【読書感想】森博嗣『お金の減らし方』

 
 お金の減らし方
 森博嗣
 出版社:SBクリエイティブ
 発売日:2020/04/06

清く正しいお金の使い方と稼ぎ方

 世の中にはお金に関する書籍は膨大にある。
 しかしそのほぼ全てが稼ぎ方なり増やし方なり、どうお金を増やすかという点にフォーカスが当てられている。
 そんな中、本書はお金の「減らし方」について書かれた前代未聞の一冊である。
 
 著者は元大学教員で、今は作家として生活している。著作も膨大にあるので読んだことのある人も多いだろう。
 工学博士として某国立大に勤務していたというが、大学教員といえども給料はピンキリで、殊国立大学となると国家公務員のなんとやら、推して量るべしというものだ。もちろん当時の生活はそれなりに厳しいものがあったらしい。
 とはいえ年々少しずつ昇給はあるので次第に生活は安定しはじめたようだが、将来的なことと自身の趣味のため、著者はもっと収入を増やすべく画策をはじめる。
 そこで始めたのが小説の執筆だったのだが、結果それが大当たり。見事収入増、しかも不労所得を得られるまでになった。
 で、著者がそこまでお金をつぎ込みたかったという趣味なのだが、それは庭に線路を敷いて機関車を走らせることという由緒正しい(?)ものである。
 お金を稼いで機関車を買い、線路を敷いた。線路を敷くためにより広い庭のある家を買った。そしてまた線路を延ばした。延ばした線路で機関車に乗って走り回った。
 一見すると羨ましい限りのような話しだ。

 だがそうした表層的な部分の下にとても大切な考え方があることが、本書を読んでみるとよくわかる。
 それはお金との健全な付き合い方だ。
 著者は収入が激増したからといっても、自分の趣味以外にお金をほとんどかけていない。つまり生活レベルを変えていない。
 しかしお金をつぎ込んだ趣味という面においては相当な満足感を得ている。いかに稼ぐかよりも、お金を何にどう使うのかを重視した結果だ。
 そう、お金自体に価値があるのではなく、お金は支払う対象物の価値と等価交換するための道具に過ぎない。
 その上で、他人と比べることなく自分にとっての幸せの軸を見出し焦点を当ててみること、本書でいうお金の上手な使い方の意図はそこにある。
 実際著者は「(単純に)お金を減らしたいなら、借金をすることだ」と言ってのけている。
 自分を防衛する手段として、そして自分の欲求を知る手段として、お金は実に明確な物差しとなる。
 本書はお金というひとつの”道具”を通じ、幸せで充実した人生を送るための生き方指南書だ。

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 本当の自由を手に入れるお金の大学

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