【読書感想】松井孝典『宇宙誌』

 
 宇宙誌
 松井孝典

 出版社:講談社(講談社学術文庫)
 発売日:2015/04/11

「我々とは何か」人類が宇宙に挑んだ知的大紀行

 タイトル通り、本書は宇宙の歴史、特に人類がこんにちに至るまでどのような形で宇宙を捉えようとしてきたかという天文学・宇宙科学史なのだが、扱う範囲は実に広範で、宇宙進出をめぐる米ソの対立から地球内部の岩石の形成、環境問題にまで至る。高校の地学の教科書を、大幅に増補、詳細に解説したような内容となっている。
 しかし難解な数式も議論も出てこない。むしろ専門的になるのをあえて避けているような書き口ながら、それでいて決して表層的な解説にとどまらず、かなり深い哲学的な示唆をも含んでいる。
 「知的好奇心をくすぐられる」いかにもこの言葉がふさわしい。

 われわれ人類が宇宙=世界をどのように論じ捉えて理解してきたのか、科学の視点からその歴史を紐解けば、リリカルな創世記が見えてくる。
 全18章の前半は基礎的な事項の解説が並ぶが、徐々に著者一流の思惟の展開が見られ、最終章との対比の中には「我々とは何か」「我々はどこからきたのか」という哲学的な主題から、これから人類が向かうべき未来への進言が語られる。

 単なる宇宙の歴史を俯瞰するにとどまらないその視点の広さ、その眼差しの深さに、大著の貫禄を感じる。
 
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 世界“宇宙誌”大図鑑

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