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【読書感想】渡辺範明『国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか?』

2023年07月26日

 
 国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか?
 渡辺範明

 出版社:イースト・プレス
 発売日:2023/06/21

RPGの基礎教養

 ゲーム業界の一大ジャンル・RPG(ロールプレイングゲーム)、その二大巨塔である「ドラゴンクエスト」(以下DQ)と「ファイナルファンタジー」(以下FF)。最早その内容を解説する必要はないだろう。本書はDQ・FFを基軸とした国産RPG史だ。内容自体は概ねDQ・FFの話題に終始しているが、著者が元スクウェア・エニックスのゲームプロデュサーであるだけに、その歴史はもちろん、さまざまな比較検討をしているがその視点がまたユニークだ。作品自体の世界観やシステムはもちろん、音楽やイラスト、ハード面の変遷から個々の作品がどういった舵きりをしてきたか、その渦中にあった人だからこその語りが展開される。特にエニックスとスクウェアの合併に際してのエピソードは興味深い。
 長く双璧としてその間には埋めても埋まらない溝があった2作品だが、著者の手にかかれば両者共分け隔てなく、賛否の分かれる作品にいたっても愛情ある解説でその魅力を伝えてくれている。
 もともとTBSラジオで放送された内容を書籍化したものなので、書き口もライトでとても読みやすい。だがその反面、ひとつひとつの考察はそれほど深くなく、せっかくの視点のユニークさがもったいないように感じる。特に往年のファンあるいは筋金入りのゲーマーにとっては既知の話題も多く、もっと著者独自の深掘った考察があればなお面白くRPG史の魅力を表現できたのではないかと感じた。
 いずれにしても、その全盛期にDQ・FFに触れた世代にとっては刺さりまくる内容であることは間違いない。

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