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【読書感想】外池昇『天皇陵 「聖域」の歴史学』

 
 天皇陵 「聖域」の歴史学
 外池 昇

 出版社:講談社(講談社学術文庫)
 発売日:2019/10/12

『天皇陵』をめぐるこれまでと、これからへの道筋

 昨年五月、新元号『令和』へと時代が変わった。
 明治天皇以降"一世一元制"となり、一人の天皇に対し元号は一つに定められるようになった。
 しかしそれまでは、吉凶やその他の理由から一人の天皇の治世においてたびたび改元がなされてきた。

 この表現が正しいか否かは別として、日本という国の有史以来、その主軸を担ってきた"天皇"という存在。
 政治の主体が公家であろうと武家であろうと、はたまた選出された政治家であろうと、この国の統治の主体として存在してきた。
 今上陛下で126代目。(数え方にもよると思うが)では125代目にあたる上皇陛下以前の皇統の墓は、どこにあるのか? そしてそこに本当に埋葬されているのか?
 本書は天皇陵墓のこれまでと、現在行われている調査・研究、またこれからどのようなことが必要になってくるかを、豊富な資料とともに雄弁に語ってくれている。

 天皇陵の"選定"過程についてはその杜撰が指摘されて久しいが、具体的な根拠や方法を見てみると、あながち出鱈目だと一言で切って捨てられるものではないような気もしてくる。
 しかし、陵墓への直接的な調査は原則否定され、本当にそこに冠されている天皇が埋葬者なのか、現時点で知る方法はない。
 ではなぜ立ち入りといった直接的な調査ができないのか、その理由を紐解くと興味深い事実を知ることができる。本書ではその点について相当のページ数を割いており、大きな特色だ。

 曖昧な理由で選定された陵墓。それでいて厳格にその介入を拒み続けている管理者たる宮内庁。
 「聖域」なのかはたまた「文化財」なのか。
 研究対象としてそれに対峙する著者の悲喜こもごも含め、読み応えがある。多少専門性が高い感じもあるが、読み手側の興味を削ぐほどの難解さではない。

 本書は『天皇陵論ー聖域か文化財か』を文庫化したものだが、文庫版のあとがきとして、原著の出版以降の展開と先日世界文化遺産に登録された「百舌鳥・古市古墳群」への言及などもあり、短いながら興味深い一節となっている。
 
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