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【読書感想】岡西正典『新種の発見-見つけ、名づけ、系統づける動物分類学』

 
 新種の発見-見つけ、名づけ、系統づける動物分類学
 岡西正典

 出版社:中央公論社(中公新書)
 発売日:2020/04/18

 動物分類学者の悲喜こもごもと、多様な生物界の奥深い様相

 年間2万種を越える新種が発見・報告されている。
 新種の発見に伴う採集方法・生態調査・分類学上の命名の手順、学名の名付け方など、本書は普段触れる機会のない動物分類学について語られた専門書だ。
 とはいえ内容はそこまで堅苦しいものではない。著者が実際に行ったフィールドワークのエピソードなど、多少専門的・学術的用語も飛び交うが、こうしたジャンルに興味のある子どもでも十分楽しめる。

 「新種発見!」などというニュースの見出しを見ると、そのたび「おおーっ! 凄いなぁ」などと感心してしまうのだが、その水面下では研究者たちの日々の地道な努力が繰り返されているという事実にまず驚く。それは人類にとっての普遍性、つまり再現性を担保する科学に対し重要な素材を導き出すための研究である。
 また新種といっても昆虫や小動物に限らず、化石や大型生物にまでその範囲が及ぶ。これは、動物分類学が地球上の自然全般の記録を残すことを意味している。
 かくして新種の発見とは自然の歴史を記録していることと同値であろう。
 本書後半では分類学の未来を語り、IT分野やその他の学問、産業とどのような連携を図れるかなど、トピックも盛りだくさんだ。
 なにより本書を読んで一番良かったと思えるのは、研究生活の悲喜こもごもはあるにせよ、筆者自身が実に楽しそうなのだ。胸躍らせながら調査・研究に取り組んでいる姿が目に浮かぶような、そんな書き口に、読み手までもがワクワクしてしまう。
 
 分類学といえば、博物学より少し細かく物事を割り振るようなことをしているというイメージを抱いている人も多いかもしれないが、本書を読むとそのイメージが覆る。古典どころか急上昇真っ最中の学術分野なのだ。
 地球上にはいまだ数多くの"未発見"が溢れかえっている。

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