【読書感想】さーたり『外科医のママ道! 腐女医の医者道!エピソードゼロ』

 
 外科医のママ道! 腐女医の医者道!エピソードゼロ
 さーたり

 出版社:KADOKAWA
 発売日:2020/03/18

医師であること母であることオタクであること

 「腐女子」×「女医」=「腐女医」こと、外科医そして三人のママとしての活躍するさーたり先生のエッセイコミックシリーズ、その前日譚。医療と子育ての現場の奮闘を描いた作品は、コミカルなタッチと相俟ってブログはもとより書籍としても人気が根強い。
 テレビドラマにみられるようなものと違って、実際の医療現場の雰囲気や様子を現役医師が伝えてくれる書籍や動画も数多い。だがさーたり先生に関しては、ただでも多忙な医師の中でも過酷極まる外科医(一時期はフライトドクター)で、しかも同じ外科医と結婚・出産、そして育児に加えてオタ活までこなすという奮闘ぶりが、医療関係者の中でも異色出色である。加えて持ち前の人柄なのか、かなりぶっ飛んだ逸話というか伝説も数多く持ち合わせている。「食事は5分」とか「月の半分は当直(朝から翌日夜までの勤務)」なんかは若い医師なら当然のエピソードとして、「摘出した胃の検体に頭をツッコンで寝ていた」とか「ホルマリンを頭からかぶって急性中毒になった」とか、子育てにまつわるものも含めると枚挙にいとまがない。
 そして本書ではシリーズ第一巻の前段階でのお話しが描かれているが、相変わらずのぶっ飛びエピソードが満載である。夫との馴れ初めや結婚の前後、東日本大震災発生直後の初産と初育児にまつわる悲喜こもごも……。その中でも群を抜いているのが、やはり「帝王切開手術を受けた際、開腹から閉腹までの一部始終を自分で見た」という話しだろうか。そのまんまのエピソードなのだが、外科医らしい性からかあるいは医師として患者の立場にたつことの物珍しさからか、まるまる1章割かれている。これ以外にも、これまでのシリーズの中で語られていたエピソードの詳細や裏話なんかも盛り込まれていて、「あ! あの話し、結局こういうことにつながってたんだ~」と往年の読者にも新鮮な話題に事欠かない。
 そしてさーたり先生のシリーズではおなじみ、最終章で少しお涙ちょうだいというか心にグッとくるエピソードももちろん封入されている。
 毎度最終章を読むたび感じることだが、外科医で子育て中のママで更にオタクであるさーたり先生もまた、一人の社会人であり一人の家庭を持つ親であり一人の人間なんだということをあらためて気づかされる。当然のことではあるけれど、そこに至るまでページがコミカルなだけに、そのことをすっかり忘れてしまっている。よって最終章のシリアスな話題が、医師や親といった立場を越えた一人の人間としての深い述懐となって読者の胸を指してくる。時代はいつでも過渡期だが、一人の人間としての苦悩、殊、医師という命の現場に関わる人の視点から切り取られる課題は、どこか普遍的なものをもっているように感じる。

 現在は大学病院勤務をやめ一般病院やクリニックなどに勤務されているようだが、元小児科医で感染症専門医の父・中山哲夫先生と共著を出すなど、精力的に活動をされている。更新頻度は落ちているものの、ブログは現在も更新されている。どれも続きが読みたくなるエピソードばかりw
 腐女医が行く!! 〜外科医でママで、こっそりオタク〜
 あと、本書は2020年に発売されていましたが、昨年発売されたシリーズ最新刊を含めて読み返した中で、なんだかんだ一番グッと来た作品でした。
 
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