天体観測

天体写真を撮りたいの!~機材導入&木星・土星撮影編~

 
 ISO6400,露出時間10秒,f/3.5,18 mm

 ……というタイトル通りの記事です。

目次

     プロローグ
     機材導入編
     木星と土星を撮影!

 
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 星空写真撮影術 改訂版 天体写真撮影テクニック

プロローグ

 
 実はワタクシ甚之助、子どもの頃の夢は天文学者でして、星空見上げたり、望遠鏡覗いたり、図鑑や書籍を読み漁っているような子どもでした。
  cf,天文学者の仕事 - 京都大学 大学院理学研究科 宇宙物理学教室  岩室 史英

 ただ、小学校高学年の頃「天文学者になるにはまず算数の勉強を頑張ってから……」などという話しをどこぞの博物館の学芸員さんにされて、

「あ、オイラ算数苦手だ……」

 と思い、かなり早い段階でその夢は諦めてしまったわけで(後々、数学や物理が大好き&大得意になったので諦めなければよかったなと……遠い目)。……
 それはさておき、当時は入門者用の望遠鏡を買ったりあるいは自作したりもして、月やらなんやら眺めていたわけで、土星を初めて見た時は感動したな~と昨日のように思い出したりします。
 しかし、当時やりたくともどうしても手が出なかったのが今回の天体写真撮影だったのです。

 当時はまだまだフィルムカメラ全盛の時代。
 まずもってまともに天体写真を撮ろうとすると一眼レフカメラは必須 ←高価!
 望遠鏡とカメラを接続するアダプターやフィルター、接眼レンズ類の購入&更新 ←子供には高価!
 カメラ単体で撮影しようにも、それなりのカメラレンズが必要 ←大人でも高価!

 ……てなワケで子供一人胸躍らせても手も足も出ない状態。

 もっとも当時、「写ルンです」的なものを望遠鏡に取り付ける簡易キットみたいなものもあったようですが、撮れても明るい時の月面が関の山という感じだったらしい。
 また今のようにインターネットなんてないものだから、情報収集するにも一苦労。天文系の雑誌や専門書を当たるしかなかった。

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 ANQILAFU ユニバーサル 携帯電話のアダプタマウント

 あれから数十年。……
 ヒョンなことをきっかけに、ワタシの中で天体観測ブームが再来! というのが"今ココ!"状態w
 そしてふと気が付くわけです。
 「アレ? 大人の財力で今ならアダプターとか買えるんじゃないの?」
 「アレ? オレ今デジタル一眼レフ持ってんじゃね?」
 「アレ? もしかして子どもの頃できなかった天体写真撮影、今なら出来るんじゃない!?」
 ということで最低限必要な機材と部品を早速招集&購入と相成った次第w
 

機材導入編

 まずデジタル一眼、ワタクシの愛機・CANON EOS kiss x5。
 
 ココや本家で掲載している写真はほとんどこのカメラで撮影しています。
 もうかなり古いボディになってしまいましたが、スペックも必要十分だし個人的にとても手に馴染んで好きってんで長らく愛用しています(まあそろそろ更新しようかなとも考えていますが……)。
 ちなみに普段レンズはSIGMA「18-250mm F3.6-6.3 DC MACRO OS」を使用してます(SIGMAのレンズはキレがあって好きw)。
 
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 SIGMA 高倍率ズームレンズ 18-250mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM キヤノン用 APS-C専用

 
 で、次に望遠鏡ですが、これまた古い機材。
 
 小学生時分、家の手伝いをしてはお小遣いを貯めて買ったVIXEN TACHYON・C-60Lという屈折望遠鏡。
 当時の入門用としてはそれなりのレベルの代物。
 
 スペックはこちら。
 
 D(対物レンズ有効径)=60mm
 f(対物レンズ焦点距離)=910mm

 とここでまず、望遠鏡の基礎知識をば。
 望遠鏡には大きく分けて屈折式・反射式・カタディオプトリック(反射屈折)式の3種類があります。
 望遠鏡を選ぶ際のポイントとして対物レンズや主鏡の口径(有効径)があげられますが、ここが大きければ大きいほど暗い星の光を多く取り込めます。
  F値(明るさの値)=対物レンズ(主鏡)の焦点距離 ÷ 対物レンズ(主鏡)の有効径
 でもとめることができ、F値が小さければそれだけ"明るい"望遠鏡といえます。
 上記の望遠鏡ではおよそ"15"になり、それほど明るい望遠鏡ではありません。

 また接眼レンズ(アイピース)を変えることでさまざまな倍率を楽しめますが、これも一般的には「対物レンズ(主鏡)の有効径の2倍が適正倍率」といわれています。
 上記望遠鏡では対物レンズ(主鏡)の有効径が60mmなのでおよそ120倍が適正倍率になります。
 アイピースにはそれぞれの焦点距離が明記されていますが、
  倍率=対物レンズ(主鏡)の焦点距離 ÷ 接眼レンズ(アイピース)の焦点距離
 で倍率を求めることができます。
 例えば上記望遠鏡で焦点距離15mmのアイピースを用いた場合だと倍率は60倍となります。
 また適正倍率である120倍にするのであれば、8mm前後のアイピースが適当ということになります。
 もちろんそれを超える倍率でも観測は可能ですが、対物レンズ(主鏡)の有効径によっては像が暗くなったり、全体的にぼやけてしまったりします。
 
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 SVBONY 接眼レンズ アダプター アイピースセット
 31.7mm径 汎用アイピース (6mm 9mm 15mm 20mm)

 
 そして屈折式と反射式の最大の違いがここにあらわれるわけです。
 屈折式の場合、焦点距離は稼げるけれど、先端の対物レンズを大きくすることが難しい。理由としては大きなレンズであればそれだけ高価になるので。
 一方反射望遠鏡の場合、鏡筒下部にある主鏡を大きくするのが比較的容易のため、有効径を稼げるのですが、反射式は反射式でメンテナンスが必要だったりします。
 当時「入門者は屈折式が無難」なんて言われていたので上記の屈折式望遠鏡を購入しましたが、今では初心者向けの反射望遠鏡なども出ているようですので、目的にあった望遠鏡選びも比較的容易になっています。

 上記の望遠鏡基礎知識の詳細は以下のリンクをオススメします。
  cf,天体望遠鏡の選び方 - VIXEN 

 さて、いよいよ本丸である望遠鏡とカメラの接続へ!
 まず最初に用意するべきなのは「Tリング」。
 
 これさえあれば望遠鏡とカメラを接続できるという最低限の代物。
 昔、天文系の雑誌とかでよくこのTリングの広告を見かけましたが、「こういうモノだったのね~」と感嘆。

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 Vixen Tリング キャノンEOS用(N)

 今回はアイピースを用いたいわゆる"拡大撮影"をしたいので、専用の接続アダプターも用意。
 
 VIXEN 拡大撮影用アダプター。
 これを用いることで望遠鏡本体とカメラボディの間にアイピースを入れることができます。

 
 こんな感じでバラけます。右から順番に①~④と番号をふっておきます。

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 Vixen 拡大撮影カメラアダプター

 で今回はついでにアイピースの31.7mm接眼アダプターも念のため用意。
 
 従来アイピースの規格は24.5mm径(ドイツサイズまたはツァイスサイズ)が主流でしたが、現在は31.7mm径(アメリカンサイズ)となっているようなので、今後アイピースを購入することもあろうかと今のうちに準備しておこうとあわせて購入。
 
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 Vixen 天体望遠鏡用接眼アダプター 36.4-31.7

 
 まずカメラボディにTリングを接続。
 

 次に望遠鏡へ拡大アダプター①と15mmアイピースを装着。
 
 その後拡大アダプター②③を取り付けます。
 
 Tリングと拡大アダプター④を接続したものをつなげれば完成!
 

 
 こんな感じ。

 あと、レリーズなんかも用意しておくとなにかと便利かと。
 
 
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 ロワジャパン シャッター リモコン コード レリーズ Canon RS-60E3/PENTAX CS-205 対応

 

木星と土星を撮影!

 それではいよいよ撮影へ! 今回は木星と土星を狙ってみたいと思います。

 
 大変に画像が悪いですが、右側の明るい星が木星。その次に明るい左側の星が土星です。

 天体撮影をする際、基本的にカメラの絞りは開放あるいはもっとも低い値に設定しておきます。
 今回は諸事情によりISO高め、シャッタースピード短めに設定。

 まず木星。
 
 ×60,ISO 6400,1/100秒,50mm,トリミング加工済

 続いて土星。
 
 ×60,ISO 6400,1/10秒,50mm,トリミング加工済

 それなりに映りました。
 長年の夢がやっと叶って感無量!

 そして木星といえば有名ないわゆるガリレオ衛星も狙ってみようとトライ!
 
 ×60,ISO 6400,1/2秒,50mm,トリミング加工済
 
 ……とまあ一応撮れましたが、衛星の像が流れているのがわかるでしょうか?

 実は今回、望遠鏡を動かさずに撮影する"固定撮影"で臨んだのですが、この固定撮影をする際に気をつけなければならないのが「地球は自転している」ということ。
 
 風景写真や人物写真を撮影する際にシャッタースピードを遅くしても、カメラも被写体も基本的に動かないので像が流れることはありませんが、天体撮影の場合だと撮影している間にもどんどんと星は移動してしまいます
 ですので今回はISO感度を上げて短時間で光を取り込み、シャッタースピードを限界まで短くして像が流れないようにという、かなりの力業で撮影しました。
 ISOを上げればこうした力業もできますが、天体撮影の場合どうしてもノイズが入りやすくなってしまいます。またシャッタースピードも短くしなければならないので、木星や土星の撮影ならば、天体表面の縞模様なんかもボヤけた感じになってしまいます。

 本来は「赤道儀」などの機材を用い、地球の自転と併せて望遠鏡を動かし撮影すべきなのですが、残念ながらワタシは所有していません。
 赤道儀付きの望遠鏡なんかもありますが、最近は安価なものも出ているようですので、今後の課題ですね。
 
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 レイメイ藤井 天体望遠鏡 赤道儀 反射式

 
 もちろん天体写真の固定撮影での楽しみ方もあります。
 その点に関しては以下のリンクに詳しく書かれているので紹介しておきます。文字多めですが読み応えアリです!
  cf,これから天体写真を撮ってみたい人たちのためのページ

 さて今回は「まずやってみよう!」というノリで勢いに任せて天体撮影をしてみましたが、これからの秋から冬にかけては空気も澄んで天体観測&撮影には最適な季節。
 ちょっくら今後もいろいろと撮影してみたいと思います!

 あ、最近メールで「サンスクリットや後鳥羽院のことはどーなった!?」的なものをもらうのですが、ちまちまと書いてます。ええ、ちまちまと。……

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