所を示す。
・yadi-およびcet-(correl.tataḥ,tadā,tat,tarhi,atha)
 yadiは疑惑や予期・談話の意味を表す動詞とともに不確実な内容をもつ名詞文を率いる。
 条件文を率いる場合、yadiは最重要の接続詞となる。一般にyadiは冒頭に置かれ、全文の最後にはcetが置かれる。
 譲歩を意味する場合yadi api(correl.tathāpi)を用いる。
 yadi…yadi(vā)として二重条件を表す。
・iti
 思考や談話の内容を直接引用する場合のほか、様々な名詞文を締めくくるために用いられる。
 主文の前もしくは後に置かれる。

音律

 サンスクリットの韻文には音節(akṣara)の数を規準にしたものと音量(mātrā)の数を規準にしたものがある。
 サンスクリットの韻文は各八音節を含む四つの節(pāda)からなり、第一・二節で半句一行、第三・四でもう半句一行を形成する。

 音節の長短については以下の区別がある。
 ・長母音もしくは二重母音をもつ音節は長く、短母音を持つ音節は短い。
 ・二個以上の子音が短母音に続く音節は長い。
 ・帯気音はchを除き一子音として扱われ、chは常に位置によって長い音節をつくる。
 ・Visargaは独立の子音として扱われる。
 ・mātrāは短母音を発する際に要する時間の単位であり、短母音は1mātrā、長母音は2mātrāとなる。

 以下、長音節を‐、短音節を○、長短いずれかの場合をΘで表す。

◎音節の数によって形成される音律(akṣara-cchandaḥ)
・śloka
 八音節を含む四つの節(pāda)からなり、第一・二節で半句一行、第三・四でもう半句一行を形成する。
 各半詩節をそれぞれA,B,C,Dで表すと、

A B C D
ΘΘΘΘ ○‐‐Θ
Θ‐○‐ ○○○Θ
Θ○‐‐ ○○○Θ ΘΘΘΘ ○‐○Θ
Θ‐○‐ ‐○○Θ
Θ‐○‐ ‐‐‐Θ

 Cは随意だが、Dは必ず○‐○Θでなければならない。
 また、AとCではΘ‐‐Θという形式は許されない。

 上表のうち1の形式のślokaが最頻出でpathyaと呼ばれ、他の4形式はvipulāと総称される。

◎同一形式の4詩節からなる音律
 1詩節中の音節の数によっていくつかの種類に分かれる。
 それぞれ11,12,14,15、17、19、21、12+13音節のものがある。

・mātrāの数によって決まる音律
 各詩節は音脚(gaṇa)から形成される。
a、āryā
 俗謡やプラークリットの詩などに散見される。
 āryāは2つの長行からなり、それぞれ中間休止を挟んで2つの詩節に分かれる。
 第1詩節は3つの脚、第2詩節は3脚に半脚を含む。
 各音脚はΘΘΘΘ、‐ΘΘ、ΘΘ‐、‐‐のいずれかの形をとり、第2・4脚はΘ‐Θの場合もある。
 第6脚はΘΘΘΘ、Θ‐Θのみで、第8脚は常に単音節でΘのみとなる。
 第2行では第六脚のみ○となり他は第1行に従う。

b、vaitālīya
 第1詩節14mātrā、第2詩節16mātrāを1行とし、それを2つ重ねてつくる音律。
 各詩節は3つの詩節に分かれる。
 第2音脚は‐○○‐、第3音脚は○‐○Θを重ねる。
 第1音脚は第1詩節で○○となり、第2詩節では○○‐となる。

≪サンスクリット文法 補遺1 ~構文・音律~ 終わり≫

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