【読書感想】ヘンリー・D・ソロー『森の生活-ウォールデン-』

 
 森の生活 上: ウォールデン (岩波文庫)

 森の生活〈下〉ウォールデン (岩波文庫)
 ヘンリー・D・ソロー / 飯田実 訳
 出版社:岩波書店(岩波文庫)
 発売日:1995/09/18

名著:元祖ミニマリストによる知的生活のすすめ

 「Countorygentleman」という言葉がある。
 地方に自らの領地をもつ英国貴族が議会のない時期はそこに留まり、国家の一大事にはロンドンへ駆け付け腕を振るう、そんな英国紳士の在り方を示したものだ。
 日本においては白州次郎や南方熊楠などがそう表現される場合がある。
 本書の著者H・D・ソローは熊楠よりだろうか? 「Countoryintellectual」と表現した方が相応しいかもしれない。

 本書は知る人ぞ知る元祖ミニマリストの体験レポート。
 都会を離れ、田舎の静謐な湖畔に小屋を建て、必要最低限の家財道具だけで生活を営む実験的な試みの詳細は、世界中の知識人によって読み継がれてきた。
 「すべての家財道具を家から出して、陽のもとに晒して家に仕舞うのに半日を要しない」
 なんと贅沢なことだろう。
 昨今世間的にも広く認知されてきているミニマリストという生活スタイル。物を持たないことの気楽さもさることながら、身辺周囲の細々とした物事に気を逸らされることがない。その効果はメンタル面にも大きく影響する。些細なことに気をやむことがなくなり、自然とその当人にとって重要なことあるいは周囲の環境に目が向けられるようになることだろう。
 本書でも前半部分では著者の哲学的思索が多く記されているが、後半になるにつれ、その生活の場であったウォールデン池周辺の自然環境への記述が増える。
 そして著者自身の教養の高さも相俟って、「知的生活」その実際の一例を垣間見ることができる。

 世界中で愛読されている名著だけに、日本でも数多くの翻訳が出版されている。それ故、版によって翻訳内容に大きな違いがある点は注意が必要だ。
 現在入手可能なものの中では、今回紹介している岩波文庫版が無難かもしれない。私は講談社学術文庫版を持っているが、こちらは日本語としてこなれていないどころか、文法的にも怪しい部分が多い。
 
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 自分自身を生きるには 森の聖人ソローとミューアの言葉

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