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【読書感想】川端美季『風呂と愛国』


 風呂と愛国
 川端美季
 出版社:NHK出版(NHK出版新書729)
 発売日:202/10/10

「お風呂は心の洗濯よ」お風呂をめぐる日本人の変化

 「日本人は風呂好き」「日本人は綺麗好き」という概念はどこから生まれてきたのか? 本書は、日本人の風呂との向き合い方を歴史ベースで深掘りし、風呂と清潔性と国民性が結びつくに至った背景を紐解いている。
 結論、現代につながる日本人の入浴習慣は、明治の近代化を背景に広まった西洋の道徳観念や公衆衛生概念が大きく寄与していた。本書後半では、それが最終的にどう国民道徳と愛国心と関連してくるのかという点にまで言及がおよぶ。
 あちらこちらで静かな話題を呼んでいる本書だが、個人的にはなんとなく予想できてしまった内容だったので、あまり新鮮な印象を受けなかった。ただ、明治期に日本に来た外国人が当時の日本人をどのように見ていたのかという点からすると、日本人の清潔感への意図的な意識変化は、ある意味諸外国に対するアピールなり抵抗だったのかもしれないと思えた。
 
 それと、そもそも日本の古典文学を読み込んでいる人なら、例えば中世日本の風呂が現代の風呂とは全然違うことを前提知識として持っているだろう。とすると、数年来のサウナブームって先祖返りなのかしら? などと思ってしまった(笑)
 

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