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【読書感想】粥川すず『大正學生愛妻家』

 
 大正學生愛妻家
 粥川すず
 出版社:講談社(モーニングKC)
 発売日:2024/11/21

結婚からはじまる恋愛模様

 苦労人ながら健気で素直な女中と資産家の御曹司との大正ロマンラブストーリー。タイトル通り二人は夫婦である。夫婦だが、「ねえや」と「坊ちゃん」の関係性からなかなか抜け出せない。そんな二人の新婚生活を描いた本作は、大きな波風が立つわけでもなく、更に陰湿な脇役やヒールが登場するわけでもない淡々とした物語だが、どこか心暖まるステキな作品だ。
 大きな波風が立つわけではないと書いたが、それでも生活をしていく上ではいろいろな起伏がある。関係性であったり感情であったり、種々さまざまな要素が日々めぐり合うのは漫画も現実も同じであるし、過去も現在もまた同じだ。だがそうした日々の小さな起伏を通して、だんだんと本物の、そして理想の夫婦に近づいていく二人の姿がなんとも倹しく愛おしく感じられる。
 登場人物たちのそれもまた同じで、二人の人柄がそのままにじみ出たような世界観には不思議と引き込まれ、そこから抜け出すのが惜しいとさえ感じてしまう。
 更に、本作は絵がとても丁寧に描かれているのも特筆すべきことだろう。人物や背景はもちろん、登場人物それぞれが抱えた過去を反映しつつ描かれる感情の機微など、ストーリーとの兼ね合いが絶妙だと思う。
 なにより、身分格差&年の差&ほぼ恋愛婚という当時としては異例の結婚ながら、二人の愛が重た過ぎない。漫画とはいえ当時の人々の早熟さを感じるにあまりある。
 冒頭に若干のひっかかりを覚える不穏な描写があるが、果たして伏線として回収される日が来るかどうか今後が楽しみだ。
 
 個人的に「大正ロマン」と呼ばれる時代背景が大好きなのだが、その後の時代を考えると、せめて漫画の中だけでも二人にはこのまま幸せになっていってほしいと願わずにいられない。

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