【読書感想】伊藤俊一『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』

 
 荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで (中公新書)
 伊藤俊一
 出版社:中央公論新社(中公新書)
 発売日:2021/09/25

古くて新しい中世日本の経済史

 古代から中世にかけ、日本経済の基盤であった荘園。その成立から解体までの歴史を比較的新しい論点で語られている荘園通史。内容は大学の講義レベルで、圧巻の一言。
 本書では主に”領域型”荘園に焦点をあてた解説がされている。グラフなどを多用し、気候変動や飢饉・災害、政治的変遷との関連が紐づけられており、ビジュアル的にも理解しやすい。また行政・司法からの視点、職の体系の各位における権利・権限からの視点など、重層的な読み解きがなされているのが特徴的だ。豊富な史料をもとに、広範囲の時代を扱った通史なだけに、実に刺激的である。
 終章にて本書の総括がされているが、そこだけ読んでも日本史における「荘園」というキーワードを理解するには十分だろう。

 著者は室町時代を専門としている。これまで平安・鎌倉を専門とする学者ばかりに語られてきた荘園制度だが、そこに新風を吹き込むべく本書を上梓した意義は大きい。
 しかしここまでボリュームのある書き方をされていながら、索引がないのが非常に残念。新書特有のことではあるが……。
 かつての経済基盤にして日本史を語る上でも重要な概念である「荘園」を、根底から理解できる画期的な一冊。正直、高校生の頃に読みたかったと痛感せざるを得ない。
 大学の講義レベルと最初に言ったが、その通りに内容自体ハイレベルで初学者には手強いだろう。しかし、「簡単」「わかりやすい」という昨今の潮流である単純化を排し、読者に挑もうとする姿勢が感じられる。また、こういうレベルの新書が世に問われる背景には、数年来の歴史ブームと相俟ってその成熟さが一段と進んだ証だろう。
 
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 荘園 (日本歴史叢書)
 

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