世界は経営でできている
岩尾俊兵
出版社:講談社(講談社現代新書)
発売日:2024/01/18
価値とは創造できるもの
本書は人間が成しうる所作言動、人間活動のさまざまな側面を「経営」という視点に落とし込み俯瞰している異色のエッセイ。「経営」という定義を理解するには十分すぎるくらいさまざまな角度が用意されている。特に芸術や歴史を経営の視点から切り込んだ切り口、着眼点には目を見張るものがある。経営という視点から人生の課題を乗り越えるヒントをくれる、そんな一冊となっている。
本書で言わんとすることは正直「あとがき」を読むだけでも必要十分で、かなり意義深い部分である。「経営」とはどのような視点であるか、そしてわれわれの人生になにをもたらしてくれるのか容易に理解できる。
一方、経営理論などの経営学を学びたいという読者にとっては不向きな本かも知れない。また、著者曰くの「令和冷笑系文体」という独特な書き口なので、人によっては拒否反応を示してしまうかもしれない。頻繁に出てくる括弧書きでの自虐ネタも大半が予定調和で、読んでいてもときどき煩く感じてしまう。著者はそういう人なんだろうな、と理解するほかにないのだが……。