【読書感想】遠藤耕太郎『万葉集の起源-東アジアに息づく抒情の系譜』

 
 万葉集の起源-東アジアに息づく抒情の系譜
 遠藤耕太郎
 出版社:中央公論新社(中公新書)
 発売日:2020/06/20

日本人のDNAにまで刻み込まれた”抒情”の源

 日本最古の歌集『万葉集』。
 本書はそこへ掲載された和歌に流れる抒情の系譜の起源を東アジア一帯の少数民族に今なお伝わる”歌垣”に求めるべく、フィールドワークを通じて実証していく意欲作だ。
 
 中尾佐助らが提唱した”照葉樹林文化圏”。それは広義的には漢字を用いて自文化を表現する地域とも言い換えられる。
 著者は自身の専門領域である中国・雲南省の少数民族の調査を通じ、万葉集とそこに伝承される歌垣との比較・考察を本書で行っている。
 男女の恋愛歌はもちろん、それを越えた愛の掛け合い。また死者の送りや家族と村の関係。殊、”喪”と”葬”の概念的な差異、あるいは”予祝”が慶事・弔事を問わず行われているなど、興味深い報告に溢れている。
 
 しかし本書の目的は広域的な文化圏における抒情の在り方の系譜を説いているという側面が強く、万葉集をどう読むかという本ではないことは留意しておいた方が良い。

 とはいえ巻末で
 「恋歌も喪葬歌も人を恋しいと歌う。そういう声の歌の技術のなかに、私たちの抒情の原型は胚胎した。それは国家成立以後の書かれる歌、つまり『万葉集』やそれ以降の勅撰和歌集に継承されて深化し、現代に連なっている」
 と書かれている通り、今現在においても我々日本人は”歌”を通じて”社会”というストーリーと折り合いをつけている指摘に対しては感動を禁じ得ない。
 
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 万葉仮名でよむ『万葉集』
 

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