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【読書感想】内田樹『街場の成熟論』

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 街場の成熟論
 内田樹
 出版社:文藝春秋
 発売日:2023/09/13

「まっとうな大人」良薬は口に苦し

 これまでさまざまな媒体に寄稿した短文をまとめたオムニバス。短いコラムの寄せ集めと表現した方が的確かも知れないが、ウクライナ戦争やジェンダー問題など、目下世間を騒がせている諸問題を大枠として、著者一流の持論が展開されている。それはまさしく冴えわたる「内田節」といったところだ。
 本書で提示されている目的、それは「おとな」として成熟するためにあると冒頭で示されている。確かに世間を見渡せば、子どもでさえ呆れ返るような言動をする大人がいかに多いことか。いや、大人とはそもそもただ年齢を重ねた子どもに過ぎないのかもしれない。
 ではどうやってマットウな「おとな」となればよいのか?
 人それぞれさまざまな意見を持っている通り、著者もまた一人の人間としての持論がある。ゆえに同一人物が書いたものとはいえ、読む人にとって賛同できるものもできないものもあるのは必然だ。ただそれは、それだけあらゆる視点から網羅的な思考が展開されていることでもある。つまり自分自身の経験や個人的な視点だけからではない、複合的な視点をもって世の中のナンセンスに対して疑問を投げかける、そうした姿勢が今こそ求められているのでありマットウな「おとな」へと成熟するための第一歩なのだ。ひとはそれを「正論」あるいは「批判的」というかもしれないが、メディアやSNSをはじめ扇動的言説が賑わう現代社会において、自分の軸をブラすことなく世界を見つめるためには大切なことだと思う。

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