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【読書感想】鴨長明/信吉『漫画方丈記 日本最古の災害文学』

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 漫画方丈記 日本最古の災害文学
 鴨長明 著 / 信吉 イラスト
 出版社:文響社
 発売日:2021/09/10

元祖ミニマリストの足るを知る潔さ

 日本三大随筆に数えられる『方丈記』は、原稿用紙にしておよそ25枚程度の短文ながら日本最古の災害文学としても貴重な記録である。「ゆく河の慣れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という有名な書き出しで始まる冒頭部分を、国語の教科書などで読んだという人は多いだろう。だが本文全体を読み通したことのある人はそう多くないと思う。
 本書はそんな『方丈記』を漫画化したものだが、単純に内容をなぞるにとどまらず、しっかりとした考証のもと必要十分に内容をふくらませている。また絵面もクセがなくとても読みやすく、巻末には原文も掲載されており、漫画と比較しながら読むことができる。更に養老孟司先生による解説は、『方丈記』の魅力を余すことなく伝えてくれていて、ここだけでも十分読み応えがあった。
 個人的に『方丈記』は事あるごとにページを開く本だ。いつかは自前で現代語訳もしてみたいと思っているほどには思い入れのある作品なのだが、こうして漫画として読んでみるとその味わい方も変わった感じがした。特に「ミニマリスト」よろしく質素な生活を送った晩年の鴨長明の中に底流した哲学が、それまで見聞してきた様々な自然災害や人心の浅ましさに裏打ちされたものだったこと、その両者のつながりが明確に見て取れた気がした。
 途中コラム的に挟まれる「鴨長明が現代に生きてたら」四コマは、シリアスな内容に小休止を与えてくれるいいアクセントになっている。

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