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【読書感想】ガリ『死刑囚の理髪係』

2024年06月28日

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 死刑囚の理髪係
 ガリ
 出版社:彩図社
 発売日:2024/05/28

罪に向き合うとはどういうことか?

 主として裁判で刑が確定していない未決拘留者と死刑囚が収監される拘置所。東京拘置所は全国に8つある拘置所のひとつとしてあまりにも有名だが、そこで「服役」したというある意味珍しい経験をした著者による実録記。死刑確定後、死刑囚は面会など外部との接触が極限まで制限されその動向を知ることはできないが、理髪師として東京拘置所に収容されている人々の髪を切る刑務に服した著者は、死刑囚とも接することができた。記憶に残る凶悪事件の当事者、あるいは有名人・著名人の「生身の人間」として片鱗が、生々しくも克明に記されている観点からも貴重な資料といえる。
 だが本書でもっとも読まれるべきは、単に著者が見聞した拘置所内でのあれこれではない。特に死刑囚と接する中で著者が感じた、「死刑」という日本の法制度への考え方の変化は一読に値する。もちろんその感じ方は著者一人称からの視点だが、これまでたびたび議論されてきていながら未だに何一つ変化のない「死刑」というものを考え直すきっかけを読者に与えてくれることは間違いない。
 また著者自身、拘置所に収監されている人々の髪を切ることにある種の面白みを感じていたようだが、自身の犯した罪と向き合い更生するという本来の服役の趣旨とのジレンマを感じる場面など、興味深いエピソードが豊富だ。いわゆる「シャバ」にあってはなかなか経験することのできない珠玉のエピソードは一読に値するだろう。

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