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【読書感想】田中慎弥『孤独に生きよ 逃げるが勝ちの思考 増補改訂版・孤独論』

 
 孤独に生きよ 逃げるが勝ちの思考 増補改訂版・孤独論
 田中慎弥
 出版社:徳間書店
 発売日:2025/05/31

自分の人生を取り戻すために

 15年に及ぶ引きこもり生活の末、芥川賞作家として脚光を浴びた著者が語る人生論。タイトルにもある「逃げるが勝ち」のとおり、逃げてもいい、独りでもいい、なんとかなる、といった月並みな言葉が本書の中には並ぶ。しかし引きこもってたが故の屈折した価値観を押し付けてくるのかというと決してそうではなく、むしろ至極真っ当な視点から生き方を問い直すよう語り掛けてくれる。
 生きづらさに象徴される現代社会にあって、奴隷的な環境あるいは思考停止の生活に陥ることで自分を見失っている人は多い。そうした現状を変えるために逃げ出すことは立派な方策だ。その上で「孤独」を選ぶことは、すなわち自分と真正面から向き合うことに他ならない。自分の人生を生きる、その主導権を取り戻すために「孤独」
を愛する……。
 自身の引きこもり生活も赤裸々に語られているが、精神的な歪みというのをまるで感じない。むしろ、あまりにもナイーブで危うい純粋な感性が光る。この著者の精神性から語られる思考がいかに客観的で現実的なことか。
 本書改訂版を期に追加された亡き御母堂への想いが綴られた新章「家族は孤独を癒すのか」は、亡き母親への率直な想いが綴られていて胸に迫るものがある。
 ただ、あとがきで本書が口述筆記であると述べられているが、この点は冒頭に言っておいてほしかった。
 

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