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【読書感想】見坊行徳『三省堂国語辞典から消えたことば辞典』

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 三省堂国語辞典から消えたことば辞典
 見坊行徳 / 三省堂編修所
 出版社:三省堂
 発売日:2023/04/05

辞書作りの舞台裏

 時代と共に言葉の流行り廃りがあることは自明のことだが、それは辞書においてもまた然りで、古語あるいは死語として残るものもあれば掲載そのものが削除されるものもある。本書は『三省堂国語辞典(以下、三国)』から削除された言葉について、前身となる『明解国語辞典』から各改訂版ごとにいつから掲載されいつ削除され、また削除された理由も付して解説されている異色の辞書本だ。
 削除された言葉には社会や世相といった時代の変化が反映されているだけではなく、それぞれの辞書のもつコンセプトやスタンスの違いなどさまざまなものが読み取れ、辞書作りの舞台裏を垣間見るような気にさせてくれる。また限られた紙面にどの言葉を掲載しどの言葉を削るのか、小型辞書の宿命のようなものも感じられる。もっとも三国から削除されたからといって他社の辞書では未だに掲載されているという言葉も多く、また削除されたからといってその言葉の指すモノやコトが否定されたわけではないことは留意すべきだろう。
 本書が画期的なのは、先述のとおり掲載された期間や削除理由が明確だということに限らず、コラム的に一語をピックアップし深掘りしていたり、関連語も同時に削除されている場合はそのページも参照されているので反復しながら周辺知識にも触れられる。また脚注では軒並み鋭いツッコミが入っているのも読んでいて楽しい。
 とはいえ今の令和世代の若者が読むには背景的あるいはコンプラ的にハードルが高めという言葉も多い。そして頭から通して読むには、辞書を通読した経験がない人には敷居が高く感じられるかもしれない。ページをパラパラめくりながらの読み物として対峙する方が読みやすいだろう。
 個人的にふと気になったは、削除された言葉の中に平成生まれのものが多く含まれている点だ。どこか、言葉の消費期限というか寿命が短くなってきている印象を受けざるを得ない。

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