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【読書感想】樺沢紫苑『言語化の魔力 言葉にすれば「悩み」は消える』

 
 言語化の魔力 言葉にすれば「悩み」は消える
 樺沢紫苑

 出版社:幻冬舎
 発売日:2022/11/09

「不安」を打ち消すためにいまできること

 言わずと知れた精神科医・樺沢紫苑先生の著書。内容的には、数々の動画で語られてきたことを総編集したような体裁になっている。裏を返せば、それだけ不安や悩みを解消する方法を求めている人が多いことでもある。
 「不安」や「悩み」を受け流すためにどういう手法があるか、本書では取り組みやすい形で明示・羅列している。だが注意しておきたいのは、自らの感情を言語化できない人が言語化するコツをつかむ、あるいはただ単に言語化すればいいというライフハック的な方法論ではないことだろう。そもそもほとんどの人が似たようなことで悩み、将来への不安を抱いている。追い詰められればこそ、その問題ひとつにばかりフォーカスしてしまうのは人間の性だ。だがそうした悩みや不安が沸き起こったこと、それ自体が自身の改善点が浮き彫りになったと認識できる人は少ない。つまり、悩みや不安を解消するために言語化する、それは何を注視すべきか見極めた上で行わなければならないかということに他ならない。
 そして樺沢先生の金言が光る。「ほとんどの人が同じことで悩んでいる」「大半の悩みは本を読めば解決する」「2週間に3回思い返す(誰かに話す)と記憶に定着してしまう」。この前提を心得た上で、本書ははじめて真の威力を発揮すると感じる。
 悩みや不安、その設定を少し変える、つまり視点を変えることでコントロールするための「言語化」という手法なのだ。
 
 日頃、愚痴や不平不満が口を突いて出ることも多くあるかもしれないが、それもまた「言語化」ということかもしれない。そうした吐露によって少なからず心のモヤモヤはすっきりするかもしれないが、聞かされた方はやはりネガティブな感情にならざるを得ない。その逆もまた然りで、不安や悩みの解決だけでなく、日頃の自分の言動を客観的に見つめ直すきっかけとなるような一冊だ。

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