サンスクリット文法編~活用 目次~
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活用Ⅰ 動詞・現在組織
総説
現在組織
・1、第1種活用
・2、第2種活用
活用Ⅱ アオリスト・完了・未来・受動態
アオリスト組織
完了組織
未来組織
受動態
活用Ⅲ 第2次活用・準動詞
第2次活用
・使役活用
・意欲活用
・強意活用
・名詞起源動詞活用
準動詞
・現在・未来・完了・過去分詞
・未来受動分詞(動詞的形容詞)
・不定詞
・絶対分詞
第2次活用
使役活用
動詞語根はすべての時制・法・態において使役活用を行う。
使役活用は通常「ある人や事物が他の人や事物にある行為・動作をさせたりする」ことをあらわす。
使役活用した動詞語根は使役動詞と呼ばれ、意欲活用をも行い準動詞を形成する。
◎現在組織
語幹=語根+-aya(-paya)
a)語根末尾の1子音の前にある短母音はGuṇa化する。
b)語根中の長母音は2子音以上の前では変化しない。
c)amで終わる語根はāとならない。
d)語根末尾の母音は基本的にはVṛddhi化する。
e)語根末尾がāおよびe,ai,oで終わる場合、いずれもāとなり-ayaを加える際にはpを挿入する。i,ī,ṛで終わる動詞語根の中には同様の変化をするものもある。
f)その他、-ayaの前にyを用いるもの、鼻音を挿入するものなどある。
活用に際しては現在組織の使役活用の語幹にそれぞれの時制・法の人称語尾を加えて行われる。
◎現在組織以外
・アオリストの使役活用
重複アオリストの形式に従う。
・完了の使役活用
複合完了の形式に従う。
・未来の使役活用
単純未来の語幹=語根+ay+iṣya
複合未来の語幹=語幹+ay+itā
いずれの使役活用もそれぞれ第1次語尾あるいは助動詞を加えて行われる。
意欲活用
意欲活用はすべての時制・法・態において行われる。
通常「ある行為や動作を行おうとする強い意向、その用意ができている」ことをあらわす。
◎現在組織
語幹=語根重複+-sa,-iṣa
a)重複音節の母音はiが用いられるが、語根にu,ūが含まれる場合uが用いられる。
b)aniṭ語根及びu,ūで終わる語根では結語母音iを挿入しない。
c)veṭ語幹はiṭを任意で挿入する。
d)ṝで終わる語根はiṭを任意で挿入する。
e)seṭ語幹にはiṭを挿入する。
f)その他任意でiṭを挿入するものもある。
g)語根末尾のi,uは-saの前で長音化される。ṛ,ṝはīr、pa行音に続くṛ,ṝはūrとなる。
h)i,ī,u,ū,ṛ,ṝはiṭを挿入する場合Guṇa化する。
i)語根末尾の1子音の前にある短母音はiṭを挿入する場合Guṇa化する。
j)2子音以上で始まる語根の末尾1子音前にある短母音は-iṣaの前で人にGuṇa化する。
活用は第1類動詞の活用と同様。
◎現在組織以外
・アオリストの意欲活用
iṣアオリストの形式に従う。
・完了の意欲活用
複合完了の形式に従う。
・未来の意欲活用
単純・複合未来いずれもそれぞれの形式に従う。
また単純未来の意欲活用の語幹から未来分詞がつくられる。
強意活用
強意活用は通常第1~9類に属する子音で始まる1音節の動詞語根からつくられる。
「ある行為や動作が強く行われたり、頻繁に繰り返される」ことをあらわす。
P,Aで形成に差があり、使用頻度としてはAの方が高い。
◎現在組織
P,Aともに語根重複するが、Aの場合接辞yaが加わる。
活用はPの場合は第3類動詞Pと、Aの場合第4類動詞Aと同様となる。
◎現在組織以外
Pの現在組織以外の強意活用は使用頻度が極めて少なく、また多くの問題点があるため、以下Aについてのみ記載する。
・アオリストの強意活用
iṣアオリストの形式に従う。
・完了の強意活用
複合完了の形式に従う。
・未来の強意活用
単純・複合未来いずれもそれぞれの形式に従う。
名詞起源動詞活用
名詞・形容詞の語幹からつくられる動詞で、意味上の関係を総括すると「それの性質をもつ、そのように振る舞う、それに似る、それとみなす」などの意味をあらわすものとなる。
語幹は名詞・形容詞の語幹から直接つくられる場合と接辞が加わる場合がある。
接辞ayaが加わってつくられるものがもっとも多い。
1、接辞を加えない場合
「~のように振る舞う、似る」を意味する。
語幹=名詞・形容詞の語幹+語幹母音a
Pの形式に従って活用される。
a)a,āは語幹母音の前で消失し、その他の母音はGuṇa化する。
b)語幹末尾の鼻音の前にあるaはāとなる。
2、接辞ya(P)を加える場合
「~を欲する、~のごとく扱う、見なす」を意味する。
語幹=語幹+接辞ya(P)
a)語幹末尾のa,āはīとなり、i,uは長音化する。ṛはrīとなりo,auはav,āvとなる。
b)語幹末尾の鼻音は消失し、鼻音に先立つ母音は上記にしたがう。
c)語幹末尾の子音は鼻音以外変化しない。
3、接辞ya(A)を加える場合
「~のごとく振る舞う」を意味する。
語幹=語幹+接辞ya(A)
a)語幹末尾のaはāとなりāは変化しない。
b)i,uは長音化する。ṛはrīとなる。
c)語幹末尾のan,as,atはāとなるが例外もある。
4、接辞ayaを加える場合
さまざまな意味をあらわし、第10類および使役動詞の場合と同じ形態をとる。
a)語幹末尾の母音は省略される。
b)基礎となる語が2音節以上で子音で終わる場合、その子音とそれに先立つ母音はともに省略される。
c)基礎となる語が1音節あるいはaで終わる場合、接辞āpayaが加わることがある。
準動詞
準動詞は動詞から派生したものだが定動詞とは異なり人称語尾を用いない。しかし格支配などは動詞のような扱いとなる。
また準動詞には格変化するもの(現在・未来・完了・過去分詞および未来受動分詞)と格変化しないもの(絶対分詞・不定詞)がある。
現在・未来・完了・過去分詞
この中では特に現在分詞と過去分詞が重要となってくる。
◎現在分詞(Pres pt P,A)
P現在分詞の語幹= 第1種活用:現在語幹+-t
第2種活用:現在語幹(弱)+-at
A現在分詞の語幹= 第1種活用:現在語幹+-māna(f māṇa)
第2種活用:現在語幹(弱)+-āna(f -ānā)
P現在分詞には強弱の区別がある。強語幹では-tの前にnが挿入される。
P現在分詞の格変化はat語幹にしたがう(fはī語幹)。
A現在分詞の格変化はa語幹にしたがう(fはā語幹)。
・現在分詞の受動態(Pres pt Pass)
語幹=Pass現在語幹+-māna
格変化はa語幹にしたがう(fはā語幹)。
◎未来分詞(Fut pt P,A)
P未来分詞の語幹=未来語幹+-t,-nt
A未来分詞の語幹=未来語幹+-māna(f -mānā)
P未来分詞には強弱の区別がある。強語幹では-tの前にnが挿入される。
P未来分詞の格変化はat語幹中のtudat-(<\(\sqrt{tud}\))の変化にしたがう。女性系はī語幹。
A未来分詞の格変化はa語幹にしたがう(fはā語幹)。
・未来分詞の受動態(Fut pt Pass)
語幹=未来語幹++-māna
格変化はa語幹にしたがう(fはā語幹)。
◎完了分詞(Pf pt)
P完了分詞の語幹=Pfの弱語幹+-vas,-ivas(f -uṣī)
A完了分詞の語幹=語根を重複したPfの弱語幹+-āna(f -ānā)
P完了分詞の格変化はvas語幹にしたがう。
◎過去分詞(P pt)
・過去受動分詞(P pt Pass)
通常「ある行為・動作が完結した状態」「ある行為・動作の結果として生じた結果」という意味をあらわす。
語幹=語根あるいは第2次活用の語幹+-ta,-ita,-na(f -tā,-itā,-nā)
格変化はa語幹にしたがう(fはā語幹)。
・過去能動分詞(P pt act)
語幹=P pt Passの語幹+vat(f -vatī)
格変化はvat語幹にしたがう(fはvatī語幹)。
未来受動分詞(動詞的形容詞)
未来受動分詞(Fut pass pt)は「~がなされるべき」という意味をあらわす。
語幹は語根または第2次活用の語幹に3種類の接尾辞が加わることでつくられる。
格変化はa語幹にしたがう(fはā語幹)。
・接尾辞-tavya(-itavya)
複合未来(Periph fut)における語幹形成の規則にしたがう。
・接尾辞-anīya
単純未来(Fut)およびPeriph futの語幹形成の規則にしたがうが、語根は通常Guṇa化し語幹末尾の子音の前のṛはarとなる。
・接尾辞-ya
もっとも頻繁に使用される。
a)語根末尾のāおよび二重母音はeになる。
b)語根末尾のi,īはeまたはayになる。
c)語根末尾のṛ,ṝはārになる。
d)語根末尾のu,ūはāvとなる。
e)語根末尾が1子音の前のi,u,ḷはGuṇa化する。
f)子音間のṛは無変化。
g)子音間のaはāになる。
h)語根末尾のc,jは語根のP pt Passがiṭを挿入しない場合k,gとなり、それ以外では無変化。
不定詞
不定詞(Inf:Infinitive)は動作・行為の目的をあらわすほかに能力や意欲もあらわす。
不定詞=語根または第2次活用の語幹+-tum(-itum)
基本的に能動・受動の区別はないが例外もある。
また、複合語の前分として用いられる場合は-tuとなる。
絶対分詞
絶対分詞(Ger:Gerund)は通常同一動作者によってなされる2つ以上の行為・動作のうち、先行する行為・動作をあらわす。
語根または第2次活用の動詞語幹に3種類の接尾辞が加わることでつくられる。
・接尾辞-tvā
語根または語幹が動詞接頭辞を伴わない場合に用いられる。
結合母音iの挿入には様々な規則が用いられる。
a)語根末尾の子音前の短母音および語根末尾の母音はGuṇa化する。
b)語根末尾の子音前にある鼻音は任意で消失する。
c)語根末尾のāまたは二重母音はP pt passと同様に変化する。
・接尾辞-ya
語根または語幹が動詞接頭辞を伴う場合に用いられる。ただし否定辞a-を除く。
a)語根が短母音で終わる場合、接尾辞-yaの代わりにtyaが加わる。
b)語幹末尾の子音前にある鼻音は消失する。
c)語根末尾のā,e,ai,oはāになる。
・接尾辞-am
語根または第2次活用の動詞語幹に用いられる。
一般的にこの絶対分詞は同一動作者によってなされる2つ以上の行為・動作のうち反復されるものをあらわすものに用いられる。
≪活用編 終わり≫