感想・レビュー

【読書感想】川村裕子・早川圭子『はじめての王朝文化辞典』

2023年09月24日

 
 はじめての王朝文化辞典
 川村裕子 著 / 早川圭子 イラスト

 出版社:KADOKAWA(角川ソフィア文庫)
 発売日:2022/08/24

 日本古典文学から紐解くお公家さんたちの生活

 本書は、かつて出版された『王朝生活の基礎知識』を全面的に加筆修正し文庫化したものである。『源氏物語』や『蜻蛉日記』などの古典文学の有名シーンをベースに、そこで繰り広げられている公家社会の生活ぶりを現代生活に置き換えつつ解説してくれている、そんな「有識故実」の入門書だ。住居や食事、ファッションや遊戯はもちろん、人生における節目の儀式や1年間のサイクル、風習や儀礼など、有識故実の基本中の基本を、古典文学のなかで描かれている場面にそって紹介してくれているので、辞典というより解説書と言った方が近いかもしれない。実際、有識故実という「王朝文化」の解説と同じくらい、取り上げられている古典文学の解説も深く掘り下げられているので、当該の作品の世界観をより一層深く立体的にとらえることができる。
 入門書ということもあって、多くのイラストが付随されているのも本書の特徴だ。もちろん、本格的な有識故実の専門書や辞書にも時おり画像資料が掲載されていたりするが、本書は日本画を専攻した画家によるイラストなので、そのどれもが柔和で温かく感じられる。また、本文も常に読者に寄り添うような感じで、長文の後などでは「大丈夫ですか?」「難しくないですか?」と語りかけてくれるのも段々とクセになってくる。
 私も『後鳥羽院project』シリーズではさまざまな有識故実関係の専門書や辞書にお世話になっているが、本書にもまた、基礎の基礎に立ち戻りたいときにお世話になっている。……とはいえそもそも有識故実自体が難解煩雑なので、毎度辟易しているが。
 

-感想・レビュー
-