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【読書感想】飛騨俊吾『戀愛』(ペーパーバック)

 
 戀愛: 上

 戀愛: 下

 飛騨俊吾
 出版社:Independently published(ペーパーバック)
 発売日:2022/04/02

恋、その複雑さと心の自由

 
 自分自身、かつては文学青年よろしく古典から現代小説までさまざまな文学作品を読破してきた。
 だが昨今は専門書や実用書を読むばかりで、なかなかどうして文芸書に手が出ないでいる。
 
 そんな中、とあるきっかけで知るに至った本書。
 さまざまな出版社からの方向性の指摘の末、最近やっと日本でも広まりつつあるペーパーバック(オンデマンド)版として出版された作品だ。

 「結婚」という一つの契約。それは法律上の縛りに他ならない。しかし心という側面はまた違う。
 自分もアラフォーになって久しいが、恋愛とはこれほどくすぐったく魅力的なものかと思い出させてくれた。
 恋愛小説だが恋愛ではない。タイトル通り「戀愛」がふさわしい作品。ザっとしたあらすじくらい書きたいが、それでは本作を読んだ時の魅力が半減してしまう。
 というのも、主人公の背景を読み取るのも長たらしく感じる描写が冒頭から続く。が、その回収が実に見事であらためて「あ、小説ってこんなに魅力的なんだ」そして「"恋"っていいな……」と、気づかされる。ページを繰るたびにドンドン引き込まれる世界観は、とにかく読んでみないとはじまらない。
 作者がオンデマンド版でも世に問いたいと思った姿勢が痛いほど伝わってくる作品だ。
 あるいは読む側が試されているのだろうか? その視点や感性、正直「ドキドキ」という言葉が止まらない。
 
 昨今、芸能人をはじめとした「大人の恋」=「不倫」という行為に対して様々な意見が上がっている。ただそれが小説の上ではどうだろう?
 奥深い心境の変化を感じずにはいられなくなること請け合いの作品だと、私は思う。

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