10月4日日本でも公開が開始され今話題の映画『ジョーカー』を先日観てきましたという映画感想。
で、まず個人的感想の結論ですが、
久々マットウな映画を観た。
ということ。
本作はアメコミの大ヒット作『バットマン』の悪役として有名な“ジョーカー”の誕生を描くクライムドラマ。
主人公がジョーカーへと変貌していった経緯を、その人生的背景を通して描き出している。
一応R15指定(15歳未満は原則鑑賞不可)なのでかなり暴力的だったり過激なシーンが含まれているが、それは本作の下地となっている『バットマン』シリーズを鑑賞済みの人であれば、察するところあまりあるという感じだろう。
内容についてはネタバレになってしまうので書かない(SNSやブログでは結構書かれてたりするが)。
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[Tbmodel] SWTOYS 1/6 フィギュア ジョーカー
で、本作について私が抱いた感想について少し書きたい。
本家・ネットサーフィン見聞記でもいくつか感想記事も紹介しているが、周知の通り本作は公開当初より賛否両論の声があがっている。
cf,2019年10月06日の羅列
とある映画館からは「観るべきではない」というような声明まで出ているらしい。
それが先にも述べた暴力的なシーンの残虐さ、あるいはストーリー上で繰り広げられる内省的葛藤・煩悶という部分に対して指摘されているというのなら頷ける。
確かに主人公やその他周辺の人たちにまともな人がいない、そんな印象を受けた。
作品中に散りばめられたさまざまなエピソードや伏線を辿る中で、徐々に「闇落ち」よろしく精神的に追い詰められていく主人公の姿に健全さはまったくない。
むしろ冒頭より元来持ち合わせていたであろう精神病的気質が前面に押し出されている。
ただ、そうした部分はあくまでストーリー上の問題であって、映画作品として本作を評価しようとした際、そこまで問題視されるところではないと思う。
むしろ私は、徐々に追い詰められていく主人公の精神的な側面、あるいはその変遷を「映像」として見事に描き切っていると、そう感じた。
あまりにも理不尽な出来事に翻弄され、無慈悲な現実を引き受けざるを得なかった主人公。その果てに、独りよがりな憎悪を抱きそれを爆発させる姿に同情の余地はない。そうした結末を観ている側も素直に受け入れることはできない。
しかしどう反応するにしても、そこに至る過程をしっかりと描き出してくれているがゆえに、まったく違和感を抱かずに観ることができた。
映像的な修辞はもちろん、見事な伏線回収や演技派・実力派ぞろいのキャスト陣による安定した演技、緻密に計算されたセリフ回しなど、そのどれをとっても飽きや違和感を抱かせず、観客をその独特な世界観へと引き込んでくれる力を感じた。ストーリーのバックボーンとなる社会心理学的なテーマは、現代社会においてとてもシリアスな問題だが、それを“ジョーカー”という登場人物を通して見事にすくい上げている。
正直、現時点で今年のアカデミー賞最有力候補の呼び声高いことも容易に納得できた。
だが、賞讃・絶賛ということはしない。しないまでも、“映画”という映像作品として、本作は見事に成功していると思う。
そういう意味で、個人的には久しぶりに「マットウ」な映画を観ることができたなと、ひとえに満足できた。
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私も本作の下地にある『バットマン』シリーズをそこまで熱心に観てきた方ではないが、もし本作をこれから観ようあるいは『バットマン』シリーズを観たことがないという人は、入門がてら過去の『バットマン』作品を観てから本作に挑む方が敷居は低いと思う。
もちろん、本作だけでも十分楽しめる余地はある。
特にラストシーンに関しては、個人的に「すさまじい皮肉」「これはジョーカーにやられたな……」と思わざるを得なかった。いや、これは私の考察・解釈が正しければの話しなのだが……。
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