【読書感想】小倉紀蔵『群島の文明と大陸の文明』

 
 群島の文明と大陸の文明
 小倉紀蔵
 出版社:PHP研究所(PHP新書)
 発売日:2020/10/15

日本文化の精神性を読み直す「もののあはれ」

 地理的条件のもと、その環境下でいかに日本の文化文明が形成されていったのか、そこから見える将来的な展望にまで踏み込んだ意欲作。
 著者の記したものは以前に『朝鮮思想全史』などを挙げているが、略歴通り朝鮮半島を中心とした東アジア思想が専門である。

 本書では日本を”群島の文明”と規定した上で、ユーラシア大陸を基軸とした”大陸”のそれと対照することで見えてくる日本の文化文明のもつ根本的性格の読解を試みている。
 梅棹生態史観をはじめさまざまな思想家・哲学者の言説を引用し、”群島”と”大陸”という地理的背景がいかにその文化文明に影響しうるのかという指摘は、著者一流の独創的な切り口といえる。
 先述の通りいまでこそ朝鮮半島を中心とした東アジア思想の泰斗として名を馳せている著者だが、学生時代の専攻はドイツ文学だったという点において、西欧思想の基礎もしっかりと熟知しており抜け目ない。
 他方、孔子の『論語』にみるアニミズム的世界観と日本の精神性を重ね合わせるような書き口も鮮やかで、冒頭で示されている文化文明の背景を探る方法論と相俟って得心した。
 
 しかしながら、全体的に表現の誇張のような言説が目立つ節がある。それでいて明瞭な結論を得ない部分も多く、人を煙に巻くような、霞を食らうような印象をたびたび受けた。
 切り口が独特であるからこそ、もう少し几帳面な論を展開してほしかった感じが否めない。

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