ドラゴン学総覧 NEW EDITION
ドゥガルド・A・スティール 編 / こどもくらぶ 訳
出版社:今人社
発売日:2014/07/01
ドラゴン、雄々しくも謎多きその神秘
2000年代に相次いで翻訳された『ドラゴン学』『ドラゴン学入門』。さまざまなギミックを駆使した絵本風の体裁で、子どもから大人まで楽しめる可能性を秘めていた。本書はその集大成版である。
前二冊に比して文章が多めなので本気度の違いが感じられるが、一般書に比べればまだまだ図解もイラストも豊富で親しみやすさがある。
一連の書籍は、ドラゴン学の泰斗であるA・ドレイク博士が残した(らしい)稀覯本が発見されたことから世に知られたものだ。博士は19世紀末、イギリスで活躍した(であろう)人物である。「ドラゴンとはなにか?」「東洋における龍のそれとは?」……博士が生涯をかけて探求した"ドラゴン"の本質、本書にはその全てが注ぎ込まれている。
種類や生態をはじめ、その習性や交流の仕方など、かつてこの地上を席巻した"ドラゴン"の真の姿をいかに後世に伝えるか、博士の筆は唸るばかりだ。近縁種の紹介も細かく、注目すべきは各国に伝わるドラゴンの相違だろう。大別して西洋の「ドラゴン」と東洋の「龍」と分けられるが、日本にとって身近である東洋の「龍」ひとつとってもそれぞれの地域で細かく違いが見られるのは興味深い。
また習性や性格に関しても、ドラゴン=火を噴く恐竜のイメージよろしく、いかにして火を噴くのか、そのメカニズムに克明なメスを入れている。また人間以上に繊細な生き物である側面を見せつつ、傷病を負った際のケアの仕方や子ドラゴンの育て方まで、実に懇切丁寧な解説がなされている。これまでも、そしてこれからも、これほどまでにドラゴンへ愛情が注がれた書籍は他に類をみないだろう。唯一無二の実践的「ドラゴン」の教科書といって過言ではない。いや、いま世界のどこかで息づく(であろう)「ドラゴン」のその神秘、それを本書は伝えてくれるはずだ。
……というこの本を、いつも通りの蔵書の整理時に再発見し読み耽った次第。ただ、私と同棲代の人になら共感を得るだろうが、ファミコン等で出会ったドラゴンにどれほど興味を寄せ、また刺激と興奮を受けたことか。そこからどれだけ豊かな想像力を掻き立てられたか。そんな幼き日の頃の見果てぬ幻想が思い出されて仕方がない。つくづく男っていくつになっても"男子"のままなんだよなぁと、思ったり思わなかったりもしたが……。
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