【読書感想】斎藤毅『数学原論』

 
 数学原論
 斎藤毅

 出版社:東京大学出版会
 発売日:2020/04/13

 学部レベルのほとんどの分野を網羅する数学界の新たなる”魔導書”

 『数学原論』といえばブルバキの全37巻7000ページ超のそれがあまりにも有名だが、本書はそのタイトルを拝借し、圏論の視点から現代数学がもつポテンシャルを読み説こうと試みる意欲的な一冊。
 しかし、はっきりいって内容は非常にハイレベルなものとなっている。学部で学ぶほぼ全ての分野について網羅的に説明がされているが、まず目次を見て「あ、ここはあの分野のあそこをこんな感じで……」とザっとイメージできるくらいでないと、2ページも読まないうちに挫折すること請け合いである。もちろん学部レベルの数学を理解できる人にとっては、余裕で一年くらいは引き籠れるくらいの内容だ。ちなみに目次に関してはその最後で各章の関係性を図説(!)してある。

 圏論自体、日本語で書かれた書籍の多くがあまり良い解説書ではないと言われている。本書の場合だと、線形代数と微積分を基軸に集合・位相の言葉で書かれており、数学の三大柱である代数・幾何・解析がどのように交錯しながら数学という学問を成立させているのかが俯瞰的に示されている。多様体の定義など少々独特な部分もあるが、最後に出てくるリーマン面と楕円曲線への解説に至る道筋がなんとも理想的な形になっていると思う。

 しかしなにはともあれ難しい本であることには違いない。
 もし内容以外の部分で本書を評価しようとするなら、表紙デザインが数学の専門書にはありえないくらいのスタイリッシュさでカッコいいというところだろうか?
 濃すぎる内容と相俟って、ある意味”積読”用として手元に置いておくのも良いかも知れない。中身も見た目も実にパワフルで、手元にあるというだけでどれほど刺激をもらえるか分からない。
 
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 現代思想2020年7月号 特集=圏論の世界――現代数学の最前線

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