※2019年12月に訪問した折りの記事です!
さて以前、本家の方で谷根千の散歩レポートを書いた際、千駄木・団子坂のところで「近くの動坂下にある『動坂食堂』がオススメ」みたいなこともあわせて書きましたが、今回は"やっと"件の『動坂食堂』に再訪できたので、その時のレポートです。
cf,谷根千を歩く。
谷根千を歩く。【おまけ編】
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新版 谷根千ちいさなお店散歩
さてまず個人的な思い出なのですが、東京に住んでいた頃、ここ『動坂食堂』さんの近くに住んでいたこともあってしょっちゅうご飯を食べていました。午前中から夜までやっているので、「この時間に行かなきゃ!」という心配がない気軽さもそうですが、
なんせ、
安い! 早い! ウマい!
という三拍子にとどまらず、
店内広々&キレイ! メニューも豊富! ボリューム満点! 客層ステキ!
という、とにかく「雰囲気が最高にイイ!」、このことに尽きる下町の大衆食堂です。
東京屈指の下町"谷根千"にふさわしい名店だと、当時から今に至るまで信じてやまないw
で、上京するたびに「行きたいな~行きたいな~」と思いつつ、北海道に戻って約10年の間で伺えたのは今回を含めて2回だけ……orz
以前、『遊んで学ぶお父さん』のUronpoiさんと呑んだ際に「『動坂食堂』いいですよ~」「"ビール+里芋の煮つけ+ヒレカツ定食"の組み合わせは最高です!」とゴリ押しした結果、探訪レポートもすっかり先を越されてしまったわけで、今回やっと数年ぶりに伺えて感無量だったりするw
cf,動坂食堂で食べてきましたレポート。(文京区千駄木) - 遊んで学ぶお父さん
……なんだか書いてて感極まって訳の分からない書き口になってしまっていますが、さっそく。
スタートはJR山手線・田端駅北口から。
昨年の話題作『天気の子』のロケ地は反対の南口方面ですが、上記の『谷根千を歩く。【おまけ編】』で近くを取材しています。
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一路、不忍通り&動坂方面へ。
例の田端の切通し跡。
この駅前から続く通り沿いにも、以前は結構老舗が並んでいたのですが、駅前の再開発等もあって結構寂しくなってたな……。
こちら「貸店舗」の張り紙のあるレストラン『シミズ』もよく行っていた。ここのナポリタンは、絵に描いたような昔ながらのナポリタンで絶品だった。
で、動坂下交差点に到着。
お店の看板も出ていますがそんなに大きくないので、この『動坂下泌尿器科クリニック』の隣と覚えておけば確実です。そういえばここのクリニックは以前たしかお弁当屋さんだったな……(記憶が定かでない)。
Amazon ベスト・オブ・谷根千―町のアーカイヴス |
「谷根千」地図で時間旅行 |
店頭では食品サンプルが出迎えてくれます!
いざ店内へ!
お分かりの通りテーブル席ばかりですが、下町のお店にありがちなテーブル所狭しという状態ではなく、人が余裕をもってすれ違えるくらいに広く間隔があけられています。
もちろん大人数のお客さんが来た場合はテーブルを寄せてくれたりもします。
よく通ってた頃には、お年寄りのサークルやら仲間内で平日昼前からワンカップで「乾杯~♪」なんてやってる団体としょっちゅう鉢合わせてたけど、やっぱり下町にありがちな騒いだり喚いたりするような団体はひとつもなかった。客層が良い証拠。
そしてもう一点、店内の装飾も必要最低限という感じでシンプル。なにより細かなところまで掃除がされていて清潔感もバッチリ!
そこへもってきて、壁にはお品書きの黄色い札がずらりと並んでいるのがまあなんとも粋というか圧巻!
厨房方面の壁上部には「本日の定食」一覧がある。
基本的には変わらないけれど、ときどき少し変わったりするのでそれが結構楽しみだったりもしたw
そういえば、結構遅い時間に行ったときなんかはテレビで『渡る世間は鬼ばかり』が放映されていて、えなり君のセリフ聞きながら「今日はなににしようかな~」としょっちゅうこの札を眺めていたな~w
あとでも書くけど、値段が総じて安い。
「そうかな~? 普通じゃない?」
なんて声も聞こえてきそうだけど、そうじゃないんだな~w
さてまず注文はいつも通り、
「里芋の煮つけ」と「ビール」w
ビールは大瓶と小瓶と揃えてくれています。
そして私がここで一番オススメしたい「里芋の煮つけ」だが、前掲の遊んで学ぶお父さんの記事で大絶賛されていたのは大げさではない! 里芋本来の味を失わず、かつしっかり中まで醤油の風味がしみ込んでいて、私も結構あっちこっちでいろんなものを食べてきたつもりだけど、ここまでおいしい里芋の煮つけを知らない。
そしてそして、北海道在の今でもこの味が忘れられなくて、個人的に食べるためだけに里芋を作っている次第w 北海道の私の住むあたりは気温・地温など気候的な問題で本来里芋の栽培に適さないのですが、それでもこの店の「里芋の煮つけ」を再現したくて、試行錯誤をしている次第。決して食い意地を張っているわけではなく、ただただこの店の味を求めているw
閑話休題。
そして今回のメイン、定食には「サバ塩焼き定食」をチョイス!
普段、人に勧める場合「ヒレカツ定食」や「生姜焼き定食」を結構推していますが、実はこの「サバ塩焼き定食」もかなりオススメです!
サバ塩焼き定食
こちら動坂食堂さんの定食は基本的に大盛りですw なんせご飯はドンブリにつがれているので、少し食が細い方は「少な目で……」と頼むとちゃんと対応してくれます。
お味噌汁も具沢山、タクアンは厚切りととにかくボリューム満点。
上の写真では比較になるようなものを写せなかったのでわかりづらいかもしれませんが、実際この盛り方を目の当たりにすると、さきほどの「値段が安い」の一言に納得がいくと思います!
で、問題のサバ塩焼きですが、大きさ・身の厚さともに申し分ないだけではなく、油の切れ方が絶妙! 食べても油がしつこくなく、ご飯と程よくマッチするw 大根おろしもたっぷりついてくるので、もう至れり尽くせりです!
さて念願だった『動坂食堂』レポですが、最後にちょっと書き添えたいことがあります。
『動坂食堂』さんを紹介した際に「雰囲気が最高にイイ!」と書きましたが、それは客層だったり店内の雰囲気だったりももちろんあるのですが、なによりお店の方の愛想や接客がとても好印象なのがその決め手です。
ご家族が中心となって経営されているお店なのですが、店内で先頭にたって切り盛りする若女将(今も昔も変わらずキリッとした美人)のテキパキした動きはもとより、決して客におもねるわけでもなく高圧的なわけでもなく、どのお客さんに対しても平等で隔たりなく、適度な距離感を保って接している姿に、いわゆる「客商売」の真髄を感じさせられたりします。また、忙しい時間には大女将(人の良さそうなおばあちゃん。やっぱり美人)が厨房から出てきて若女将をさりげなくサポートしたりと、連係プレーも見事!
接客も店の回転もこうして潤滑にこなしている背景に、言葉には出さなくともお店を支える全員がお互いを尊重しあっている空気を感じずにはいられない。
家族経営の飲食店では、ときどき客の目の前で喧嘩をはじめるような店も少なからずあるけれど、こちらの『動坂食堂』さんでそんな光景に出会ったことはない。来ていただいたお客さんに気持ちよく食事をしてもらい気持ちよく帰ってもらう、そんな基本的なことをただひたすら着実にそして完璧にこなしている。これこそ60年以上この地に根付き愛されてきた老舗の貫禄といったところだろう。
それは決して一朝一夕にできることではない。
たとえば、以前「寿司職人になるのに何年も修行しなくても握れるようになる。長年修行するのは非効率」という意見がネットで飛びかったことがあるが、たしかに寿司を握ること自体は練習すればすぐに習得できるだろう。しかし寿司を握る上で必要なネタの管理や扱い方、調理する際の配慮など、あるいは「食」を扱う者としての接客や振る舞いなどを抜きにして、果たして寿司職人と呼べるのだろうか? 寿司に関するありとあらゆる気配りができてこそ、寿司職人と呼べるのではないか? そうなってくると、もはや人それぞれのクセのような部分まで正していかなければならなくなり、自然、長い時間をかけて修行する意味がそこに生まれるのだと思う。
些細なことですぐに激高してしまうような寿司職人の店に行きたいと思うだろうか? 厨房の中には常に包丁が置いてあるのだ。カウンター席の端の方に埃や汚れが吹き残されているような寿司屋に行きたいと思うだろうか? その多くを鮮度が命の生魚を扱っているところで細部に至るまで気を配れないことはないを意味するだろう。
自分の普段の生活を顧みたとき、その空間や言動に果たしてそこまで気を配れているだろうか? そしてその一つひとつの"クセ"を正し、習慣づけるのが容易でないことは想像に難くないだろう。
修行のなかで積み重ねられるべきものは、単に寿司の握り方ではなく、そうした寿司職人としての気配りが無意識の裡にあるいは反射的にできるようになることだと思う。だから長い時間が必要なのであり、長い時間かけて定着したものだからこそゆるぎないものになっていく。
ここ『動坂食堂』さんの雰囲気には、そんな寿司職人の修行の例えと同等に、長年培われてきたお客さんへの心づくしの気配りへの矜持を感じずにいられないのだ。
普段は会計の際に「ごちそうさまでした」といって伝票を渡すのだが、内心この店ほど「"あおいそ"で……」という言葉が似合うところはないと思っている。
最後の最後で余談だが、先述のキリっとした美人若女将なんですが、この方、実はとんでもなく記憶力の良い方で、近隣の飲食店の方々も驚くほど!
今回も注文の際「里芋の煮つけと、瓶ビールと……」というと「たしか大瓶でしたよね!」とすかさずw 数年ぶりに行ったのに覚えてくれていて驚愕至極。私も「記憶力いいね」とよく言われるのですが、若女将には完敗する自信があるw
あと、私が通ってた当時、まだ学生さんだった娘さんや姪っ子さんが部活帰りに店へ寄っては厨房で夕飯を食べていた姿をよく見かけていたけど、帰り際に少し若女将と話したところそんな娘さんたちも成長し、今では時間に都合がつくときは看板娘よろしくお店の手伝いをしてくれているらしい。
「あの子たちも立派に成長したんだなぁ」としみじみ、時間の流れを感じ入った次第。
また近いうちに寄りたいな……。
動坂食堂
住所:東京都文京区千駄木4丁目13−6 アドリーム文京動坂104
電話:03-3828-4498
営業時間:10:00~22:00
定休日:毎週日曜日、祝日
アクセス:JR山手線・京浜東北線「田端駅」から徒歩8分
地下鉄千代田線「千駄木駅」から徒歩8分
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谷根千のイロハ
『動坂食堂』さんから東京メトロ南北線本駒込駅方面へ向かう"動坂"を登る。
写真奥が田端方面。田端駅からの道をまっすぐ行く。
すると登りきったところにあるのが都立駒込病院なのだが、その足元に小さな公園がある。
こちらの公園の下には「動坂遺跡」が保存されている。
古くは縄文時代の住居跡と土器で、貝塚からはおもりが大量に発掘され、当時は漁労がさかんであったことが伺えます。
またその上には江戸時代の遺跡も発掘されており、その遺跡は8代将軍徳川吉宗が復活した鷹匠の屋敷跡だと確認されています。
都会のど真ん中で歴史を重みを体感できる貴重な場所だったりします。
cf,動坂遺跡説明掲示板(東京都教育委員会による)
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東京ミステリー~縄文から現代までの謎解き1万年史~