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【読書感想】山野辺太郎『いつか深い穴に落ちるまで』

2026年07月27日

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 いつか深い穴に落ちるまで
 山野辺太郎
 出版社:KADOKAWA(角川文庫)
 発売日:2024/12/24

自分が存在している意義とは?

 戦後すぐに立ち上がったひとつの国家的プロジェクト。「日本からブラジルへ通じる穴を掘る」という壮大にしてなんとも荒唐無稽な大事業に余曲折あって関わることとなった主人公。巨大プロジェクトだからこそ、そこにかけられた歳月の長さと関わる団体個人の多岐は想像を絶するものがあるが、主人公もまたその中の一つのコマとして冷静に事業の進捗を見つめる。第55回文藝賞受賞作ながら、SFともミステリーとも社会派とも言い切れない独特のスタンスの小説である。
 ネット上の評価もさまざまに分かれているが、それは本作品が社会の縮図そのもののように読めるからではないだろうか? 会社組織然り、大きな集団の渦中にあって、己の存在意義を見出すのもまた人それぞれであるのと同様に、本作品ではその場面ごとにさまざまなメタファーが散りばめられている。
 個人的には何度目かの再読本になるが、近年読んだ中でも他に類を見ない孤高の作品のように思う。だがこのクライマックスは何回読んでも腑に落ちないというか、少し物足りなさを感じ出てしまう。

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